ウブロ ビッグ・バン オーバーホール・外装仕上げ・ゼンマイ交換

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はウブロ ビッグ・バンのオーバーホールと外装仕上げです（画像1）。2005年に発表されウブロのイメージを変える程の大ヒット作となった｢ビッグ・バン｣。セラミックやカーボンを大胆に使う先進性と卓越したデザインは人気になるのも頷けます。種類の多いビッグ・バンにおいてスタンダードな44ｍｍケースでピンクゴールドとセラミックで作られたモデルです。

こちらのビッグ・バンは2013年に当店でご購入されたもののお買戻し品で時計修理センター渋谷が販売前のメンテナンスの依頼を受けた一本です。複数本の腕時計をお持ちでご購入から長期間が経過している場合、ご購入店やメンテナンス履歴を忘れてしまう方がおられます。今回お持ちになられた方も同様でさらに別の時計と混同なさっていました。
当店では販売した品物の記録を全て残しておりますので、もしお客様がお忘れになっていても最適な判断ができます。

今回のビッグ・バンはご購入の後メンテナンスの記録がありませんでした。またピンクゴールドのK18部分がすっかり変色してしまい黄色味が強いこと、ご使用傷が多く外装仕上げの跡がないこと、リューズの操作が重いことから、メーカーや他店でもメンテナンスをされていないと推測をたてました。
バックルのボタンの動きが渋くなっていたので状態を確認しました。ビッグ・バンのバックルは構造にいくつかのバリエーションがあり、今回は画像の矢印で指した銀色のパーツを押しつつ金色のプレートを上か下方向にスライドすると分解できるタイプです（画像2）。バックルの内部は埃が詰まり、ボタンを押し出しているバネが満足に伸び縮みできなくなっていました。幸い腐食はなく洗浄のみで機能が回復しましたので、バックルを組み直しムーブメントの状態確認を進めました。

搭載しているムーブメントはコンセプトウォッチファクトリーのCal.031をベースにしたCal.4104です（画像3）。自動巻き受けにHUB4100とHUB4104の両方とも刻印されており、Cal.HUB4100は塗料が入っています。メーカーサイトはCal.HUB4100のみ掲載されていますので、HUB4104はバリエーションの一つということでしょう。Cal.031はETA Cal.7750のジェネリックムーブメントですので元となったETA Cal.7750とほとんど変わりません。
テンプの下にはコンセプトウォッチファクトリーのエボーシュマーク の〔C〕が打刻されています（画像4）。コンセプトウォッチファクトリーは2006年に設立の時計会社としては比較的新しいメーカーで、ETAのジェネリックムーブメントの他にジェイコブやブルガリなどの複雑時計やブガッティとのコラボレーションモデルも手掛けています。

内部は油が切れており作業跡もなかったためオーバーホールが必要と判断しました。分解しつつパーツの状態を確認するとゼンマイとケースパッキンが経年劣化していました。パーツの交換後に洗浄・注油・組立てを行うと良好な精度を記録できましたので、外装仕上げを終えたら店頭に並ぶ予定です。

こちらのウブロ ビッグ・バンをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金¥48,000、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で外装仕上げ¥18,000、ゼンマイが¥6,500です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

バックルの内部やリューズ・クロノグラフボタンなどの隙間は知らないうちに汚れ入り込んでしまいます。使用後に拭き取りなどを行っていても、こうした汚れは除去できません。溜まった汚れは湿気を吸着し放置すると腐食の原因にもなりますので、専門店による定期的な洗浄をお勧めします。
また使用頻度が低くとも経年により内部の油は劣化します。ゼンマイを巻けば使えるからとついつい長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、いよいよ動かなくなった時にメンテナンスを行おうとしたらオーバーホールだけでは完調にならず交換パーツが多く必要になったり、当店で入手できないパーツの交換が必要になり、高額なメーカー修理しか方法がない場合もあります。
長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。