オメガ シーマスター300 コーアクシャル オーバーホール・外装仕上げ
腕時計修理内容
ブランド名 | オメガ |
モデル名 | シーマスター300 コーアクシャル |
型番 | ref.212.30.41.20.01.003 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上げ |
修理料金 | ¥52,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業6週間 |
症状タグ | 定期メンテナンス油切れ油劣化 |
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今回ご紹介する修理事例はオメガ シーマスター300 コーアクシャルのオーバーホールと外装仕上げです。
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搭載しているムーブメントはETA Cal.2892A2をベースとしてコーアクシャル脱進機を搭載したCal.2500です。
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歯車を取付ける軸から黒い汚れが付着していました。
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分解と点検を進めていくと赤矢印で指した銀色の板バネに汚れが付着していました。
中古 630964001 212.30.41.20.01.003 シーマスター300 コーアクシャル|オメガ|「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
オメガ シーマスター (中古)| 「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はオメガ シーマスター300 コーアクシャルのオーバーホールと外装仕上げです(画像1)。ダイバーモデルのシーマスター プロフェッショナルに、同社の独自機構であるコーアクシャル脱進機を搭載したモデルです。10時位置のヘリウムガスエスケープバルブは飽和潜水時のヘリウムガスの膨張によるケース破損を防いでくれます。
既に販売済みですが、こちらで販売しておりましたので、よろしければご覧ください。
こちらは渋谷本店でお買取りさせて頂き、時計修理センター渋谷が販売前のメンテナンス依頼を受けた一本です。ギャランティーには2017年8月の日付記載があり、経過年数だけで判断すればオーバーホールが必要な状況でした。今回の個体は当店にメンテナンスの履歴がなかったため、状態確認と並行してメーカーや他店の痕跡の有無にも注意して確認を進めました。
外装はご使用期間から予想した通り多くの傷があり、グリス切れの影響で手巻き操作が重いことに加えて違和感もありました。リューズのグリス切れは使用や保管状況により早いうちに起きることもありますので、操作が重いだけではオーバーホールが必要と断定はできません。ですが手巻きの違和感はパーツの摩耗や油の劣化が原因で起きることが多く、ケース内部に摩耗粉が散っていたり油が劣化するほど前回のメンテナンスから時間が経過している可能性があります。まだ断定はできませんが、ほぼオーバーホールは必要と推測し点検を進めました。
搭載しているムーブメントはETA Cal.2892A2をベースとしてコーアクシャル脱進機を搭載したCal.2500です(画像2)。
ところで腕時計に搭載されている脱進機は一部の特殊モデルを除いてレバー脱進機(スイスレバー脱進機)が採用されています。レバー脱進機の誕生は18世紀に遡れるほど古いのですが、形状を進化させ現在でもほとんどの腕時計がスイスレバー脱進機を採用しています。近年は材料研究や加工技術の進歩により、ガンギ車やアンクルにシリコン素材を採用したり高振動化などのため肉抜き加工が施されるようになりましたが、基本的な脱進機構は変わっていません。
既存のスイスレバー脱進機と比べて大幅に形状の違うコーアクシャル脱進機が発表された際はとても驚いたことを覚えています。
コーアクシャル脱進機のメリットは簡単に説明するとスイスレバー脱進機と比べて摩擦が小さく、メンテナンス寿命を延ばせることです。初期は様々な不具合を見かけましたが、何度かのマイナーチェンジを経て今はどの個体を見ても安定した動作をしています。
今回のオメガ シーマスター300 コーアクシャルに話を戻します。ローターからの動きを伝える歯車の軸から黒い汚れが発生し(画像3・赤矢印)手巻きを行うとローターが連れ回りしないまでも少し動いていました。また分解しても摩耗がなかったためパーツの交換は不要と判断しました。念のため本格的にオーバーホールを行う前に自動巻き機構の洗浄と再注油を行うと、症状がなくなり手巻き操作もスムーズにできるようになりました。
さらに分解と点検を進めていくと真鍮の歯車に接している銀色の板バネにも黒い汚れが付着していました(画像4・赤矢印)。この板バネはゼンマイがほどけないように逆転防止のラチェット機構になっています。巻上げの際に歯車と摩擦しながら動作するため、長期間メンテナンスが行われていない時計で摩耗粉の付着が見られます。今回は摩耗も軽微なので再利用することに決めて点検を進めました。全て分解と点検を終えても交換が必要なパーツはなかったので洗浄・組立て・注油を行うと良好な精度を記録できましたので外装仕上げの後店頭に並びました。
こちらのシーマスター300 コーアクシャルをお客様からお預かりした場合はオーバーホール¥33,000~(パーツ代金別途)。外装仕上げもご希望の場合はオーバーホールとのセット料金+¥20,000にてご案内しております。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
操作に違和感があったとき、すべての場合でどこかが決定的に壊れているわけではありません。そのまま使えば壊れてしまうかもしれませんが、気が付いた時点でメンテナンスをされれば今回のシーマスター300のように摩耗が軽微でパーツの交換が不要になることもあります。コーアクシャル脱進機などメーカー独自の設計は交換が必要でもパーツの入手は難しく、高額なメーカー修理が必須になることもあります。
お見積りは無料で行っておりますのでお心当たりのある方はお気軽にお声がけください。