ブレゲ マリーンラージデイト オーバーホール・外装仕上げ
腕時計修理内容
ブランド名 | ブレゲ |
モデル名 | マリーンラージデイト |
型番 | ref.5817BR/Z2/5V8 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上げ |
修理料金 | ¥70,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答を頂きましてから作業8週間 |
症状タグ | 定期メンテナンス油劣化 |
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今回ご紹介する修理事例はブレゲのスポーツラインである「マリーン」シリーズのラージデイトモデルです。
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搭載しているムーブメントはフレデリック・ピゲのCal.1150をベースにしたCal.517GGです。
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裏蓋側はローターを外すとベースムーブメントとほとんど変わりません。
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受けのエッジは美しい鏡面処理が施されています。
パテックフィリップ カラトラバ|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
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私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はブレゲのスポーツラインである「マリーン」シリーズのラージデイトモデルです(画像1)。ブレゲならではのエレガントを兼ね備えたモデルです。ブレゲ針やケースサイドのコインエッジなどブレゲらしさを備えつつも、ビッグデイトを採用し機能性も重視しています。裏蓋はシースルーになっていますので、美しく仕上げられたムーブメントを鑑賞することが可能です。
こちらのブレゲ マリーンラージデイトは2012年に渋谷本店でお買い上げいただいたお時計です。今回お買取りとなり、宝石広場 修理センター 渋谷が販売前のメンテナンスの依頼を受けました。当店では時計ごとに全ての対応履歴を残していますが、ご購入から今回のお買取りまでメンテナンスのご依頼をいただいていません。ご使用者様がメーカーや他店へ依頼していなければ10年以上に渡ってメンテナンスがされていない状況です。
外装とシースルーバックから見るムーブメントの状態は経過期間から推測されるより程度がよく、リューズ操作による手巻き・針回し・日付の早送りや計測器上の動作にも問題がありませんでした。そのためご使用頻度が極端に低く保管状況も良かったかメンテナンスを行っていると推測し、裏蓋を開けて本格的に内部の状態確認を進めることにしました。
搭載しているムーブメントはフレデリック・ピゲのCal.1150をベースにしたCal.517GGです(画像2)。Cal.1150は高級時計のベースムーブメントとして使われることも多い薄型3針のムーブメントです。大きな変更点はビックデイトの搭載とローターの形状ですのでローターを外すとムーブメントの見た目はほとんど同じです(画像3)。ですが裏蓋からムーブメントが見える仕様ということもあって、細部まで見てみるとCal.1150の綺麗なブリッジ類は同年代の同じムーブメントに比べてさらに丁寧に仕上げられています。特に受けのエッジは面取り部分が大きく鏡面に仕上されており華やかな印象です(画像4)。
見た目からはわかりませんがビックデイト以外にパワーリザーブが100時間から65時間に変更されています。Cal.1150は香箱が2つ組込まれていて長時間動くことができるのですが、メーカーのコンセプトの違いによりCal.517GGは短く設定されています。香箱を2つ組込むことで向上したゼンマイの性能をCal.1150はパワーリザーブを長くするために使い、Cal.517GGはトルクを安定させるために使ったのでしょう。
メーカーのコンセプトによる仕様の違いはCal.1150とCal.517GGに限らず他のメーカーのムーブメントでもみられます。香箱を2つ搭載したムーブメントで長時間パワーリザーブを優先していない仕様は他にもありますし、ゼニスが精度を求めてエルプリメロを36000振動にしたことに対して、エルプリメロをベースにしたロレックスのCal.4030は耐久性を優先して振動数を28800振動にしています。
話を今回のブレゲ マリーンラージデイトに戻します。受けを外して油の状態を確認していくとシースルーバック越しではわからなかった油の劣化がありました。油の劣化と言っても部分的な作業で問題なく動作しそうでしたが、これまでメンテナンスされた形跡もありませんでした。現時点で良好な動作をしていても、これまでの整備履歴を踏まえ今後のご購入された方が安心してご使用できるようにオーバーホールすることとしました。
念のためパーツの状態を確認しつつ分解を進めていきましたが油の経年劣化による汚れの付着の他に問題はなく洗浄と注油にて良好な精度を記録できましたので、外装仕上げの後で店頭へ並ぶ予定です。
こちらのブレゲ マリーンラージデイトをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金¥55,000、オーバーホールとセットで外装仕上げをご希望の場合はセット料金で ¥15,000です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
ご使用にならなくとも経年による劣化や摩耗はあります。ゼンマイを巻けば使えるからとついつい長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、いよいよ動かなくなった時にメンテナンスを行おうとしたら当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。本当に最悪の場合はメーカーでもパーツ入手ができず時計の寿命(修理不可)になることもあります。
長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。