パネライ ルミノール パワーリザーブ オーバーホール・外装仕上げ
腕時計修理内容
ブランド名 | パネライ |
モデル名 | ルミノール パワーリザーブ |
型番 | ref.PAM01090 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上げ |
修理料金 | ¥47,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業1,5ヶ月 |
症状タグ | 止まる油切れ |
今回ご紹介する修理事例はパネライ PAM01090 ルミノール パワーリザーブのオーバーホール・外装仕上げです。
秒針の直上付近という目につきやすい箇所に黒文字盤に対して悪目立ちしやすい銀色の線がありました。
搭載しているムーブメントはCal.OPXXXIIです。
ガンギ車やアンクルは穴をあけられて軽量化されています。
パネライ ルミノール(中古)|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
パネライ ルミノール(新品)|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はパネライ PAM01090 ルミノール パワーリザーブのオーバーホール・外装仕上げです(画像1)。
ルミノール パワーリザーブは2001年に発表以来ロングセラーだったPAM00090から2017年にPAM01090へマイナーチェンジしました。 ムーブメントがCal.OP ⅨからCal.OP XXXIIに変更されたことでパワーリザーブの最大量が40時間から50時間に伸びています。
こちらのPAM01090は渋谷本店でお買取り後、販売前のメンテナンスを修理センター渋谷が依頼された一本です。パネライはシリアルナンバーの先頭のアルファベットからも製造年を判断できます。稀に製造年と販売時期が離れていることがあり、ギャランティーカードに記載の販売日が新しくても製造年で確認すると長期間経過していることがあります。時計を見る前に日付けを確認することにしました。
ギャランティーカードに記載された日付けは2017年でモデルチェンジ直後の販売だとわかりました。次に時計を見ると打刻されたシリアルナンバーの先頭はTで、こちらも2017年を表しています。製造と販売はともに2017年ですので、間を置かずにお客様の手元に渡り8年ほど経過しています。経過年数を考慮すると内部の油が劣化したことでオーバーホールが必要な状態と予想し、状態確認はメーカーや他店の作業跡の有無を重点的に調べることにしました。
外装は多数の傷がありガラスにも銀色の線が見えました(画像2)。ガラスは硬度が高いため仕上げができませんので傷を無くすには交換が必須です。傷が目立たない場合はそのままで販売することもありますが、今回のPAM01090のガラスは秒針の直上付近で目線が行きやすく黒文字盤に対して目立ちやすい銀色の線でした。
一見すると傷に見えても、何かが強い力で擦りつけられて付着している場合があります。傷の有無は爪先や固いもので引っかかりによって確認することが多いのですが、付着物だった場合も引っかかりはあるので注意が必要です。こちらのPAM01090は銀色の線に引っかかりはあるものの、丁寧に状況を確認すると凹みというよりむしろ凸状の感触でした。そこでリューターで線の部分を擦ると綺麗に落とすことができました。今回は問題ありませんが、ガラスの表面に無反射コーティングが施されている場合はリューターで擦るとコーティングまで剥がしてしまいます。かえって目立つようになっしまいますので、付着物であっても作業前にしっかりと見極めなくてはいけません。
リューズ操作に気になる箇所はなかったので、裏蓋を開けて内部の確認を進めました。搭載しているムーブメントはCal.OPXXXIIです(画像3)。”OP”がキャリバーナンバーについた場合は主にETAなどの汎用ムーブメントをベースにパネライが改造したムーブメントを指しています。Cal.Ⅸへの主な改造点はクロノグラフ機構の除去とパワーリザーブインジケータ―の追加、コート ド ジュネーブなどの仕上げ処理です。Cal.ⅨからCal.OPXXXIIへの機能上はパワーリザーブ目盛りの増加や巻上げ方式の変更が主な変更点です。見た目には受け板の形状が大きく変わり、細かく見るとパーツの加工精度が向上したおかげかガンギ車やアンクルは穴をあけられて軽量化されています(画像4)。
油は劣化・減少していたためオーバーホールが必要な状態と判断しました。分解しつつパーツの状態確認を進めると、幸い交換が必要なパーツは無く軽微な調整のみで対応できる状態でした。調整後に洗浄・組立て・注油を行うと良好な動作を記録し、実測も満足できるものでしたので外装仕上げの後に店頭に並ぶ予定です。
こちらのパネライ PAM01090 ルミノール パワーリザーブをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金¥35,000、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で外装仕上げ¥12,000です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
今回のパネライの様に大ぶりなモデルは一見すると頑丈に見えますが、経年による劣化や摩耗はあります。ゼンマイを巻けば使えるからとついつい長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、不動までならなくとも油が飛散したり軸が曲がると本来の動きができないため精度は悪化します。いよいよ動かなくなった時にメンテナンスを行おうとしたらオーバーホールだけでは完調にならず交換パーツが多く必要になったり、当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。どちらの場合もメーカーでの高額な修理費用がかかってしまいます。
長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。