ブレゲ クラシックレギュレーター オーバーホール、外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はブレゲ クラシックレギュレーターのオーバーホール・外装仕上げです（画像1）。クラシックコレクションは、ブレゲのなかでも基礎となる伝統的な技術力と芸術性を守り続けています。「時」「分」が同軸上にないため戸惑うかもしれませんが、見慣れてしまえば天文台や時計工房で調整時の基準時計として採られていた造りだけに視認性は抜群です。文字盤には精緻なギョシェ彫りが施してあり（画像2）、シースルーバックから美しく仕上げられたムーブメントのCal.591QSHを鑑賞することができます。

こちらは2010年に当店にて新品でご購入いただいたブレゲ クラシックレギュレーターです。渋谷本店でお買取りさせて頂き、販売前に修理センター渋谷がメンテナンスの依頼を受けました。ギャランティーカードには2010年の記載があり14年間経過していますが、これまでにメンテナンスのご依頼をいただいた記録はありません。長期間が経過していますので当店以外でメンテナンスをされていなければ油は劣化し、オーバーホールが必要な状況です。外装とムーブメントに作業跡があるかに重点をおいて確認することにしました。

まずは外装を点検したところ、経過年数を考慮すると傷は少なく金属焼けもさほどありませんでした。ただし傷の時期は目視で正確には判断できませんし、金属焼けも暗所に保管されていると大きく変化をしない場合もあります。そのため使用頻度が低く保管されている期間が長いのか近年にメンテナンスを行ったのか外装の状態からは判断ができませんでした。次にリューズ操作を行ってみるとリューズ・チューブ間のグリスが切れ気味で多少の重さはありましたが、手巻き・日付早送り・針回し・計測精度とも操作は良好でした。外装の点検と同様に保管状態が良好だった場合はメンテナンスを行っていなくとも良好な計測精度を記録することがあります。

シースルーバックから確認したCal.591QSHには作業跡が一切なく、各部の油が少し劣化・減少していました。この時点でオーバーホールを行うことを決めていましたが、念のため裏蓋に作業跡があるか点検することにしました。裏蓋はケース9時側に開いた隙間へ「こじ開け」と呼ばれる工具を差し込んで開けるスナップバック方式です。隙間に物理的に歯を差し込むため、慎重に行ってもこじ開けの跡がわかります。ですが今回のブレゲ クラシックレギュレーターにはこじ開けを使った形跡がありませんでした（画像3）。内部の状態と外装部のこじ開け口の状態から、メンテナンスをされていない使用頻度が低い個体とわかりました。

先述した通り搭載されているムーブメントはCal.591QSH です(画像4）。派生元のCal.591は長く製造されたムーブメントで、1970年代にロンジンが開発したCal.L990にまで遡ります。Cal.L990は1990年頃にレマニアに売却され、ブレゲと統合される2000年初頭までCal.8810として製造されたムーブメントです。
今回は先の精度計測が良好でしたので交換部品はないと推測していましたが、念のため慎重に分解しつつパーツの確認を進めました。一部で油の固着はあったものの交換や再調整が必要な箇所はなく、洗浄後に新しい油を注し組み直すことで調子よく動作するようになりました。
外装仕上げが終わりましたら店頭へ並ぶ予定です。

こちらのクラシックレギュレーターをお客様から預かっていた場合、オーバーホール ¥45,000、外装仕上げ ¥15,000、合計¥60,000にてご案内いたしております。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

ご使用にならなくとも経年により油は劣化します。劣化した油では潤滑されないため、動かしてしまうと摩擦によりパーツが摩耗してしまいます。ゼンマイを巻けば使えるからとついつい長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、いよいよ動かなくなった時にメンテナンスを行おうとしたら当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。
長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。