ベル＆ロス BR03-92-CBL オーバーホール・洗浄・切替車交換

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例は斬新な角形ケースが印象的なコレクション「BR03」です（画像1）。
航空機のコックピット・クロックから発想を得たこの時計は、視認性を重視した機能的な道具という面が一段と強調されています｡見た目のインパクトもありますので個性的な時計をお探しでしたらお勧めの一本です｡

こちらのベル＆ロス BR03-92-CBRは渋谷本店にてお買取りさせて頂き、時計修理センター渋谷が販売前のメンテナンスの依頼を受けた一本です。ギャランティーは付属するものの日付の記載はななく販売日はわかりませんが、外装に付着していた汚れから頻繁にご使用されていたと推測しました。
ところでお客様にお話しすると驚かれる方もいらっしゃるのですが腕時計の外装は思っている以上に簡単に傷がついてしまいます。例えば汚れを乾いた布で拭き取る、着用中に袖口に擦れるなどでも簡単に細かい傷がついてしまいます。どんなに丁寧に扱っていても着用している限り時計に全く傷がないということはありません。ですが、汚れが付着して頻繁にご使用されていたことがわかるにもかかわらず今回のBR03-92-CBRには傷がついていません。セラミックの高い硬度による耐傷性が十分に発揮された結果ですね。
ただし耐傷性が高いからといって過信は禁物です。今回のBR03-92に傷や破損はありませんでしたがセラミックは非常に硬く擦り傷などがつき難い反面、金属と違い粘弾性はないため強い衝撃を受けると割れることがあります。身近なものでセラミックといえば食器に使われている素材を想像するとわかり易いでしょうか。傷がつき難いからと雑に扱うと欠けや大きく割れてしまうこともあり、金属製の外装では当たり前にできる仕上げ直しや修正はできません。欠けただけでも綺麗にするにはメーカーでケース交換するしか方法はありませんのでくれぐれも取り扱いにはご注意ください。

ケースはベゼル･ケース本体･裏蓋の３ピース構造で､四組のネジで3つを挟み込んで固定しています。ベゼル側に付くネジの胴体が四角に作られており、ベゼルとケース本体に四角の穴が開けられているためネジ溝を(画像1)のように揃えた向きに取り付けることでデザインの一部になり、裏蓋側からネジで締める際の回り止めの役割にもなっています（画像2・3）。
搭載しているムーブメントはセリタ Cal.SW300-1です（画像4）。手巻きをするとローターが勢いよく回転する連れ回りが起きている状態でしたので、オーバーホールは必要と判断しました。また自動巻き機構を外し、その裏側を見てみると摩耗粉が多量に発生していたことからパーツの交換を想定して作業を進めました。一点ずつパーツの確認を行い分解していくと、やはり連れ回りの原因である切替車が摩耗により交換が必須の状態でした。新しい切替車を用意して洗浄・組み立て・注油のオーバーホールを行うことで連れ回りも解消し調子よく動作しましたので洗浄を行い後日店頭に並ぶ予定です。

ベル＆ロス BR03-92-CBLをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金が¥28,000、切替車が1枚¥7,000の合計¥35,000です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

外装に傷がなく使用に問題を感じていなかったとしても内部の油は劣化・減少していき、そうでなくとも長期間メンテナンスせずに放置してしまうと油は経年により劣化します。油が劣化・枯渇した状態で動かすと歯車や軸に大きな負担かかかります。そのまま動かし続けてしまうと摩耗粉が全体に散ることで一気に摩耗が進み、止まった時には大量のパーツ交換が必要になることもあります。
なにかおかしいなと思いあたる場合はぜひ当店にご依頼ください。