タグ・ホイヤー オータヴィア GMT 2446C

腕時計修理内容

ブランド名 タグ・ホイヤー
モデル名 オータヴィア GMT 2446C
型番 2446C
修理内容
修理料金 ¥46000-(税込) ※事例公開時の価格となります。
修理時間 お見積り2週間、ご返答いただきましてから作業8週間

タグ・ホイヤー オータヴィア GMT 2446C

  • タグ・ホイヤー オータヴィア GMT 2446C 両方向回転ベゼル、1/5秒目盛り

    両方向回転ベゼル、1/5秒目盛り

  • タグ・ホイヤー オータヴィア GMT 2446C 傷もありますが薄っすらと刻印は残っています

    傷もありますが薄っすらと刻印は残っています

  • タグ・ホイヤー オータヴィア GMT 2446C HEUERマーク入りリューズ

    HEUERマーク入りリューズ

  • タグ・ホイヤー オータヴィア GMT 2446C ヴァルジュー724

    ヴァルジュー724

担当者コメントと修理のポイント

今回は少し珍しい時計をご紹介します。

今では「タグ・ホイヤー」という名前が当たり前すぎて一般的ですが、この時計のブランド名は「ホイヤー」だけです。
現代ではクオーツ時計も多くスマートウォッチも出しているスイス時計の中ではハイテク&スポーティーなイメージがありますが
「ホイヤー」としての歴史はとても古く、前身である『エドワード・ホイヤー・ウォッチ』は、1860年にエドワード・ホイヤー氏によって設立されました。
※参考までに創業者の銘を冠した商品もございます。
下記
①手巻きのレマニア製Cal.1883を搭載したムーンフェイズ付のクロノグラフ
https://housekihiroba.jp/shop/g/g590089001/

時代的に懐中時計しかなかった当時からストップウォッチ付きのクロノグラフを多く製造していて、
自動車、航空機、飛行船に搭載された時計(ダッシュボードタイマー)でも有名です。
そもそもAUTAVIA(オータヴィア)は「AUTOMOBILIE(自動車)」と「AVIATION(航空機)」の二つの単語を組み合わせたもので、そのダッシュボードタイマーを起源に持ちます。
登場の時から1/5秒単位まで精確に計測可能な目盛りを売りにしていたように、今回の腕時計オータヴィアにもそのDNAを受け継いでいることがわかります。

少し簡単にオータヴィアの歴史に触れますと
1933年にダッシュボードタイマーとして誕生。(その後1957年にオート・ラリー/モンテカルロにその座を明け渡します。)
腕時計の時代になると1962年にオーダヴィアを"両方向回転ベゼル付きクロノグラフ腕時計"として作り直します。
保守的なデザインが多かった当時としてはかなり独創的で、デザイン性の高さと視認性も高いダイアルを兼ね備えたことで
有名ドライバー達に愛用され、手巻きクロノグラフのオータヴィアとしては1969年まで製造されたそうです。
今回の手巻きクロノグラフのオータヴィアもまさに特徴そのもので、その期間に製造されたモデルです。
ちなみに翌年1963年には今でもタグ・ホイヤーを代表するモデル『カレラ』1969年に『モナコ』も誕生しました。

1969年以降は世界初の自動巻きクロノグラフ「キャリバー11」を搭載したモデルとして製造されましたが、当時はクオーツショックの時代。
その影響でスイス機械式時計は大打撃を受け、ホイヤーも同様に経営が傾き1985年「ホイヤー」としての歴史を終えるとともに製造も終了したようです。

その年にはTAGグループから資金援助を受けて「タグ・ホイヤー」と社名を変更。
手ごろなクオーツ時計やカラフルなファッション性も取り入れた製品を多数発表し高級時計だけではない手の届く質の高い時計として顧客のすそ野を広げ
またその成功でF1などモータスポーツへの関わりも強くなっていき今のタグ・ホイヤーのイメージが確立されたと思います。
その後はTAGグループから離れ、1999年にタグ・ホイヤーとしてLVMHグループの傘下となりました。
現在のラインナップでもオータヴィアがあるのはご存じのとおりです。

