タグホイヤー フォーミュラ1キャリバー5 オーバーホール・外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はタグホイヤーのフォーミュラ1 キャリバー5です。
カジュアルなスタイルとF1という極限下の環境でも活躍できる機能性を兼ね備えています。200Mの防水性能も装備しており、ON/OFF問わず使い勝手の良いモデルです。
こちらと記事の最下部のリンクにて販売しておりましたので宜しければご覧ください。

以前ご購入いただいたものを買取りさせて頂き、アフターサービス部に販売前のメンテナンスを依頼された1本です。お買取り時に伺ったお話ではご購入依頼メンテナンスをせずにいたところ巻き上げてもすぐに止まる様になったということでした。5年間のご使用により外装には多くの小傷がついていましたが、どれも外装仕上げにて跡を残さず綺麗にできそうでした。 動作状態は伺ったお話の通り、テンプの振り角がいつ止まってもおかしくないほど低い状態でした。

搭載しているムーブメントはセリタ Cal.200-1をベースにしたCal.5です（画像2）。
まず始めに裏蓋を開けて見ると矢印で指した自動巻き機構を留める2本のネジの内1本が緩んで浮いていました。そのためローターがネジと当たって正常に回転ができなくなり自動巻き機構はほとんど機能していませんでした。またローターとネジが当たり続けたことで緩んだネジが暴れてしまいムーブメントに傷を付け汚れも発生していました。次に自動巻き機構を取り外してみるとネジが緩んだことにより自動巻き機構自体の固定も緩んでしまい歯車の噛み合いにも支障がでたため大量の汚れが発生していました。これらの汚れは隣接する輪列受けだけではなくムーブメント全体にまで散らばっていました（画像3）。これだけ汚れがあると油だまりや輪列軸に付着したものは油の劣化を大幅に進め、歯車に付着したものは噛み合いにも影響します。どちらも抵抗を大きくし止まりの原因にもなりますのでテンプの振り角が低い原因は汚れだと確信しました。針と文字盤を外してみると長期間メンテナンスを行っていなかったのか、4番車の軸からは緑色の粉が大量に発生いていました（画像4）。
まだ他にも不調の要素があるかもしれないため慎重に分解しながらパーツの状態確認を行いましたが、汚れに対して軸への磨耗はごく軽微でしたのでパーツの交換は不要と判断し、ネジが暴れたことによるムーブメントのダメージと長期間メンテナンスを行っていなかったことが汚れの発生源と判断しました。全体の洗浄を行った後に組み立て・注油にて調子よく動作するようになりました。ランニングテストでの実測値も良好な精度を記録できたため外装仕上げを行った後で店頭に並びました。

こちらのタグホイヤー カレラキャリバー5をお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金が26,000円、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で11,000円です。
修理のご依頼は他店にてご購入されたお時計でも承っております。配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

長期間メンテナンスをせずにいると目に見える症状がなくとも内部の油は徐々に劣化し汚れていきます。
劣化した油でご使用されることで内部パーツの摩耗が進み、摩耗カスが油の劣化を促進することでさらに内部パーツの摩耗が進んでしまいます。
こうした悪循環によって加速度的に状態が悪化してしまい、オーバーホールのご依頼いただいたときには大量のパーツ交換が必要なことも珍しくはありません。
お心当たりのある場合は不調の起こる前にぜひ当店にご依頼ください。