カルティエ カリブル・ドゥ・カルティエ メーカーコンプリートサービス
腕時計修理内容
ブランド名 | カルティエ |
モデル名 | カリブル・ドゥ・カルティエ |
型番 | ref.W7100041 |
修理内容 | メーカーコンプリートサービス |
修理料金 | ¥71,500-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業8週間 |
症状タグ | 止まる水/湿気入り |
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今回ご紹介する修理事例はカルティエ初の“メンズ専用”コレクション「カリブル」です。
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大きな錆の欠片が混入していたことからも修理は高額になると推測しました。
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ケースは内側にも腐食が進行していましたが、腐食の程度は軽度でしたのでケースに凹みはありませんでした。
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ムーブメントで一番目立つ腐食はムーブメントとケースを固定する機止めネジと板です。
カルティエ カリブル ドゥ カルティエ (中古)|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
カルティエ カリブル ドゥ カルティエ(新品)|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はカルティエ初の“メンズ専用”コレクション「カリブル」です(画像1)。
ラグとリューズガードの存在感が男性用コレクションらしい力強さを感じさせます。搭載するCal.1906は自社にて開発し製造も行っており、「カリブル」という名称はフランス語でキャリバーを意味するcalibreに由来しています。
こちらは渋谷本店にてお買取りさせていただき、販売前に行うメンテナンスの依頼を宝石広場 修理センター 渋谷が受けた一本です。実際の作業に着手する前に付属品から販売日が判明しないかと確認しましたが、ギャランティーには購入店のスタンプと日付の記載がありません。そこで当店が過去に取り扱った同モデルとシリアルを照らし合わせて2014年ごろと推測しました。
10年経過し当店にメンテナンスの履歴はありませんのでメンテナンスされていなければオーバーホールが必要な状況ですが、お買取り時にお客様からご使用やメンテナンス状況については聞けていないためメーカーや他店でメンテナンスが行われている可能性がありました。その場合は軽作業での完了もありうると考慮しつつ作業に着手することとしました。
外装は非常に状態が悪く、仕上げを行っても跡が残ることが容易に推測できるほど深い傷や打痕が多数ありました。また裏蓋ガラス越しに内部を見ると大きな錆の塊があったため、この時点でオーバーホールは必須です(画像2)。さらに内部に錆が発生している場合の修理費は高額になります。
この様にムーブメントに錆が発生している場合はメーカーで修理を行うことが多いです。たとえ錆が軽度だったとしても小さなパーツの集合体であるムーブメントは大きく影響を受けてしまい、錆を除去してオーバーホールを行ってもゼンマイの力がスムーズに伝わらずトルク不足により動作が安定しないこともあります。また自社ムーブメントはパーツ単体の流通がないことがほとんどのため交換が困難で、運よくパーツが入手できても高額ですのでトータルの価格は高額になってしまいます。ですがカルティエは”コンプリートサービス=ムーブメント丸ごと交換"ですのでパーツ交換の有無によって変動することがありません。基本料金が高額でもパーツ交換を考慮すると錆が発生した場合はメーカー修理となります。
今回のカリブルの状態を買取り担当者に伝え、まずは当店工房で対応可能か確認のため引き続き作業を進めました。裏蓋を留めている8カ所のネジの内2本が錆により固着していました。錆の程度は外観からは判断できず、ネジを緩めると抵抗なく折れてしまうことがあります。もし折れてしまったら残ったネジを抜く作業と新しいネジが必要となりますので慎重に作業を進めます。ネジに油を浸透させつつ緩めることで無事に抜くことができました。
裏蓋を外したところ裏蓋とケースも錆びていましたが、腐食は軽度で錆の除去にて再利用できる状態でした(画像3)。
ムーブメントで一番目立つ錆はケースに固定する機止めネジと板でした(画像4)。ここまで錆びたパーツは見た目が悪いだけでなく、劣化して脆くなっているため基本的には交換です。まずは取り外そうとしたところ機止めネジは抵抗なく割れてしまい、固着していた機止め板は剥がすと中央部分から折れてしまいました。どちらもムーブメントから除去した後に交換です。
引き続きムーブメントの分解とパーツの確認を進めていくと、機止め板・ネジに近い位置にある香箱にも錆が進行し元は銀色の歯先は一部が欠けて黒く変色していました。香箱は一番車でもあり大きな力がかかるため歯先の欠けは致命的です。また動作していても黒く変色した見た目はシースルーバックから見えてしまい美観も損ないます。
ここまで確認を進めたところで価格と美観の面でメーカー修理が適切と判断しました。掲載時点での針や文字盤を再利用した価格はコンプリートサービス¥71,500です。もし当店でご購入されたお客様からお預かりした場合はメーカーの料金と同額にて案内しております。また他店でご購入されたお時計の場合は手数料としてメーカーの料金に追加で¥15,000頂いております。
配送もこちらからご依頼を承っておりますのでお気軽にお声がけください。
これから梅雨に入りますし夏になれば気温も上がり汗をかく機会も多くなると思います。取扱いに気を付けていないと内部への湿気、水気入りによって錆が発生しますし、ケースが腐食すると交換費用に数十万かかったとしてもおかしくはありません。
防水性能の高いモデルであっても長期間の使用でパッキンが劣化すると性能を保てなくなり、濡れた手でリューズやプッシュボタンの操作を行うだけで内部に湿気が侵入する場合もあります。ガラスの内側が少し曇っても目に見えて錆が発生しないこともありますが、一日も経たずにムーブメントが錆びだらけになったこともあります。もしガラスが曇る症状が見られましたら早急に内部の湿気を抜き処置しないと錆がどんどん進行して取り返しのつかない状況になりかねません。
お心当たりがある方は早急にご依頼ください。