ジャガー・ルクルト マスタージオグラフィーク オーバーホール・外装仕上げ・裏蓋ネジ抜き、ネジ作製

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はジャガー・ルクルトを代表するワールドタイムモデルのマスタージオグラフィークのオーバーホールです（画像1）。10時位置のリューズを回転させることで6時位置にある世界24ヶ国の主要都市を切り替え、独立したインダイアルにて瞬時に時刻を確認できるモデルです。煩わしい操作も必要なく操作性と視認性の両方に長けており、人気があるのも頷けます。
すでに修理が完了し販売中ですので宜しければこちらかページ下部のリンクからご覧ください。

こちらのジャガー・ルクルト マスタージオグラフィークは渋谷本店でお買取りさせて頂き、販売前のメンテナンスを宝石広場 時計修理センター渋谷が依頼を受けた一本です。ギャランティーなど付属品がありませんので正確な販売日はわかりませんが、外装は経年による使用傷や劣化がありました。

外装は経過年数なりに傷が付いていました。また全体的に汚れが付着し、特に裏蓋を留める四点のネジは溝が完全に埋没していました。肌の触れる裏側は汗や皮脂汚れだけではなく日焼け止めやハンドクリーム等の化粧品も溜まり易いです。汚れが溜まり空気と遮断されるとステンレスでも錆びてしまうことがありますので注意が必要です。
今回のジャガー・ルクルト マスタージオグラフィークは表面の汚れを除去すると一本のネジから茶色い錆が発生していました（画像2）。このようなネジを回して折れるかどうかは錆びの程度によりますが外観から判別は難しいです。錆が多量に発生していてもネジ内部には浸食していないこともあれば、逆に見えるところは錆がなくても内部が浸食されていることもあるため、実際にネジを回してみるまでわかりません。お客様からお預かりしたお時計であれば、お見積り作業の際に折れる可能性とその場合の追加費用および作業期間をご案内してから取り掛かります。もし修理のキャンセルをご希望された場合はネジを折れたままご返却することもお伝えしています。
錆に油を浸透させて慎重に回しましたが残念ながら折れてしまいました。折れてしまうとケース側に残ったネジの除去と新しいネジを用意しなければならず、前述の通りこれがお客様の時計の場合はオーバーホール以外に追加費用が発生してしまいます。このような状況にならないように定期的な洗浄と日々の拭き取りをお勧めしています。

こちらは当店で販売した同モデルの情報から2003年以前に販売されたことまでは推測できましたが、初期のマスターコントロールモデルは裏蓋の内側に刻まれた1000時間テストのサインを見ることでより詳細に調べることができます（画像3）。枠の左側は技術者のサイン、右側には日付けがスイスの日・月・年の順で表示されます。6.9.02は2002年9月2日に実施されたということです。スイス時計で高精度の証明であるC.O.S.C(クロノメーター規格)のテストではムーブメント単体で15日間の計測を実施されることに対して、このマスターコントロールはケーシングした状態で約42日間に渡り実施されるため、より実用的な検査と調整を行うテストです。搭載してるCal.929/3に､モデル名にもあるマスターコントロールと1000時間実施した証明がローターにも誇らしげに刻印されています（画像4）。現代でも販売前にここまでのテストを行うメーカーは珍しいことから当時は大変話題になったシリーズです。
内部の油は枯渇していたものの錆びは内部に浸食はしていませんでした。パーツの摩耗もなかったため分解・洗浄・組立て・注油にて調子よく動作させることができましたので外装の仕上げとストラップの交換を行い、こちらにて販売中です。

ジャガー・ルクルト マスタージオグラフィークをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金が50,000円、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で12,000円、ネジ抜きと別作成で¥16,000です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

日常的に拭き取りを行うだけでも外装を良い状態に保つことができます。汚れた状態でご使用を続けるとステンレスでも簡単に腐食してしまいますし、内部にまで湿気が入るほどに浸食するとパーツ交換が発生して修理費用が高額になってしまいます。また費用の面だけでなく日常的な拭き取りでお手入れをすることで時計の状態チェックにもなり、致命的な不調が起こる前に気がつくことがあります。
お心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。