フランク ミュラー ロングアイランドRELIEF オーバーホール・外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はロングアイランド RELIEFです（画像1）。
クラシカルなデザインが人気の「ロングアイランド」の中でも一番オーソドックスなスタンダードモデルがこの「1000SC」です。ダイヤルはミラー数字のRELIEFダイヤル。フランクお馴染みのビザン数字も良く目立ち、このブランドらしさが十二分に出ていると思います。

こちらと記事の最下部にて販売しておりますので宜しければご覧ください。

このロングアイランドRELIEFは渋谷本店にてお買い取りした後で販売前のメンテナンスを行うためアフターサービス部へ回ってきた1本です。
当店が5年前に新品販売をしたお品の買い戻し品でして、販売後にメンテナンスのご依頼をいただいた履歴はありません。正確なご使用状況はわかりませんが、外装に小さな傷しかないことから予想するとご使用頻度は低かったようです。

搭載しているムーブメントはETA Cal.2892A2をベースとしています（画像2）。
大きな変更点は”ROTOR SEGMENT PLATINIE 950”と打刻されている通り、ローターの外周部分はプラチナ製です。通常のローターより重い金属を外周に使用することで慣性が増して､ゼンマイの巻上げ効率を上げています。

計測器上の精度は悪くありませんでしたが、内部は作業をされた形跡もなさそうでした。
ご使用頻度についての予想が正しかったのかパーツの磨耗は見られませんでしたが、販売から5年ほど経過しているため油がやや経年劣化していました。やや劣化しているとは言え油は残っており計測器上の数値も悪くはないためメンテナンスでも対応できそうでしたが、万全な状態でご使用いただくためにオーバーホールを行うこととしました。
早速ムーブメントをケースから取り出しました。横から見ると針と文字盤のカーブもわかり易いのではないでしょうか（画像3）。フランク ミュラーの多くはケースやガラスが大きく曲線を描き、それに合わせて文字盤も緩やかにカーブしています。針も先端が下げられていますが、文字盤・それぞれの針の隙間・ガラスの内側の空間に制限があり取り付け位置関係はとても厳しいです。そのため少し針の高さや傾きが違うだけでもどこかに接触してしまい、止まりや遅れなどの原因となってしまいます。

ベースムーブメントのETA Cal.2892A2は時針・分針・秒針の3針ですが、今回のロングアイランドRELIEFは秒針のない2針です。
3針であれば先端に秒針が取り付けられる4番車ですが、2針で秒針はないため軸が短く作られて先端が見えない様になっています（画像4）。 矢印で指した分針車にはキャップが取りつけられて4番車を見せない様になっているのは2針時計ならではですね。
こうした仕様の違いは様々なメーカーで採用されていますが、特にフランク ミュラーは微妙な仕様の違いが多いです。文字盤がカーブし、時にはムーブメントと文字盤の間にスペーサーを入れることもあるため、既存の軸長ではフランク ミュラーの理想とするデザインに対応できないことが多いのでしょうか。
油の劣化こそありましたが極端な汚れや摩耗もなく、全パーツを分解したのち古い油を綺麗に洗い落とし、組み立てと新しい油を指し直すことで計測値・実測値とも良好な精度を記録できました。

こちらのフランク ミュラー ロングアイランドRELIEFをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金が41,000円、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で12,000円です。
修理のご依頼は他店にてご購入されたお時計でも承っております。配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

長期間メンテナンスをせずにいると目に見える症状がなくとも内部の油は徐々に劣化していきます。劣化した油でご試用になることで内部パーツは加速度的に摩耗が進むこともあり、オーバーホールをご依頼いただいたときには大量のパーツ交換が必要なことも珍しくはありません。油の劣化は今回のフランク ミュラー ロングアイランド RELIEFの様に使用頻度が低かったとしても同様に起こりますので、お心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。