カルティエ カリブル ドゥ カルティエ オーバーホール、外装仕上
腕時計修理内容
ブランド名 | カルティエ |
モデル名 | カリブル ドゥ カルティエ |
型番 | ref.W7100016 |
修理内容 | オーバーホール、外装仕上 |
修理料金 | ¥42,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業4週間 |
症状タグ | 止まる油切れ衝撃 |
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修理後のお時計です
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Cal.1904-PSMC
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赤矢印で指した4番車の穴石が地板から外れていました
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自動巻き受けの裏には劣化したグリスが散らばっていました
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
動かなくなってしまったということでオーバーホールのために渋谷へご来店いただきました。
時計はカルティエのカリブル ドゥ カルティエです(画像1)。
シースルーバックから見えるムーブメントは自社製のCal.1904-PSMCです(画像2)。
お時計を拝見してみましたところ、秒針がふらふらと不自然な動きをしていました。
ケースにも打痕があり特にラグについた打痕はケースサイドのネジ穴を歪めてしまうほど大きな打痕でした。
そこで衝撃が原因だと推測はできましたが、症状はあまり見たことのない状態でしたので内部がどうなっているか確信がもてませんでした。
お見積りの際に針と文字盤を外してみてようやく状態がわかりました(画像3)。
秒針を取り付けている4番車の穴石が地板から外れてしまい軸を固定できなくなっていたのです。
穴石がズレて精度が悪くなったり破損して動かない時計は何度も見てきましたが、地板から完全に外れたこの状態は数えるほどしか見た覚えがありません。
穴石にヒビなどの破損はなく地板や4番車軸にも歪みや傷がなかったため穴石の取り付け直しとアガキ調整だけで問題なく再利用できそうでした。
もし再利用ができなかった場合、当店では入手のできないパーツでしたのでほっと胸をなでおろし改めて全体をチェックしていきました。
画像4をご覧ください。
これは自動巻き受けの裏側なのですが、赤丸で囲った場所にある黒い点々がわかりますでしょうか。
この黒い点々、見方によっては摩耗カスにも見えますが実際は劣化したグリスです。
Cal.1904-PSMCの自動巻き機構はIWCのペラトン方式やセイコーのマジックレバー方式と同様にローターの回転を二本の爪をもつレバーの反復動作に変換して巻き上げ車を一方向に回転させゼンマイを巻き上げる構造です。
二本の爪の先には歯車との接点にグリスをさすものが多く、摩擦軽減のために比較的多めのグリスを塗布している関係もあり経年とともに周辺に飛び散ることがあります。
こう書きますとマジックレバーの巻き上げ方式が良くないのではと思わせてしまうかもしれません。
実際にいろいろな自動巻き機構を見てきた感覚としましては、どのような巻き上げ方式でも自動巻き機構自体が重いローターの回転を受け止め常に大きな力を受けて動き続けますので、ムーブメントの他の場所と比べてどうしても汚れやすく方式で優劣をつけることはできません。
自動巻き機構は汚れていましたが洗浄で十分対処できまして、その他にパーツ交換もありませんでした。
4番車の穴石取り付けとアガキ調整は作業に含みますのでオーバーホールと外装仕上にてお渡しができました。
S様 ご依頼ありがとうございました。