ブランパン ヴィルレ トリプルカレンダームーンフェイズ オーバーホール・外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はブランパン ヴィルレ トリプルカレンダームーンフェイズのオーバーホール・外装仕上げです（画像1）。
ブランパンは1735年に創業された世界最古の時計メーカーで創業から現在に至るまで機械式時計のみ作り続けています。こちらのトリプルカレンダームーンフェイズはブランパンが得意とする様式。派手さはありませんが、少し小ぶりな34ｍｍケースが上品な雰囲気を醸し出している秘訣でしょうか。表情付きのムーンフェイズもよく合います（画像2）。
すでに売れてしまいましたがこちらにて販売していましたので、よろしければご覧ください。

ブランパンは長い歴史を持つメーカーですが、1961年からスウォッチグループの前身であるSSIHに参入し自社モデルの販売ではなくムーブメントの製造を行っていました。転機を迎えたのは1982年。ムーブメントメーカーのフレデリック・ピゲ社長であるジャック・ピゲ氏やジャン＝クロード・ビバー氏らによって独立後、シックス・マスター・ピースやグランドコンプリケーションの製作を経て今に至ります。そうした来歴を持つメーカーですのでムーブメントはフレデリック・ピゲ製を搭載したモデルが多く、今回のヴィルレも同社製のCal.95を搭載しています（画像3）。

こちらは2000年頃に当店で販売した時計の買戻し品で販売前のメンテナンスを宝石広場 時計修理センター渋谷が依頼を受けた一本です。ギャランティーは1990年の記載があり製造から30年以上経過しているヴィンテージ品です。外装は経過年数から想像できる通り多数の小傷があり、ストラップは劣化して黒ずんでいました。またリューズの操作も重かったため長期間メンテナンスが行われていないと推測しました。
長期間メンテナンスを受けていない時計内部の油は劣化や乾燥していますし、その状態で使用を続けると潤滑性がないため輪列が摩耗してしまいます。このまま動作確認を行うとパーツの破損につながる可能性があるので、最低限の操作と外観の点検のみで内部に移行しました。

先述の通り搭載しているムーブメントはフレデリック・ピゲのCal.95です（画像3）。2010年にブランパンと統合された今もマイナーチェンジを経て作られ続けています。自動巻きにスイッチングロッカー機構を採用した片方向巻き上げ方式で、個人的に他では見かけない歯先形状のカナが好きなポイントです（画像4）。
内部は推測していた通り長期間メンテナンスを受けておらず完全に油切れしていました。慎重に分解しつつパーツの確認を行ってみたところ、幸いご使用頻度が低かったのか摩耗しているパーツはなく全て再利用できました。洗浄・組立て・注油を行うと調子よく動作しましたので、外装仕上げの後こちらにて販売をしておりました。
こちらのブランパン ヴィルレ トリプルカレンダーをお客様よりお預かりした場合、オーバーホール ¥49,000～、仕上げ¥12,000 にて受け付けております。配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

使っていなかったとしても長期間メンテナンスせずに放置してしまうと内部の油は劣化・減少していきます。油が劣化・枯渇した状態で動かすと歯車や軸に大きな負担かかかり摩耗していき、摩耗粉が全体に散ることでさらに摩耗が進みます。今回のヴィルレの様にパーツが入手困難なムーブメントの場合はメーカー修理が必要になり修理費用が高額になりがちです。
思いあたる場合はぜひ当店にご依頼ください。