ブルガリ ブルガリ・ブルガリ オーバーホール

担当者コメントと修理のポイント

今回の修理事例は少し変わり種のブルガリ・ブルガリ BB41C11BSD/MBです｡（画像1）
デザインを見てすぐにブルガリと認識できるほど長い歴史があり､ブランドのアイコン的モデルです｡

ブルガリ・ブルガリは古代ローマのコインから着想を得てデザインされたフォルムをそのままに時代のトレンドに合わせて様々なモデルが生まれています｡
今回はケースのステンレス素材にブラックDLC加工を施し、鈍い光を放つブロンズベゼルを採用しています｡
定番のブルガリ・ブルガリから外観の変化だけではなくムーブメントには自社製Cal.BVL191ソロテンポを搭載していて機械式時計としてもアップデートされたニューモデルです｡

こちらの時計は渋谷本店でお買い上げいただいたお客様から､湿気でガラスの内側が曇るとのことでお預かりしました｡
防水性能は5気圧の日常生活防水レベルですので､うっかり水気にさらしてしまい内部に湿気が混入してしまったようでした｡
残念ながらお客様のご使用による水入りは保証対象外の為､ご理解の上で有料にて処置となりました｡

お預かりした時点ではガラス内部の曇りはありませんでしたが
少し時計を温めると外気との温度差で薄っすら曇りも確認できました｡

裏蓋を開けてみるとケースの接触面に水気の痕跡がありました｡(画像2)
リューズ側から徐々にしみ込んでステンレスのDLC加工が腐食で荒れてしまったようです｡
ちなみにリューズ自体にも緑青が発生していました｡
恐らく腕に付けたまま水気の作業をしていたことと､汗の成分でケース素材に浸食が起こっていたようです｡
Cal.BVL191は一見すると綺麗ですが香箱表面に水の痕があることから思いのほか水分が侵入してしまっていたと思われます｡
新しい時計でしたが湿気入りを確認できた場合は使用年数に関係はなく､即オーバーホールをしないと状態が刻一刻と悪くなる一方です｡
若干の遅れと止まりやすい症状もご申告いただいていましたので取り急ぎ湿気を除去して状態悪化の進行を止め､オーバーホールに取り掛かりました｡

このCal.BVL191ですが汎用ムーブメントとは違うポイントとしては自動巻き機構に定番の切り替え車を使わず､
ローターからの動きを二つの歯車が回転方向によって切り替わって中間車に力を伝えるスイッチングロッカー方式を採用しています｡
これはジャガールクルトの自動巻きムーブメントでも見ることができる機構で信頼性が高く巻き上げ効率も良好です｡
薄く設計できるメリットがCal.BVL191に様々なモジュールを載せようと画策していることを想像させます｡

文字盤側のカレンダー機構や剣回しの設計は多少の違いはあってもETAにやや似ています｡(画像3)
自社製と言えども何でも変更する必要はなく､ETAはこなれた設計ですのでレイアウト的に信頼性が高いのでしょう｡

ムーブメントそのものはシースルーバックから見える印象そのままでしたが
この時計の面白さはムーブメントだけではなく文字盤にありました｡
ベゼルがブロンズでできているのは外観を見たままでわかるのですが､実は文字盤もブロンズでできていて拘りを感じました｡(画像4)
文字盤と一体となっているインデックスがベゼルと同じように変化していくことを期待して採用されたのかもしれません｡
ちなみに多くの時計の文字盤は真鍮製でその上に塗装をしています｡
モデルのコンセプトに合わせてブロンズを使うことを記載している記事は見つけられませんでしたので､分解して見て初めてわかる意外な発見に面白さを感じました｡

オーバーホールに関しましては通常の分解掃除で調子は戻り､ランニングテストでも良好な精度と持続時間を記録できました｡
時計を腕にしても内部が曇ることもなく除湿もしっかり完了しましたが､お客様へは日常生活防水であることを十分注意してお使いいただくようにアドバイスをしてお返しとなりました｡

こちらの BB41C11BSD/MBをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金で35,000円～(パーツ代金別途)。
DLC加工の為､外装仕上げはできませんのでご了承ください。

新しい時計であってもガラス内部に湿気が見られるような状態では水分の混入の可能性が高く､そのままお使いになると鉄や真鍮などででできているムーブメントはあっという間に錆びてしまいます｡
早めにお持ちになればパーツの再利用は可能ですので､水気の侵入の可能性がある時計をお持ちの方は一刻も早くご依頼ください｡
放置してしまうと最悪の場合､ムーブメントそのものが使用不可となり高額なメーカー修理一択となります｡
ケースの腐食度合いによっては時計ほぼ丸ごと交換となり現実的な修理費用ではなくなり諦める方も珍しくありません｡
くれぐれも水入りにはご注意ください｡

ブルガリ・ブルガリの商品ページリンクが下記にありますので､よろしければご覧ください。