モーリスラクロア アイコン オートマティック42 オーバーホール・外装仕上げ

腕時計修理内容

ブランド名 モーリスラクロア
モデル名 アイコン オートマティック42
型番 ref.AI6008-SS002-430-1
修理内容 オーバーホール・外装仕上げ
修理料金 ¥49,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。
修理時間 お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業7週間
症状タグ

モーリスラクロア アイコン オートマティック42 オーバーホール・外装仕上げ

  • モーリスラクロア アイコン オートマティック42 今回ご紹介する修理事例はモーリス・ラクロアが2016年から展開している「アイコン」のオーバーホールです。

    今回ご紹介する修理事例はモーリス・ラクロアが2016年から展開している「アイコン」のオーバーホールです。

  • モーリスラクロア アイコン オートマティック42 搭載しているムーブメントはセリタのCal.SW200-1をベースとしたCal.ML115です。ローターのMAURICEと印字された付近にモヤの様に黒い部分があるのがわかりますでしょうか。

    搭載しているムーブメントはセリタのCal.SW200-1をベースとしたCal.ML115です。ローターのMAURICEと印字された付近にモヤの様に黒い部分があるのがわかりますでしょうか。

  • モーリスラクロア アイコン オートマティック42 矢印で指した黒いモヤは摩耗粉です。粉が特に多く付着している位置から推測すると自動巻き機構から出ているようでした。

    矢印で指した黒いモヤは摩耗粉です。粉が特に多く付着している位置から推測すると自動巻き機構から出ているようでした。

  • モーリスラクロア アイコン オートマティック42 ムーブメントの各所を確認していき油が変色し流れ出ている箇所を見つけました。

    ムーブメントの各所を確認していき油が変色し流れ出ている箇所を見つけました。

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はモーリス・ラクロアが2016年から展開している「アイコン」のオーバーホールです(画像1)。
アイコンオートマティックは、1990年代に人気を博したベゼル上の6つの爪が特徴の「カリプソ」を現代風にアップデートして復刻されたモデル。剛性感のあるケースとブレスレットにクル・ド・パリ装飾を文字盤の全体に施すことで、スポーティーでありながらラグジュアリー感もお楽しみ頂ける一本です。シースルーバックから覗くムーブメントにはセリタのCal.SW200-1をベースとしたCal.ML115を搭載し、防水性能も20気圧防水を確保していますので一年を通じて安心してお使いになれます。

こちらのアイコン オートマティックは当店で新品販売した時計を渋谷本店でお買取りし、販売前のメンテナンスを宝石広場 時計修理センター渋谷が依頼を受けた一本です。
状態は外装の傷や打痕が目立ち、手巻きも重く感じられました。特にリューズ操作についてはベースムーブメントとなったCal.SW200-1は手巻きが重めのムーブメントだということを考慮に入れても許容を超えて重く、販売から二年ほどと期間は短いのですが内部に何らかの不調があると予想をしました。ただ操作感が悪い原因によってムーブメント全体に悪影響がでていなければ軽メンテナンスのみで調子よく動作する可能性もありましたので、まずはシースルーになっている裏蓋から内部を確認することにしました。

搭載しているムーブメントは先述の通りセリタのCal.SW200-1をベースとしたCal.ML115です(画像2)。ローターのメーカーロゴ付近、特にMAURICEと印字されている付近にモヤの様に黒くなっているのがわかりますでしょうか。見えやすくするため裏蓋を外して白背景で画像を撮りました。矢印で示した黒いモヤは摩耗粉です。(画像3)。粉の付着している位置から発生個所も推測できましたが他の部分への影響も確認するため自動巻き機構を外してみました。すると裏側にはより多くの摩耗粉が散っており角穴車の直上付近は粉が歯車と同形状に付着し、散らばった粉の影響により油は劣化してしまい切替車は交換が必要なほど摩耗していました。これほど多量に粉が散らばっている状態ですと他の輪列にも影響しますのでオーバーホールは必須と判断しました。

