ロレックス オイスターパーペチュアルGMTマスターⅡ オーバーホール・外装仕上げ・ローター真交換

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はロレックス オイスターパーペチュアルGMTマスターⅡです（画像1）。A番1999年製。ギャランティーには2000年8月に香港で販売された記載があり、20年以上経過したヴィンテージ品です。
こちらで販売しておりますので宜しければご覧ください。

こちらのGMTマスターⅡは渋谷店でお買取りさせていただき、販売前のメンテナンスをアフターサービス部に依頼された1本です。前回販売時はヴィンテージ品としては外装の状態が年数を感じさせない程度の良さだったのですが、お買取りさせていただいた現在の外装の状態は使用期間を考えると比較的多めに傷がついていました。目立つ打痕はなかったので外装仕上げにて綺麗にできると推測しましたが、頻繁にご使用なさっていたことが伺える状態でした。ところが動作の確認をしてみると操作感はなめらかで計測精度は安定しており、外装の状態に反して非常に良好でした。もちろん動作確認だけで完了させることはしませんので通常の商品と同様に内部の点検を行いました。

搭載しているムーブメントはCal.3185です（画像2）。一見すると目立つ汚れもなく動作確認の印象の通りかと思えたのですが、1箇所ずつ確認していくとローターに若干のガタが出ていました。そこでローター真の摩耗の程度を詳細に確認するため自動巻き機構を外してみました。ローター真の油は真っ黒に汚れ、摩耗粉と混ざり合い一部は塊になっています（画像3）。ローター真の油だまり周辺には油が飛び散っていたことから使用中の大きな外乱により油が流れ出てたのだと推測しました。油が流れ出たことでローター真の回転抵抗が大きくなり磨耗につながったのでしょう。周辺に散らばった摩耗粉はごく少量でしたが内部に入り込んでしまった摩耗粉のためオーバーホールは必要です（画像4）。
このGMTマスターⅡは前回のメンテナンスから数年しか経過していませんが、外乱により油が流れ出た結果としてオーバーホールが必要な状態になってしまいました。腕時計は常に外乱にさらされています。一口に外乱と言ってもその内容は多岐にわたります。時計をぶつける・落とすなどの直接的な衝撃から、ゴルフや野球などのスポーツ中の着用や激しい拍手等による腕を伝わった間接的な衝撃、走った際の激しい腕の振りや巻き上げようと時計を過剰に振ることによる遠心力など、一見すると日常での当たり前の動作によっても故障の原因になることがあります。このような話をすると神経質になりすぎて使うのが怖くなってしまいますが、同じ動作でも激しい動きには時計を故障させてしまうことがあることをご理解ください。
脱線してしまった話をGMTマスターⅡに戻します。全てのパーツを分解のうえ確認しましたがローター真以外に交換が必要なパーツはなく、洗浄・組立て・注油にて良好な精度を確認できました。幸い外装は小さな傷ばかりでしたの仕上げをすると20年以上経過したものとは思えない綺麗な状態になっています。

今回のGMTマスターⅡをお客様からお預かりした場合はオーバーホールが¥33,000、オーバーホールとセットで外装仕上げをした場合+¥14,000、ローター真の交換は¥18,500、合計¥65,500にてご依頼を承っております。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

耐久性が高いとされるロレックスでもやはり機械式時計は繊細です。スポーツ系だからといって手荒く扱えば簡単に故障の原因になってしまいます。また特に大きな衝撃が原因だった場合は文字盤の足折れなど、当店で入手できない状態が判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。本当に最悪の場合はメーカーでもパーツ入手ができず時計の寿命（修理不可）になることもあります。心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。