ブライトリング スーパーオーシャン44スペシャル オーバーホール、外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はブライトリング スーパーオーシャン44スペシャルです（画像1）。
こちらは渋谷本店にてお買取りさせていただき、販売前のメンテナンスのためにアフターサービス部へ回ってきた1本です。
スーパーオーシャン44スペシャルは、ブライトリングを代表するダイバーズウォッチのスーパーオーシャンに耐傷性に優れたブルーセラミックベゼルを備えたモデルです。プロフェッショナルダイバーウォッチとして1,000mもの防水性能を確保し、9時位置のケースサイドにはヘリウムガスエスケープバルブも装備しています。
すでに販売済みですが、外装仕上げを含めたメンテナンスを終えて記事最下部のリンクにて販売していましたので宜しければご覧ください。

2018年に正規店にて販売された時計ですので使用期間なりに外装の傷はありますが、セラミック製のベゼルは無傷で綺麗な状態を維持していました。
このようにセラミック素材は硬度が高く傷つきにくい性質があり、近年の加工技術の向上によって色やデザインの幅が増えたことで数年前より採用するメーカーも非常に多くなりました。弱点として大きな衝撃を受けると割れてしまうという一面もありますが、今まで割れてしまうような時計はめったに見られなかったことから、ベゼルのように傷が付きやすい部分との相性は良いのではないでしょうか。

表側のセラミックベゼルが綺麗なこととは反対に、腕側の裏蓋には傷が目立ちました｡
他の部分が綺麗でも裏蓋は傷だらけの時計は意外と多く、これはブレスレットやDバックルを使っている時計に多く見られる状態です。時計を外して無造作に置くとブレスレットやバックルの一部が裏蓋に当たり細かい打痕が複数付くことで起きてしまいます。
これを避けるには裏蓋とブレスレットの間にクッションを挟むなど金属同士が当たらないような配慮が必要です。
打痕は凹みですので完全に綺麗にしようとすると全体的に削り磨くしかなく、綺麗になっても裏蓋の刻印が薄くなってしまいシリアルなどの薄い刻印は消えてしまいかねません。そのため当店の外装仕上げでは刻印を残すことを優先し、ある程度の光沢が出るまでとしています（画像2）。

次に動作状態を見てみました。
針回しと日付けの早送りをチェックした後で手巻き操作を行うと、操作感が重く独特な感触と共に内部から異音がしました。
内部で起きていることは推測できたので、操作を続けて状態を悪化させる前に裏蓋を開けました。

搭載しているムーブメントはETA Cal.2824-2です（画像3）。
推測が間違っていないか確認のため少しだけ手巻きを試してみると、手巻き操作と同時にローターが高速で回転し始めました。
これは連れ回りと呼ばれる症状で、時には時計を持つ手が震えるほどローターが激しく回転することがあります。本来は手巻き操作の回転がローターへ伝わらない様に作られていますが、油の劣化や揮発などにより自動巻き機構に組み込まれた切替車が正常に機能しなくなると連れ回りが起こります。

自動巻き機構に細かな汚れが見られたことと製造からの年数を考慮すると、切替車の油が劣化したことが原因と思われます。汚れの程度から切り替え車の交換までは不要と考えましたが、念のために全体のチェックを済ませて仮組みの後に決めることとしました。
ムーブメントを分解してパーツを一通りチェックしてみても切替車の他に気になる箇所はなく、切替車も交換は不要と判断しました。洗浄を行った後で仮組みをすると連れ回りはなくなり精度も問題なさそうな見通しが立てられました。
改めて分解して本組み後の計測精度も良好で、ケーシング後のランニングテストにて最終点検を行いオーバーホールを完了としました。

こちらのブライトリング スーパーオーシャン44スペシャルをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金が28,000円～(パーツ代金別途)、外装仕上げを追加の場合はオーバーホールとのセット料金で11,000円です。
修理のご依頼は他店様でご購入されたお時計でも承っており、配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

目に見える不調があってもメンテナンスをせずにお使いになられる方もたまにお見かけします。
ですが不調を放置した状態でご使用になるとパーツにダメージが入りやすく、いざオーバーホールをご依頼いただいたときに大量のパーツ交換が必要なことも珍しくはありません。
長期間メンテナンスをされていないと心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。