パネライ ラジオミール S.L.C 3デイズ オーバーホール・外装仕上げ・風防磨き
腕時計修理内容
ブランド名 | パネライ |
モデル名 | ラジオミール S.L.C 3デイズ |
型番 | ref.PAM00449 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上げ・風防磨き |
修理料金 | ¥59,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業7週間 |
症状タグ | 定期メンテナンス油切れ |
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今回ご紹介する修理事例はパネライ ラジオミール S.L.C 3デイズです。
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風防には深い傷がついていました。
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搭載しているムーブメントはCal.P.3000です。
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ムーブメントの各受け板はエッジの立った面取り加工が施されています。画像では分かりづらいのですが、パネライの面取り仕上げは独特です。
パネライ ラジオミール (中古)|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はパネライ ラジオミール S.L.C 3デイズです(画像1)。O番2012年製「PAM00449」、750本限定生産のレアモデル。1930年代にイタリア海軍の特殊潜水部隊のために製作したラジオミールを再現したモデルです。当時のモデルを再現しているだけあって針も現行では少なくなってきたブルースチールを採用。随所にヴィンテージ感を漂わせるこだわりの一本となっています。ギャランティーによると、2012年12月に販売された正規品。
2018年にメーカーでコンプリートサービス(オーバーホール)を行った後、当店でご購入いただいた時計のお買取り品です。販売前に改めてメンテナンスを行うため宝石広場 時計修理センター 渋谷が依頼を受けました。
外装はドーム形状の風防も含めて全体的に傷がついていました(画像2)。 針や文字盤を守る風防の素材には三種類。サファイアガラス・ミネラルガラス・プラスチックがあり、このパネライ ラジオミールS.L.C 3デイズはプラスチックの風防を採用しています。
風防に採用される素材の大まかな特徴としては硬く傷が付きにくいけれど加工が難しく高価なサファイアガラス・ある程度の硬さがあり加工は容易だが傷は付きやすいミネラルガラス・柔らかく加工や形状の自由さがあり傷つきやすいプラスチックといったところ。傷がつきやすいと書くとプラスチックの風防が悪いものに聞こえてしまいますが、そうではありません。プラスチックは柔らかく傷がつきやすい反面、傷を削り取って研磨し目立たなくすることができます。一方でサファイアガラスは硬く傷はつきづらいですが、ついた傷はプラスチックのように磨き取ることができません。これはミネラルガラスも同様で綺麗にするためには交換するしかありません。また強い衝撃を受けたときプラスチックは完全に割れる前にヒビが入って形を留めることがありますが、サファイアガラスは砕けてしまい破片が針や文字盤にダメージを与える場合もあります。どちらもぶつけなければ関係のないことではありますが、どれほど注意を払って使っていても事故は起こり得るものです。
ここまで簡単に素材の特徴を並べてメリット・デメリットについてふれましたが、個人的にはプラスチック風防の柔らかい感触やヴィンテージ感あふれる見た目が1番のポイント。30年代の再現モデルとしてサファイアではなくプラスチック風防を採用したのもうなずけます。
今回のラジオミールS.L.C 3デイズの風防についた傷は少し深く完全に磨き取れるかは作業を行ってみないとわかりませんが、少なくとも現状よりは目立たなくできそうです。深い傷は無理に磨き取ろうとすると素材が痩せて強度も落ちてしまううえ、光に当てた際に反射光の歪みも目立ってしまいます。
どこまで傷を取りきれるかという判断は作業を行いながらでなくてはなりません。
搭載しているムーブメントはパネライが自社開発したCal.P3000(画像3)です。ムーブメントの作りを見て同じリシュモングループ内のヴァル・フルリエが開発を行ったのではないかと推測しています。ただし設計がヴァル・フルリエだったとしても面取り仕上げにはパネライのみに見られる特徴があり、よく見ると縦に多数の線が入ったような加工がされています(画像4)。前回作業を行ってから5年経過し、内部の油は経過年数なりに消耗・劣化していました。
風防の傷が少し深めだったことから内部に衝撃の影響がないか疑いながら分解しましたが、幸い交換の必要なパーツも再調整の必要な箇所もなく洗浄・組み立て・注油にて調子よく動作するようになりました。
今回のラジオミール S.L.C 3デイズをお客様からお預かりした場合はオーバーホールが¥44,000、オーバーホールとセットで外装仕上げをした場合+¥12,000、仕上げと一緒に風防磨きをした場合は+¥3,000にてご依頼を承っております。配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
使用していればプラスチック風防には少なからず傷がつきますし、目に見える症状がなくとも内部の油は徐々に劣化し汚れていきます。ゼンマイを巻けば使えるからとついつい長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいます。いよいよ動かなくなった時にメンテナンスをしようとしてもオーバーホールだけでは完調にならず交換パーツが多く必要になったり、当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。最悪の場合はメーカーでも国内でのパーツ入手ができずスイス修理で長期間かかることもあります。
傷ついたままのプラスチック風防は見た目や傷の程度によっては視認性も悪くなりますので長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方はオーバーホールと一緒に外装仕上げと風防磨きもぜひ当店にご相談ください。