エベラール トラベルセトロビトレ オーバーホール・外装仕上・脱磁
腕時計修理内容
ブランド名 | エベラール |
モデル名 | トラベルセトロビトレ |
型番 | ref.21020.2 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上・脱磁 |
修理料金 | ¥35,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業6週間 |
症状タグ | 油切れ磁気帯び進む |
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時計を正面から。
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搭載されたムーブメントのCal.6498-1は美しく仕上げされています。
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迫力があり大きなテンプはチラネジ付きです。
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左が脱磁器で右が方位磁石です
|エベラール トラベルセトロビトレ腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
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私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はエベラール トラベルセトロビトレref.21020.2です(画像1)。
あまり耳慣れないメーカーですが、歴史は古く1887年に創業と非常に長い歴史を持ったメーカーです。
トラベルセトロビトレはエベラールが1996年に発表したシンプルな3針モデルです。今では特別珍しくない43mmというケースもいわゆる”デカアツ”ブームの前は大型のケースは珍しく、個人的にも目を引かれた覚えがあります。
こちらは渋谷店でお買取をさせて頂き、販売前にメンテナンスを行うためアフターサービス部に回ってきた一本です。
搭載しているムーブメントはCal.6498-1です(画像2、画像3)。
ムーブメント外周のコート・ド・ジュネーブ、大部分を覆うペルラージュ、角穴車に刻印されたモデル名などにより美しく仕上げされています。また機能面も大幅な改修こそされていませんがテンプの緩急針をトリオビス式に変更し微細な調整がしやすくなっており、ポイントを抑えた改良がなされています。
Cal.6498と少しナンバーの違うCal.6497という兄弟のようなベースムーブメントがあります。
今はどちらもETAというスウォッチ傘下のメーカーが製造しているムーブメントですが、元々はユニタスというメーカーが懐中時計用として1950年代ごろに設計・開発したものです。紆余曲折ありユニタス社はETAに吸収合併されましたが、Cal.6497/6498は今でもほぼ当時の設計のまま使われているという長い歴史をもつムーブメントです。
2つのムーブメントの違いはリューズが3時位置の場合Cal.6497は9時、Cal.6498は6時に秒針が配置されている点です。
秒針の位置の違いは表蓋がなくリューズが12時位置にあるオープンケースの懐中時計用としてCal.6497があり、表蓋がありリューズが3時位置にあるハンターケースの懐中時計用としてCal.6498が使い分けられていたからです。
オープンフェイス、ハンターケースそれぞれの懐中時計としては文字盤に対して6時位置に秒針が配置されていましたが、腕時計にオープンフェイス用の6497を使うとリューズの延長上に秒針が来るため9時位置となり、パネライなどは誕生の由来からそのままの位置で問題ありませんが、一般的なスモールセコンドタイプの時計は6時位置に秒針が来る必要があるためハンターケース用の6498のほうが都合が良いのです。
話を今回のトラベルセトロビトレに戻します。
アフターサービス部に回ってきた時点で精度は極端に大きな進みがでていました。
こうしたときはまず1番に磁気帯びを疑っています。精度が大きく進む原因のうちほとんどが磁気帯びにあることや、それ以外の原因は特定の条件下でないと起きなかったり原因が目に見えることに加え、脱磁は比較的簡単に対処ができるからです。
調べ方も簡単で時計を方位磁石に近づけるだけです。→磁気帯びと脱磁についてはこちらの動画(6:26~)にて紹介しています。
磁気帯びをしてしまった時計の磁力によって方位磁石の指針がくるりくるりと回転してしまいました。
当店で使用している脱磁器はこちらです(画像4)
時計を機器中央の穴に持っていき、黒い電源ボタンを押しながら一気にできるだけ遠くへ離したうえで電源を切ると時計の磁力を抜くことができます。
脱磁を行うと計測精度は+80秒/日ほどから+10秒/日ほどへと落ち着き、進みの原因が磁気によるものだったことがはっきりとしました。
身の回りに携帯電話、スピーカー、バックの留め具など強い磁力を持った製品が多数ある現代において完全に磁気帯びを防ぐことは難しく、気が付かないうちに時計を磁気帯びさせてしまう方も多くいらっしゃいます。オーバーホールをご依頼いただいた場合は料金セット内に含めて作業を致しておりますのでご安心ください。
内部は油も切れて数年経過した状態でしたが、パーツ1つ1つが懐中時計用として設計された厚みのある仕様かつ強いゼンマイを使っている関係上、丁寧に洗浄、組み立て、注油を行うことで確実な動作をするようにできました。
こちらのエベラール トラベルセトロビトレをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金で26,000円~(パーツ代金別途)。
外装仕上げも追加の場合はオーバーホールとのセット料金で+9,000円となっております。
ご使用中の精度が気にならないからとメンテナンスをせずにお使いになられる方もよくお見かけします。ご使用になっているなら当然のこと、お使いにならなくとも経年により内部状態は刻一刻と変化しています。目に見える不調が起きたときには大量のパーツ交換が必要な事も珍しくはありません。長期間メンテナンスをされていないと心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。