オメガ デ・ヴィル オーバーホール・外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はクラシカルなスタイルのオメガ デ・ヴィルのオーバーホール・外装仕上げです（画像1）。金無垢ならではの存在感は手に取っていただけるとすぐにお分かりになると思います。非常にシックかつオメガの歴史を感じさせる仕上がりで、手巻式というのがまた通好みです。

こちらは渋谷店でお買取りさせて頂き、宝石広場 修理センター渋谷が販売前のメンテナンスの依頼を受けた1本です。
外装には多くの傷があり経年により変色していました（画像2）。変色して紫がかった箇所と黄色い箇所があり色が違いますね。金は化学変化に強い素材ですが腕時計に使われる場合は純金ではなくK18（または18金）ですので変色してしまいます。この”K”という記号や”○○金”という呼び方は24分率で金の純度を表していて純金をK24・24金と呼びます。耳慣れない方もいらっしゃると思いますのでパーセンテージで表すとK24・24金は100％､K18・18金は75％です。腕時計では慣習的にK18・18金も金無垢と呼びますのでゴールドケースでも25%は金ではないため化学変化により変色します。
金以外の25％に含まれる素材と変色についてもう少し細かく書くと､混ぜ物（割がねと言います）は一般的に銀・パラジウム・ニッケル・亜鉛などが使われていて、ゴールドケースに含まれるそれらの素材が酸化することで変色が起こります。金属の酸化は汗や皮脂の付着はもちろん、経年によっても起きます。K24をケース素材に使うと酸化による変色はなくても、柔らく傷もつきやすいため腕時計の実使用に適していません。割りがねを加えることで酸化による変色のデメリットはありますが、K18にすることで強度を上げて時計のケース素材として使い勝手を良くしています。
日常的なメンテナンスとしてご使用後に柔らかい布での拭取りを行うことで、酸化を遅らせ細部を見ることで小さな不調にも気が付きやすくなりますのでお勧めです。

話を今回のオメガ デ・ヴィルに戻します。リューズ操作の際に多少の重さはありましたがリューズパッキンのグリスアップでスムーズに動きそうでした。搭載しているムーブメントはETA Cal.7001がベースのCal.652です（画像3）。Cal.7001との大きな変更点はエタクロンの装着と緩急針や受けの形状変更です。油が枯れていたためオーバーホールを行うことに決め、分解して1点づつパーツを確認しましたが摩耗はなく全て再利用できる状態でした。洗浄・組立て・注油を行うと調子よく動作しましたので外装仕上げの後で店頭へ並ぶ予定です。

こちらのオメガ デ・ヴィルをお客様からお預かりした場合はオーバーホール基本料金¥28,000、外装仕上げ ¥12,000です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

外装が変色すると傷以上にヤレて見えますし、やっかいなことに変色は使わなくても経年でも起こります。一度変色した外装を元に戻す方法は薬剤を使う方法もありますが一般的ではなく、外装仕上げをにて物理的に磨き落す方法が一般的です。また変色するほど月日が経過しているのなら内部の油は劣化・減少している可能性が高く、オーバーホールが必要な場合が多いです。油が劣化・枯渇した状態で動かすと歯車や軸に大きな負担かかかります。そのまま動かし続けてしまうと摩耗粉が全体に散ることで一気に摩耗が進み、止まった時には大量のパーツ交換が必要になることもあります。
なにかおかしいなと思いあたる場合はぜひ当店にご依頼ください。