グッチ スケルトン オーバーホール
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
700SQ|グッチ スケルトンのオーバーホール・修理|腕時計のオーバーホール・修理なら【宝石広場 時計修理センター 渋谷】
担当者コメントと修理のポイント
一見ではグッチとわからない珍しいスケルトンモデルです(画像1)。
文字盤はさりげなく6時位置にブランドロゴがあるだけで外周部分を残してほとんどの部分を取り除かれています。通常は文字盤の下に隠れて見ることのできない歯車はもちろん、数字の形に型抜かれた形式で非常に凝った作りのデイトディスクとカレンダー送り機構大胆にくり抜かれた地板からは香箱内部のゼンマイの動きまで見えます。
裏蓋もスケルトンを強調するようにシースルーバックにされ表からも裏からも反対側が見えるようになっています。(画像2)
大きな面積を占めるローターもくり抜かれていますのでシースルーバックから歯車の動きもじっくりと眺めることができるのもスケルトンモデルならではですね。
こちらは渋谷店でお買取りさせていただいたもので、販売前のメンテナンスのためアフターサービス部に回ってきました。
自動巻き機構を取り外すとローターや受けなど大きなパーツがなくなることで、いっそう肉抜き加工が際立ちます。
この状態ですと手巻き機構の動きや香箱からテンプまで輪列の力の伝わり方がとてもわかりやすいですね。大きく肉抜き加工された香箱からは内部に収められたゼンマイもさらによく見えるようになります(画像3)。
画像4は自動巻き機構の裏側です。
肉抜き部分が大きいためかローターと受けを外してみると組み付けられた歯車が浮いているようにさえ見えてしまいます。
自動巻きの受け板は機械式時計のパーツのなかでも大きいローターが取り付けられています。見た目の抜けだけを優先してしまっても肝心の機能である回転錘(ローター)が安定して動作しなくては意味がありません。このようにかなりの部分を肉抜き加工されていても強度不足が原因で不調が起きたような形跡は見られませんので、装飾的な美しさと機能が両立する設計と技術で作られていることがわかります。
肉抜き加工のためわかりづらいですがベースになったムーブメントはETAのCal.2892-2です。
時計が回ってきた時点では完全な不動状態でした。作業の形跡やサインなどもありませんでしたので今まで一度もメンテナンスはされていないようで、油は完全に涸れてどこからか黒い摩耗カスも出ていました。黒い摩耗カスはムーブメント全体に散らばっていましたが、ひとつひとつパーツを点検していくと自動巻き機構の切替車と4番車から出ていることがわかりました。
発生源である歯車の軸先を穴石から見た際は真っ黒で交換も考えましたが、軽く洗浄して状態を見たところ摩耗の程度は軽微でそのまま再利用ができそうでした。
その他すべてのパーツを分解してみましたが、摩耗カスが散っていた状態から受けた印象ほど状態は悪くはなく、パーツ交換や特別な調整が必要な個所もありませんでした。すべてのパーツを洗浄し慎重に組み立てと注油を行った後はランニングテストにて最終的な動作の確認と精度調整をスムーズに終えることができました。 この時計は外装の仕上をして店頭に陳列予定です。
お客様よりグッチのスケルトンモデルをお預かりした場合のオーバーホール基本料金は¥33,000~(パーツ代金別途)、外装仕上はオーバーホールとセット価格で¥12,000にてご案内致しております。
メンテナンスをついつい先延ばしにしてご使用になっていると表面上は問題がなくとも内部は気が付かないうちに劣化してしまい、ある日突然止まったり操作ができなくなったりしてしまいます。お手元の保証書などを確認されて心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。