オメガ シーマスターアクアテラ オーバーホール・外装仕上げ・ゼンマイ交換
腕時計修理内容
ブランド名 | オメガ |
モデル名 | シーマスターアクアテラ |
型番 | ref.2504.30.00 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上げ・ゼンマイ交換 |
修理料金 | ¥53,500-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業8週間 |
症状タグ | 定期メンテナンス油切れ |
今回ご紹介する修理時レはオメガ シーマスターアクアテラ のオーバーホール・外装仕上げです。
搭載しているムーブメントはETA Cal.2892A2をベースとしてコーアクシャル脱進機を搭載したCal.2500Cです。
テンプの裏側です。
アンクル(左下)とガンギ車(中央)です。
2504.30.00 シーマスター アクアテラ 中古 | オメガ
|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
オメガ シーマスター (中古)
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私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はオメガ シーマスターアクアテラ のオーバーホール・外装仕上げです(画像1)。
オメガが誇る革新的機構のコーアクシャル脱進機を搭載したベーシックなモデルのシーマスターはシンプルが故に装いや場所を選ばず使え、機械式時計の初心者から上級者まで幅広い方からの支持を得ています。
すでに販売済ですが、こちらで販売しておりましたので、よろしければご覧ください。
こちらは渋谷本店でお買取りの後、販売前のメンテナンスを修理センター渋谷が依頼された一本です。付属品のギャランティーには2005.7の日付けと正規店のスタンプがあります。製造から長期間が経過していますので、何もメンテナンスされていなければ内部の油が劣化しオーバーホールが必要です。ただ当店に今回のシーマスターの作業履歴がなくともメーカーや他店でメンテナンスを行っているかもしれません。軽メンテナンスで充分な動作が確認できれば販売価格に反映できますので、作業跡の有無に重点を置いて状態確認を進めることにしました。
外装は仕上げの形跡がなく特にブレスレットは駒の間に皮脂などが詰まり真黒に汚れて動きも渋い状態でした。リューズを操作するとパッキンのグリスが切れていたため操作するたびにゴムが擦れる音が鳴り、裏蓋側からムーブメントを見ると油も切れていました。これらの状態から長期間メンテナンスが行われていないと推測しオーバーホールを行うことに決めました。
搭載しているムーブメントはETA Cal.2892A2をベースとしてコーアクシャル脱進機を搭載したCal.2500Cです(画像2)。
コーアクシャル脱進機とは脱進機機構の一種です。腕時計に採用されている脱進機は一部の特殊モデルを除いてレバー脱進機(スイスレバー脱進機)が採用されていますので、既存のスイスレバー脱進機と比べて大幅に形状の違うコーアクシャル脱進機が発表された際はとても驚いたことを覚えています。
レバー脱進機の誕生は18世紀に遡れるほど古く、近年は材料研究や加工技術の進歩によりガンギ車やアンクルにシリコン素材を採用したり肉抜き加工が施されるようになりましたが、基本的な脱進機構は変わっていません。
コーアクシャル脱進機のメリットは簡単に説明するとスイスレバー脱進機と比べて摩擦が小さく、メンテナンス寿命を延ばせることです。せっかくなので特殊な形状のテンプの裏側(画像3)とアンクルとガンギ車(画像4)を撮影しました。スイスレバー脱進機と比べると画像3の振り石と画像4のアンクルのルビーの数がそれぞれ1つ多くあります。今回のCal.2500Cの末尾”C”はバージョンを表していて、ごく初期のコーアクシャルムーブメントにはCal.2500AやCal.2500Bもありました。初期は様々な不具合を見かけましたが、何度かのマイナーチェンジを経て今はどの個体を見ても安定した動作をしています。
ムーブメントの確認を進めると、油切れのまま使い続けたことでパーツはわずかに摩耗はありましたが再利用可能な状態でした。経年劣化により力が弱まっていたゼンマイは交換しました。汚れた油や摩耗粉の洗浄を行い、組立てて新しい油を注すと良好な精度を記録できましたので外装仕上げの後に店頭へ並びました。
こちらのオメガ シーマスターアクアテラをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金¥33,000、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で外装仕上げ¥14,000、ゼンマイが¥6,500です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
コーアクシャル脱進機を搭載したモデルは、メリットの一つとしてレバー式の不調の原因となりやすい脱進機構の摩擦を減らしたことでメンテナンスサイクルを長くすることが可能になったと多く語られます。ただ、機械式時計は脱進機の他にも回転体である歯車など潤滑油が必要な箇所は多くあります。そこはレバー式と同様に経年劣化と油も減少しますので定期的なメンテナスが不要になるわけではありません。
ゼンマイを巻けば使えるからとついつい長期間メンテナンスをせずに使い続けたり保管しているだけだから大丈夫なはずだとお話しになる方もいらっしゃいますが、長く使うためにも定期的なメンテナンスは必要です。
いよいよ動かなくなった時にメンテナンスを行おうとしたらオーバーホールだけでは完調にならず交換パーツが多く必要になったり、コーアクシャル脱進機などメーカー独自の設計は交換が必要でもパーツの入手は難しく、高額なメーカー修理が必須になることもあります。
長期間メンテナンスをしていない心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。