ブライトリング クロノマット2000 オーバーホール、外装仕上、ストップクリック交換
腕時計修理内容
ブランド名 | ブライトリング |
モデル名 | クロノマット2000 |
型番 | ref.A13352 |
修理内容 | オーバーホール、外装仕上、ストップクリック交換 |
修理料金 | ¥53,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから6週間 |
症状タグ | 止まる部品劣化/破損 |
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修理後のお時計
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Cal.7750(ローターは外してあります)
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短い補助線が本来のライン。長い補助線が実際の部品が通っていたラインです。
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ストップクリックの囲った箇所が折れていました
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
ご購入いただいてから定期的に整備のご依頼を頂いているお客様より渋谷店にオーバーホールのご依頼を頂きました。
前回のメンテナンスから3年ほど経過していますが最近ローターでの巻き上げが不調気味とのことで事前にお電話をいただいていました。
一番多い事例の切替車の劣化が原因と予想していましたが、時計を操作しましても手巻きの重さは適度で切替車の劣化によるローターの連れ回りはなく別に原因があるようです。
お預かりした後に裏蓋を開けて確認したところ、不調の原因はすぐに判明しました。
画像3をご覧ください(画像が見づらかったため、補助の赤線を2本引きました)。
長い方の赤い補助線の近くに1本薄い線があるのがわかりますでしょうか。
これが切替車の逆転を止めるバネでストップクリックスプリングという部品です。
本来はこのバネが短い方の赤い補助線上にある位置と重ならなくてはいけません。
このバネの位置が大きくズレていたため、ローターが回転しても切り替え車の逆転を止めることができず巻き上げたそばからゼンマイをほどけてしまい力をためることができていませんでした。
ここで少し機能のご説明。
Cal.7750にはゼンマイを巻き上げた力がほどけないようにする機構が2つあります。
1つは角穴車にあるコハゼバネで、もう1つがこのストップクリックスプリングです。
ごく大まかに分けると手巻きに対してコハゼバネが機能して、自動巻きに対してはストップクリックスプリングが機能しています。
今回の不調の原因であるストップクリックスプリングは切替車の下歯車に当たる位置にあるのが正常です。
ローターからの回転を受けて切替車が巻き上げ方向へ左回転する時はラチェット機構のように歯車の上面を滑りゼンマイが巻き上げる方向に、反作用としてゼンマイの力がほどけようと切替車が右回転する時は歯車の谷の部分に入り込んで突っ張り棒のように回転を止めます。
ちなみにもう一つの機構であるコハゼバネは角穴車と噛み合っています。
コハゼバネと角穴車は、ストップクリックスプリングと切替車の組み合わせと比べると
1クリックあたりの巻き上げ量が大きく、ストップクリックスプリングと切替車の数十クリック分はあります。
これはストップクリックスプリングが一気に数十回分動かないとコハゼバネの反作用に負けて戻されてしまうということを意味します。
ですので不調のあったお時計はストップクリックスプリング側が機能しなくなっていることでコハゼバネ1クリック分を巻き上げるまで逆転防止機構が働かず、手巻きでは問題なくても自動巻き機構ではほとんどゼンマイをためられない状態でした。
原因はわかりましたが、ローターを外しただけでは位置修正で対応可能か部品交換かまではわかりませんでしたので、より詳しく判断するために自動巻き受けも外しました(画像4)。
赤丸で囲った部品がストップクリックスプリングで、ちょうど囲った位置で折れています。
ストップクリックスプリングが「くの字」に折れてしまい修正では一時的な処置となり元に戻るか、すぐに折れるのも時間の問題と判断し再利用ではなく交換としました。
その他部品は問題はなく再利用できましたので、オーバーホールと外装仕上、ストップクリックスプリングの交換にてお渡しいたしました。
A様 ご依頼ありがとうございました。