ブルガリ ブルガリ・ブルガリ オーバーホール・外装仕上
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私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回の修理事例はブルガリ・ブルガリ ref.BB33SGDです(画像1)。
ブルガリの数あるウォッチコレクションの中でも1番最初にデザインされ非常に長い歴史があります。ジュエリーコレクションにも同ラインナップがありますので時計にさほど興味がなくとも見覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらの時計は渋谷店でお買取をさせて頂いた後、販売前のメンテナンスのために修理部へ回ってきた1本です。
内部状態を見る前に状態確認のためリューズ操作を行いましたところ、手巻きの際に通常より重く感じられました。
手巻きが重いという症状1つとっても考えられる原因は複数あり、リューズパッキンのグリス(以下グリスと呼びます)が劣化しているか自動巻き機構に余計な力がかかっている場合が多いです。
どちらも独特の感触がありますが、グリスが劣化している場合は手巻きと反対方向にリューズを回転させたり日付や針回しなど他の操作をしても似た感触があるため比較的簡単に判断ができ、今回のブルガリ・ブルガリは多少グリス劣化も感じられましたが数回に1度くらいの割合で時計を持つ手が震えるほどの振動がありました。
外観と操作感から大まかな状態確認を行ったあと裏蓋を開けました。搭載されているムーブメントはCal.220(ETA Cal.2892A2)です(画像2)。
仕上げ以外はETAムーブメントそのものですので不具合の原因は特定しやすいです。
振動する原因についても想定していた通り、手巻きしたときに指先に伝わる違和感とともにローターがピクピクと動き、何度か試すと勢いよくローターが回転して時計が大きく振動し始めました。
自動巻きには手巻き操作の力をローターへ伝わらないようにする機構が付いています。
このムーブメントでは切替車がその役割を果たすのですが、非常に繊細なつくりのため油の劣化などで正常に機能しなくなったり、巻き上げの効率が低下することがあります。
このような状態で手巻きをすると違和感が出たり極端に巻き上げが重くなり、最終的にはローターに手巻きの力が伝わって回転してしまい、回転振動で時計を持つ手が震えるほどの症状が起きてしまいます。
自動巻き機構を外して受けとローターを取り外しました。輪列のつながりが見えるように斜めから撮影しています(画像3)。
画像左から3番目の二枚重ねの歯車が切替車です。
手巻きの力をローターへ伝えないようにする機能と、ローターがどちらに回転してもゼンマイが巻き上がる力に変換する機能を兼ね備えています。
画像を見てお気づきの方もいるかもしれませんが切替車・右の歯車・右下の歯車はそれぞれ噛み合い、普通の歯車であれば回転できません。ですが切替車の内部に仕組みがあることでローターがどちらに回転してもそれぞれの歯車に力が伝わりゼンマイを巻き上げるように設計されています。
切替車をアップで撮影しました(画像4)。
歯車に開いた穴から銀色のパーツが覗いているのが見えますでしょうか。切替車は複数のパーツを組み合わせて作られ、2枚の歯車・1つのカナ・軸・1枚の中間板・4つのストッパーで構成されています。構造を詳細に説明を言葉のみで説明することは難しく、また1つのコラムができるほど長文になってしまいますので割愛させて頂きまして、今は切替車は画像から見て左回転するときのみ内部が噛み合い、それ以外は空転するとご理解下さい。
この切替車は複雑なうえに摺動部分も多く、ETA社のテクニカルガイドではオーバーホール時に洗浄しないことと、洗浄が必要なら交換するよう指示しています。
切替車は複雑で繊細な部品ですので万全を期すならオーバーホールの度に交換という方法もありますが、実際の作業では洗浄と注油でも問題なく機能が復帰し次のオーバーホールまで問題なく使用できた実績も多くあります。この判断は整備店により様々な考え方はあるかと思いますが、当店としてはお客様の費用負担を軽減するためにも見積もり時に確認して再利用できるものは交換しない方針のもと洗浄と注油で対応しております。
話を修理中のお時計に戻します。
手巻きをしたときにローターが回転してしまうという症状は切替車を使用した自動巻き機構の全般によく起こり、連れ回りと呼んでいます。
先にお話ししたように通常なら切替車が空回りしてローターまで回転を伝えないようにしているのですが、油劣化や摩耗などによって切替車内のストッパーが動作不良を起こした結果、空回りできずにローターまで手巻きの力が伝わってしまう状態です。
目視でわかる劣化や摩耗はありませんでしたが、わずかな油の状態や粘度の変連れ回りは起きてしまいますので、まず全分解の前に自動巻き機構のみ分解・洗浄・注油を行い、切替車に適量を注油して組み立てたところ連れ回りを解消することができました。
切替車を再利用できる見通しが立てられましたので改めてムーブメント全体を分解、パーツを確認し洗浄と注油を行うことでオーバーホールを進めました。ケーシング後のランニングテストでも日差+3秒ほどと良好な精度を記録できましたので外装の仕上げを終えて店頭に並べたところ、あっという間に売り切れてしまいました。
在庫中のブルガリ・ブルガリ一覧と在庫切れのですがこの時計のリンクが下記にありますのでよろしければご覧ください。
こちらのブルガリ・ブルガリをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金で28,000円~(パーツ代金別途)。
外装仕上げも追加の場合はオーバーホールとのセット料金で+14,000円となっております。
ご使用中の精度が気にならないからとメンテナンスをせずにお使いになられる方もよくお見かけします。ご使用になっているなら当然のこと、お使いにならなくとも経年により内部状態は刻一刻と変化しています。目に見える不調が起きたときには大量のパーツ交換が必要な事も珍しくはありません。長期間メンテナンスをされていないと心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。