ジン 603.EZM3 オーバーホール・2番.3番.4番車交換
ジン (中古) を買うなら宝石広場 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
603.EZM3|ジン 603.EZM3のオーバーホール・修理|腕時計のオーバーホール・修理なら【宝石広場 時計修理センター 渋谷】
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はジンの中でも極限状態のプロユースモデルとして人気を誇るEZMシリーズです(画像1)。
こちらはドイツ警察特殊部隊が採用しているダイバーモデル「EZM3」です。隊員達が使用する際に『何が必要で何が不必要か』というところから開発がスタートしただけに、実用品として考え抜かれています。リューズが通常とは逆の9時に取りつけられているため手の甲に当たらなくなり普段使いとしても扱いやすいのではないでしょうか。
こちらのジン EZM3は渋谷本店にてお買取りさせていただいた後、販売前のメンテナンスをアフターサービス部に依頼された1本です。
お買取り時の話では調子よく使っていたが急に動かなくなったとのことでした。外装には大きな打痕などはありませんでしたが、事前のお話通りゼンマイを巻き上げても不動でした。内部の状態によってはそのまま操作を続けることで状態が悪化することがありますので、症状を確認したあとは操作をやめて内部を見てみました。
搭載しているムーブメントは ETA Cal.2824-2です(画像2)。右リューズとの変更点は文字盤と画像には写っていない日付けの印刷が180°回転しています。
ケース内部は全体的に磨耗カスと汚れが散らばり油も切れていました。当店がお預かりした履歴はなく正確なことはわかりませんが長期間メンテナンスを行っていなかったのではないでしょうか。油が劣化し、その状態で使い続けたことで歯車の軸が摩耗していき、摩耗カスが軸に付着することで油の劣化と軸の摩耗が加速してしまったのだと推測しました。
止まる直前まで問題なくご使用されていた伺っていましたが、ご使用時の精度や持続時間と内部の状態がかならずしも一致するわけではありません。内部の油が切れていても偶然ご使用環境と合致して精度が良いということはありますので定期的なオーバーホールをお勧めいたします。
分解を行いつつパーツ交換が必要か1つづつ見極めていきました。画像3、4は特に汚れていた4番車です(画像3、4)。
画像3は針と文字盤を外したところです(見やすくするために他の歯車は取り外してあります)。中央に見える金色のパイプと4番車の間には大量の汚れが付着していました。画像4は4番車を取り外しておおまかに汚れを取り除いたところです。軸が摩耗してしまいところどころに段差ができてしまっています。他にも2番車と3番車は摩耗が進んでいたため交換が必要でしたが、幸い地板や受けなどの高額なパーツはそのまま使えました。念入りに洗浄の後で組み立て・注油・ケーシングを行い、良好な精度が記録できましたので店頭へ並ぶ予定です。
こちらのジン EZM3をお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金が26,000円、別途パーツ代が14,000円です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
ご使用に問題がないからといっても必ずしも内部の状態が良いとは限りません。ゼンマイを巻けば使えるからと長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、いよいよ動かなくなった時にメンテナンスを行おうとしたらオーバーホールだけでは完調にならず交換パーツが多く必要になったり、当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。本当に最悪の場合はメーカーでもパーツ入手ができず時計の寿命(修理不可)になることもあります。
長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。