ロレックス オイスターパーペチュアル ミルガウス オーバーホール、外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はロレックス オイスターパーペチュアル ミルガウスです（画像1）。M番のシリアルとギャランティーに書かれた日付けとスタンプから2008年製の日本正規品です。2007年に発売されたRef.116400のうち、惜しくも2016年に生産終了したホワイトマンゴー文字盤です。
こちらと記事下部のリンクにて販売しておりますので、もし宜しければご覧ください。

このミルガウスは渋谷本店でお買取りさせて頂き、販売前のメンテナンスをアフターサービス部に依頼された1本です。外装は経過年数なりに傷がついていましたが、幸い大きな打痕はなく外装仕上げにて綺麗にできそうでした。またリューズ操作と計測器上の動作も良好だったため、外装仕上げはせずにオーバーホールのみを行っている可能性を考慮に入れつつ確認を進めました。

ミルガウスは通常のオイスターケースのモデルとは違い､裏蓋を開けてもムーブメントを見ることはできません。ケースの中にもう一つスクリュー式の内蓋があり、磁束密度を表す矢印とBが刻印されています（画像2）。ミルガウスの最大の特徴である耐磁性能はこの内蓋とムーブメントにより備えられています。内蓋の耐磁シールドとムーブメントに採用された各種素材が磁気の影響から守っています。他メーカーにも耐磁の内蓋を備えるモデルはありますが、前述の通りミルガウスの内蓋はスクリュー式の内蓋です。言わば裏蓋と内蓋により二重構造のスクリューバック構造ですので、非常に堅牢な構造となっています。
ムーブメントが磁気を帯びると大きな時間のズレが起きてしまい時には1日で数時間も進んでしまうこともあります。身の回りに磁気を発する製品が多くある現代において耐磁性能は1番身近な恩恵を受けられる機能の１つではないでしょうか。

内蓋を取り外すと耐磁性能に優れた専用ムーブメントCal.3131を見ることができます（画像3）。動作や計測値は良好だったためオーバーホールをされているかもしれないと考えていたのですが、実際に状態を見てみると想定が大きく外れていたことがわかりました。 画像3にも写っていますが、大量の汚れがムーブメントの全体に散らばっていました（画像4）。これだけ汚れていると多くの場合は遅れやテンプの振り角の減少など計測結果として出るのですが、今回のミルガウスの計測値は良好な精度が出ていました。 油はほぼ枯渇し残った油も劣化していたものの、ご使用頻度が少なかったのか軸の摩耗カスは見あたりませんでした。
分解してみると劣化した油は各所にこびりつき、長期間メンテナンスをされていなかったことが伺えました。頑固な汚れも時間をかけて綺麗に洗浄し、 組み立てと注油にて調子よく動作をするようになりました。最終点検のため実際に動作をさせて精度の微調整と持続時間の確認を行い、問題がないことを確認できたため外装仕上げの後で店頭へ並びました。

今回のパーペチュアルデイトをお客様からお預かりした場合はオーバーホールが¥27,000、オーバーホールとセットで外装仕上をした場合+¥11,000にてご依頼を承っております。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

耐久性が高いとされるロレックスでも経年による劣化や摩耗はあります。ゼンマイを巻けば使えるからとついつい長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、いよいよ動かなくなった時にメンテナンスを行おうとしたらオーバーホールだけでは完調にならず交換パーツが多く必要になったり、当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。本当に最悪の場合はメーカーでもパーツ入手ができず時計の寿命（修理不可）になることもあります。
長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。