セイコー クレドール オーバーホール、パッキン交換
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
GBAQ992|セイコー クレドールのオーバーホール・修理|腕時計のオーバーホール・修理なら【宝石広場 時計修理センター 渋谷】
担当者コメントと修理のポイント
3年ほど前に当店でご購入いただいたお時計の定期メンテナンスをご希望されて渋谷店へご来店いただきました。
お時計はセイコーのクレドールです(画像1)。
たまにしかご使用になられないということで傷も少なく動作も特別不満はないというお話でしたが、ご購入の際に販売員から勧められたということでご依頼いただきました。
どんな時計であっても定期メンテナンスはお勧めしておりますが、特に今回お預かりしたクレドールのようなモデルは特に強くお勧めしております。
一般的にドレスウォッチは防水性はあっても3気圧ほどと汗をかくような環境での使用を想定していません。ケースは薄くスナップ式の裏蓋を採用しているモデルが多いために裏蓋パッキンの密着性は低いことと、パッキンが細くリューズも小さいことから気密性を高くすることは難しいです。
さらにお預かりしたクレドールはスクウェアケースになっており、ラウンドケースよりパッキンの密着性を高めることが難しいため防水性能はありません。
機械油は水分の混入、摩耗カス、温度変化などによって劣化していきますので、防水性のないモデルは特に定期的なオーバーホールできれいに洗浄し新しく注油することが特に大切だと考えています。
もちろんドレスウォッチだからといって過剰に気を使う必要はありませんが、日ごろご使用されるなかで手洗いする時は外し雨天時は使わないようにお気を付けください。
このクレドールは文字盤の6時位置に”6870-5000 A”と小さく書かれているように、Cal.6780Aを搭載しています(画像2)。
Cal.6870Aは厚みが1.98mmと500円玉ほどしかなく、薄型と言われるムーブメントの中でも特に薄く作られています。パーツを1点1点見ていきますと少しでも薄くするための工夫がわかります。
まずは画像3をご覧ください。
通常まっすぐになっているアンクルに段差がついています。
耐震装置を組み込んだことでアンクルのテンプに高低差ができるため、アンクルの剣先側に段差をつけて動作位置を合わせたのだと思います。
また画像4はムーブメントを文字盤側から見た状態ですが、矢印で指したところに香箱が組み込まれています。
画像は分かりにくくなってしまいましたが、この香箱には蓋がありません。
薄型になるほどムーブメントの調整は細かく追い込む必要があり、少しのズレが精度に直結します。そのため一口にオーバーホールと言っても普段以上に各所のクリアランス確認は厳しくみる必要があます。
お預かりしたクレドールは3年ほどで定期メンテナンスにご来店頂けたこともあり、ムーブメントの状態は悪くありませんでした。経過年数なりに油の劣化や減少は見受けられましたが決して致命的なものでは無く、オーバーホールのみでお渡しができました。
T様 ご依頼ありがとうございました。