カルティエ サントス100 オーバーホール、外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はカルティエ サントス100です（画像1）。
こちらは渋谷本店にてお買取りさせていただき、販売前のメンテナンスのためにアフターサービス部へ回ってきた1本です。
サントスの100周年を記念して販売された「サントス100」のLM、MMと種類がある内ユニセックスモデルのMMサイズです。LMと比べて小さいとはいえ存在感は抜群です。基本デザインはオリジナルを踏襲しつつ、登場から100年経っても古びれることのない完成度はさすがカルティエです。
すでに販売済みですが外装仕上げとストラップ交換を含めたメンテナンスを終えてこちらと記事下部にリンクがございます。宜しければご覧ください。

メーカーギャランティー記載の日付けから8年ほど経過し、外装はご使用年数なりに傷と打痕がつきムーブメントも全くの不動状態でした。
ただリューズの操作感が非常に渋いくらいで他に気になる点はなく、パッキンをグリスアップすれば解消できそうでした。外装の確認とリューズ操作からわかったことだけでは不動の原因は無数に考えられるため、裏蓋を開けてムーブメントを見てみました。

搭載しているムーブメントはETA Cal.2671ベースのCal.076です（画像2）。
Cal.2671は同じくETA社の定番Cal.2824に似たムーブメントで小型のため、主にレディースモデルに採用されることが多いです。全体的な形や形歯車の配置もよく似ていますが、ゼンマイが解けないよう防止するコハゼ/コハゼバネのように全く違うパーツもあります（画像3・4の赤丸で囲ったパーツです）。
Cal.2824はコハゼとコハゼバネの2つのパーツでゼンマイが解けない様に作られていますが、小型化するにあたり省スペース化するためCal.2671は1つのパーツとして作られています。今回のサントス100が手巻きをしても動かない原因はこのコハゼバネが外れていたことにありました。
画像では正常な位置に組み立ててありますが、コハゼバネはごくわずかなテンションで外れない様に組み立てられているため、何かの衝撃や経年によってバネが弱くなってきたときに外れてしまうことがあるのです。

他に不具合がないか分解と確認を行った後、仮組みの際にコハゼバネのテンションを調整して外れないようしました。
本組みにて改めて洗浄・注油・組立てを行うことで調子よく動作するようになり、ランニングテストでは実測をとりつつ精度の微調整を行いオーバーホールを完了としました。

こちらのカルティエ サントス100をお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金が28,000円～(パーツ代金別途)、オーバーホールと一緒に外装仕上げを追加の場合はセット料金で12,000円です。
修理のご依頼は他店様でご購入されたお時計でも承っております。また他店様でご購入されたお時計や配送もにて対応もご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

長期間メンテナンスをせず、動かなくなってからお持ちになられる方がいらっしゃいます。
ですが不調がなくとも経年により内部状態は刻一刻と変化しています。長期間メンテナンスをせずにご使用になるとパーツにダメージが入りやすく、いざ不動になってからオーバーホールをご依頼いただいたときに大量のパーツ交換が必要なことも珍しくはありません。
お心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。