パネライ ルミノールマリーナ オーバーホール・外装仕上げ・香箱一式交換

担当者コメントと修理のポイント

皆様、こんにちは。 宝石広場 アフターサービス部の小島です。 2025年も残すところあと僅かとなりました。 本年も格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、今年最後にご紹介する修理事例は、パネライ ルミノールマリーナのオーバーホールです。（画像1：時計本体の外観） ※すでに販売済ですがこちらでも詳細をご確認いただけます。
今回の個体はシリアルF番、2003年製のお時計です。 リューズ操作に違和感はなかったものの、測定したところ振り角が標準値よりも低い状態でした。
裏蓋を開けてムーブメントを確認します。搭載されているのはETA Cal.05511をベースとしたCal.7750-P1です（画像2：裏蓋を開けたムーブメントの様子）。
目に見える箇所の油は残っていましたが、若干の劣化が見られ、特に自動巻き機構付近にはパーツが擦れて出た摩耗粉が散らばっていました。摩耗粉をそのままにすることはできませんので、安心してお使いできるようにオーバーホールを行うことにしました。

針と文字盤を外すと、パネライ特有の日送り機構が現れます（画像3： 文字盤を外したムーブメントの様子）。ごく簡単に説明すると中央左に見えるのが、日送り車と日送りレバーです。日送り車と連動してカムは回転します。カムが一定の位置まで回転すると、レバーがカムの段差を滑りと落ち、その先端で日付ディスクを送り出す仕組みになっています。

さらに分解を進めていくと、今回の不調の決定的な原因が見つかりました。香箱（こうばこ）の内壁が極端に摩耗していたのです（画像4：摩耗が見られる香箱のアップ）。香箱は内部にゼンマイを収納しているパーツです。一般的な自動巻き時計は、ゼンマイが最後まで巻き上がっても手巻き時計のように巻き終わりはありません。最後までゼンマイが巻き上がり一定の力を超えると、ゼンマイの後端が香箱内壁の凹みを滑り次の凹みに移動する（スリップする）ことで、疑似的に巻き終わりになるよう設計されています。しかし、長期間未整備のまま使い続けたことで、この内壁の段差が削れて摩耗していました。これでは本来凹みで留まるトルクよりも早く次の凹みに移動してしまい、設計されたトルクを維持できません。その結果として振り角の低下（精度の不安定）を招いていたのです。

今回は劣化した香箱一式を新品に交換し、全パーツの洗浄・注油を行いました。 ケースに戻した後、数日間のランニングテストを実施し、本来の力強い運針と精度を取り戻したことを確認して完了です。

今回のパネライ ルミノールマリーナを修理依頼いただいた場合はオーバーホール基本料金：￥32,000～（パーツ代別途）、外装仕上げ（セット料金）：＋￥12,000、香箱一式交換を¥9,500にて承っております。
遠方のお客様や、外出が難しいお客様には、便利な宅配キットもこちらから承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

大切な時計を長く良好なコンディションでご愛用いただくために、しばらくメンテナンスを行っていない心当たりのある方は、ぜひ一度私たちにご相談ください。 経験豊富な専門スタッフが、お客様の時計の状態を丁寧に診断し、最適なメンテナンスプランをご提案いたします。

改めまして、本年も誠にありがとうございました。 皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。