さて、歴史を軽く触れるつもりでしたが長くなってしまいました。今回のオータヴィアの説明に戻ります。
オータヴィアの特徴である両方向回転ベゼルは赤が退色して白くなっていますがGMT時計らしく元々は所謂ペプシカラーです。(画像1)

裏蓋はスナップバック式で多少の傷はありますが刻印も残っていて(画像2)
オリジナルリューズや退色したGMTベゼルも健在で全体としてオリジナル性を保ちヴィンテージ時計として価値の高い状態です。(画像3)
口述しますがスイス本国修理済み品でしたので、おそらく針や夜光塗料類は現代のものと思われます。

この時代の手巻きクロノグラフムーブメントとしては高性能、ロレックスやパテックフィリップなどでもベースムーブメントとして採用されるなど知名度も高いことで大変人気もあるヴァルジュー72にGMT機能を追加したCal.724を搭載。(画像4)
一般的なヴァルジュー72系とホイヤー搭載のものではクロノグラフ受けの形がややかわいいのが特徴です。
それ以外は大きく違いはない印象です。

今回、渋谷店でお買取りさせていただいたオータヴィアは製造こそ1960年代と古いのですが実は2010年にスイスのタグ・ホイヤーでオーバーホールされた素性の時計で、その後は他店で近年オーバーホール済みとのことでした。
点検したところ情報通り各部の油はしっかり残っておりましたので念のため部分的な洗浄と調整のみ行いました。
ランニングテストで良好な結果が出ましたので今回はメンテナンスにて整備は終了し、外観はヴィンテージの風合いを残す洗浄のみにとどめ
店頭にて販売していましたが、あっという間に売り切れてしまいました。

下記
②売り切れですが参考までに下のリンクよりご覧ください。
https://housekihiroba.jp/shop/g/g591490001/

下記
③現在販売中のホイヤーその他
https://housekihiroba.jp/shop/c/c01hous06/

購入者様はヴィンテージクロノグラフの代名詞で人気もあるヴァルジュー72系であることを非常に重要視されていたようで
裏蓋からムーブメントを見られませんでしたので購入前に裏蓋を開けて当店で撮影したものを確認して頂き満足して購入されました。
おそらく差し上げた画像を眺めて楽しんでいらっしゃることと思います。

こちらのオータヴィアをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金で46,000円~(パーツ代金別途)、
外装仕上げも追加の場合はオーバーホールとのセット料金で+11,000円となっております。

今回のような手巻き時計は巻き終わりまでできることでゼンマイの力が強く働き、油切れしていても動いてしまいます。
強いゼンマイのおかげでなかなか止まることはなく、定期的なオーバーホールをしないまま十数年使っている方も珍しくありません。
クロノグラフはパーツ点数が多いので、3針モデルよりもメンテナンスのサイクルには気を付けていただきたいのですが
特にヴィンテージクロノグラフ搭載のようなモデルはパーツ交換が発生すると入手がとても難しくなることもあります。
ヴィンテージ時計は貴重なパーツの交換が発生しないサイクルでメンテナンスすることが理想です。
長期間メンテナンスをされていないと心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。

タグ・ホイヤー エドワード・ホイヤー クロノグラフ 創立125周年記念モデル 188.505

②オータヴィア GMT 2446C

③タグ・ホイヤー その他 OTHER

 

 

  • 修理担当した時計
私が担当しました

宝石広場修理部部長。時計修理技師。時計修理業界歴約30年。

時計の状態確認・点検・判定・故障個所の修理などの技術的な対応から部署統括まで幅広く担当。

時計専門紙POWER Watchの『”腕時計”のかかりつけ医』コーナーにも度々登場。

お客様のお時計のお悩み誠心誠意対応させていただきます。

時計に関するお困りごとは宝石広場修理部までご相談くださいませ。