フランク ミュラー マスターバンカー オーバーホール・外装仕上げ

腕時計修理内容

ブランド名 フランク ミュラー
モデル名 マスターバンカー
型番 ref.5850MB
修理内容 オーバーホール・外装仕上げ
修理料金 ¥77,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。
修理時間 お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業8週間
症状タグ

フランク ミュラー マスターバンカー オーバーホール・外装仕上げ

  • フランク ミュラー マスターバンカー 今回ご紹介する修理事例はフランク ミュラートノウカーベックス マスターバンカーのオーバーホールです。

    今回ご紹介する修理事例はフランク ミュラートノウカーベックス マスターバンカーのオーバーホールです。

  • フランク ミュラー マスターバンカー 搭載しているムーブメントはETA Cal.2892をベースにしたCal.2800にモジュールを追加したCal.2800MBです。

    搭載しているムーブメントはETA Cal.2892をベースにしたCal.2800にモジュールを追加したCal.2800MBです。

  • フランク ミュラー マスターバンカー モジュールとベースムーブメントの境目を赤矢印、文字盤を留めるネジを青矢印で指しました。

    モジュールとベースムーブメントの境目を赤矢印、文字盤を留めるネジを青矢印で指しました。

  • フランク ミュラー マスターバンカー 非常に多くの歯車が組み込まれたサブ時間表示機構。リューズ1段引き時に操作すると赤矢印の方向に歯車が動きます。

    非常に多くの歯車が組み込まれたサブ時間表示機構。リューズ1段引き時に操作すると赤矢印の方向に歯車が動きます。

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はフランク ミュラー トノウカーベックス マスターバンカーのオーバーホールです(画像1)。
世界のマーケットを舞台に活躍する銀行家の為に3カ国の時刻が一瞬で見分けられる独自の機構をもち、発売開始から年月が経過した今でもフランクを代表するモデルとして根強い人気があります。

こちらは渋谷本店でお買取りし、販売前のメンテナンスを宝石広場 時計修理センター渋谷が依頼を受けた一本です。 付属品がないためギャランティーに記載された販売日付けを見ることはできませんが、当店が過去に対応した複数の同モデルの記録から推測するとおよそ20年ほど前のものです。
ご使用傷や小さな打痕があるものの外装仕上げの形跡や裏蓋ネジの作業跡もありましたので、製造から今までメンテナンスをせずに使い続けられたわけではないようです。ただし私が受け取った時点でゼンマイを巻き上げてもテンプの振り角は大きく低下していましたので、以前のメンテナンスから期間は経過しているようでした。詳細を確認するため裏蓋を開けてみると摩耗粉はありませんでしたが、内部の油は減少していたためオーバーホールを行うことにしました。

