ノモス タンジェント38 オーバーホール、外装仕上
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
TN1A1W238|ノモス タンジェント38のオーバーホール・修理|腕時計のオーバーホール・修理なら【宝石広場 時計修理センター 渋谷】
担当者コメントと修理のポイント
ご購入から4年ほどたち、調子はいいけれど定期メンテナンスを行いたいということで、はじめてのオーバーホールをご依頼に渋谷へご来店いただきました。
お時計はノモスのタンジェント38です。(画像1)。
ドイツ時計らしいシンプルなデザインですがそれだけではありません。内部は汎用ムーブメントではなくプゾーのCal.7000をベースに設計したキャリバーアルファを搭載していまして、ほぼすべてのパーツを自社製造しているなど品質にも力を入れています。
画像2をご覧ください。
時計を分解してみると輪列受け(左側の部品)だけではなく、組み立てられるとほとんど見えない地板(中央の部品)にキャリバーナンバーとメーカー名が刻印されていまして、おまけに分解しないと見えない香箱(右の部品)にもメーカー名が刻印されています。
輪列受けはともかく、香箱については分解しないと全く見えない位置に装飾がされているあたりにノモスの美意識であったりムーブメントに込めた力の入れようが見て取れる気がします。
裏蓋はスクリューバックではなくスナップバック式ですが3気圧の生活防水をもち、裏蓋を開けてみますと普段はケースバックからも見えない中枠を見ることができます。
この中枠というパーツはモデルにより形こそ違いますが多くのメーカーが採用しています。
採用される理由は単純にムーブメントより大きな文字盤を使うためであったり、外部から受ける衝撃を直接ムーブメントに伝わらないようにするためなどいろいろと想像できますが、必ずしも1つの部品に1つの機能というわけではありませんので複数の意味があるのでしょう。
今回お預かりした時計の中枠には裏蓋側にむけて凸があります(画像3)。
この凸は裏蓋の内側に当たることでムーブメントと文字盤をケースに密着させてズレにくいようになっています。
どういうことかといいますと、ムーブメントの側面は平らではなく引っ掛かりがありまして中枠はそこにかぶさるようにして取り付けされているのです。
そうして取り付けられることで中枠は文字盤だけではなくムーブメントもケースのガラス方向に押し付けていまして、文字盤とムーブメントをケースへ密着させ、さらに文字盤とムーブメントの間にも隙間ができないようにしています。
お預かりした時のお話どおり部品の摩耗などはなく、交換が必要なパーツはありませんでしたのでオーバーホールと外装仕上にてお渡しできました。
S様 ご依頼ありがとうございました。