この角穴車から自動巻き機構にかけて摩耗粉が大量にでてしまう症状は、手巻きが重めのETA Cal.2824系やSERITA Cal.SW200系のムーブメントでよく見かけます。手巻き時に自動巻き機構にかかる力が大きいため真鍮の歯車と鉄製のカナが噛み合う部分は力がかかると真鍮の歯車が削れてしまいます。手巻きの際にリューズを乱雑に速く回転させると歯車にかかる力が大きくなりますので、丁寧にゆっくりと巻き上げることが大切です。ご使用中は腕の動きでローターの自動巻き機構によってゼンマイを巻き上げることを基本として、運動量が不足し巻上げ量が足りない場合には補助として手巻きも併用して下さい。また時計が止まった際にはまず必要な動力を得るため手巻きによる動き出しをお願いします。どれだけ手巻きを行えばいいかはご使用状況により大きく異なります。止まった状態からご使用になる際、手巻きを数回して動き出すとすぐに手巻きをやめてしまう方をお見掛けします。ですが機械式時計はある程度までゼンマイが巻上げされていないと正常に動作するための力が弱く精度も不安定になってしまいます。時計が完全に止まった後は手巻きにてリューズを50~60回ほど回転させてからご使用下さい。
またよくあるご相談に「一日中腕に着けていても腕から外すとすぐ止まってしまう」という症状があります。その場合の原因として多いのが一日中腕に着けていても「デスクワークで座りっぱなし」、「外に出るがずっと車を運転いる」など腕の動きがないためゼンマイが十分に巻上げされていないことです。ゼンマイが巻き上がるよりも使う量が多いため、手巻きを行いゼンマイを巻き上げた初日は精度が良くても数日~数か月たちゼンマイの余力がなくなってくると、徐々に遅れが出始め最終的には腕から外してすぐに止まってしまいます。このような腕の運動量の少ない方は腕に着ける前に手巻きを併用してお使い下さい。

さらにムーブメントの各所を確認していくと油が真赤に変色し、うまく撮れなかったためわかりづらいのですがはみ出している箇所を見つけました(画像4)磨耗粉が散らばった影響により変色し、衝撃によって油だまりから流れ出たようです。腕時計の使用環境というものは非常に過酷です。時計と直接ぶつからなくとも、たとえばスポーツの際に起きる様々な腕への衝撃・振動は装着している時計に影響を与えますし、大きな衝撃ではなく細かな振動も内部ネジが緩む原因になりえます。振り方によっては内部の油が油だまりから飛び散ることがあり止まりや摩耗の原因になることもあります。メーカーでも手巻きの後に動かない場合は優しく振るように指示していますし装着して過ごせば自然と時計は振られますので振ってはいけないというわけではありませんが、振る強さや頻度にはご注意ください。

話を今回のモーリスラクロア アイコン オートマティックに戻します。全て分解して確認したところ、幸い切替車以外は摩耗が進行していませんでしたので
新しいパーツとの交換後、分解・洗浄・組立て・注油にて調子よく動作するようになりました。外装仕上げの後で店頭へ並ぶ予定です。
こちらのモーリスラクロア アイコン オートマティックをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金が¥28,000、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で仕上げ¥14,000、切替車を2枚交換で¥7,000です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

長期間のご使用によって油が劣化しオーバーホールが必要な状態になっている時計はよく見かけますが、衝撃や振動はもちろん誤ったご使用方法によってオーバーホール時期を早めてしまうこともあります。今回ご紹介した手巻きの回数・頻度や時計の振り方で問題となるのはその程度ですが、どこまでが良く・どこからが悪いのかの判断や口頭での説明は難しくモデルやご使用状況によっても変わります。また腕時計は精密に組み合っている小さなパーツの集合体です。人の身体には軽微な衝撃でも止まりが起きるほどの影響を受けてしまうことも多く、修理にお持ち込みになられたお客様がきっかけとなった衝撃に気付かれていない事もあります。

なにかおかしいなと思いあたる場合はぜひ当店にご依頼ください。

モーリス・ラクロア アイコン(中古)| 「宝石広場」 (housekihiroba.jp)

  • 修理担当した時計
私が担当しました

宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。

時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。

1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。

是非お気軽にお問合せください。