搭載しているムーブメントはETA Cal.2892をベースにしたCal.2800にモジュールを追加したCal.2800MBです(画像2)。リファレンスナンバーにも入っているMBはマスターバンカーの略称ですね。変更点は文字盤側のモジュール追加なので裏蓋側からはCal.2800との違いはありません。
ムーブメントを横から見るとモジュールとベースムーブメントの境目や固定ネジを見ることができます(画像3)。赤矢印でモジュールとベースムーブメントの境目、青矢印でモジュールと文字盤を留めるネジを指しました。文字盤とモジュールは文字盤に取付けられた二本のピン(慣例として”足”と呼んでいます)とネジによって固定しています。足をモジュールへ差し込み、足に対して垂直に開けられた穴へネジ(画像3の青矢印で指したネジです)を締め込むことでネジの先端を足に押し付けて抜け止めとしています。このネジを垂直から締めて固定する方法は多くの文字盤に用いられ、ベースムーブメントにモジュールを固定する場合にも用いられます。
針と文字盤を取り外すと多くの歯車が組み込まれた第二・第三時間帯の表示機構を見ることができます(画像4)。時計の中心から左側の5つの歯車が動力から表示歯車に伝える機構、右側の6つの歯車と2つのカナが時間を合わせるための機構です。ところでマスターバンカーでよくあるお問い合わせの一つとして”合わせても第二・第三時間帯が遅れてしまう”というご指摘があります。一口に”遅れ”といっても様々ですが、マスターバンカーの場合は第二・第三時間帯の時刻を合わせてから針が動き出すまでにタイムラグがあることから”遅れる”とご指摘なされていることが多いです。このタイムラグは動力・計時機構から表示機構までに仲介する歯車が多いため起きています。噛み合う歯車にはスムーズに動作するために歯先同士に一定のアソビがあり一ヶ所ごとは微小ですのでほとんど問題になりませんが、マスターバンカーは仲介する歯車が多いためアソビの総量も累積されて大きくなり、時刻を合わせてから針が動き出すまでに大きなタイムラグが起きてしまいます。遅れる症状が気になる場合は、第二・第三時間帯の針が動き出すまでにかかるタイムラグの分を想定して若干進めて時間を合わせることをお試しください。
さて、せっかくなので同じくらいお客様からのご指摘の多い”操作しているのに第二・第三時間帯の針が動かず時刻合わせができない”という症状を紹介します。こちらも理由は構造にありますので、まずはリューズ一段引きの操作時に歯車の動きとどのように歯車が回転するかについて簡単にご説明します。はじめにマスターバンカーの特殊な歯車の動きについて。画像4で赤矢印を書き込んだ二つの歯車は一般的な歯車と違って軸に固定されておらず矢印方向に動くように作られています。次に歯車の回転の順番について。リューズ一段引きで操作を行ったとき、回転する力は日付けのとなりにある二つの銀色のカナのうち左側のカナから回転が伝わっていきます。すると画像4で矢印を書き込んだ歯車に力が伝わったとき、リューズ操作によって伝わった力は歯車を回転させると同時に矢印方向にも動かし、第二または第三時間帯表示の歯車へと力を伝えます。
ここでご指摘の”操作しているのに第二・第三時間帯の針が動かず時刻合わせができない”という理由に話を戻しますと、多くの場合リューズ操作時に矢印を書き込んだ歯車が矢印方向に動かないときに症状がおきてしまいます。この二つの歯車はごく少量の油で潤滑しているのですが、油によって貼りついてしまい移動せずに空転することがあります。平らな歯車を平面上を動かすという性質上、完全に症状を無くすことはできません。この症状は針合わせの際にリューズを勢いよく回すことや歯車が矢印方向に移動しやすい様に12時側か6時側に時計を傾けながらリューズを操作することで貼りつきを解消することができます。

話を今回のマスターバンカーに戻します。先に書いた通り輪列の油は切れていましたが、全てのパーツを分解したうえで確認を行ってもパーツ交換や調整の必要はありませんでした。洗浄・組立て・注油にて調子よく動作するようにできましたので外装の仕上げを行った後で店頭に並ぶ予定です。
今回のこちらのフランク ミュラー マスターバンカーをお客様からお預かりした場合はオーバーホールが¥65,000、オーバーホールとセットで外装仕上をした場合+¥12,000にてご依頼を承っております。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください

ご使用中の精度が気にならないからとメンテナンスをせずにお使いになられる方もよくお見かけします。ですが遅れや止まりの症状がないからといって内部の状態が良好とは限りません。ご使用になっているなら当然のこと、お使いにならなくとも経年により刻一刻と内部状態は変化していきます。腕時計は小さなパーツの集合体ですので軽作業で動かすだけでは根本的な解決にはならないことも多く、目に見える不調が起きたときには大量のパーツ交換が必要なことも珍しくはありません。
長期間オーバーホールをされていないと心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。

フランク ミュラー (中古) 「宝石広場」 (housekihiroba.jp)

  • 修理担当した時計
私が担当しました

宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。

時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。

1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。

是非お気軽にお問合せください。