オメガ デ・ヴィル アワービジョン オーバーホール・外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はオメガ デ・ヴィル アワービジョンです(画像1）。シースルーバックからだけでなく、ケース側面からもサファイアガラスを通して内部を見ることができる【デ・ヴィル アワービジョン】。搭載されるCal.8500は7年もの歳月をかけて開発されオメガ自慢の高精度と高耐久性を誇るコーアクシャル・エスケープメントと2つの香箱を備え60時間ものパワーリザーブを確保したこだわりのムーブメント。オンオフ問わず使える万能な1本です。
今でこそ様々なメーカーが特別モデルとしてサファイアガラスをケースに使ったモデルをラインナップしていますが、発売された当時は風防以外にサファイアガラスを使ったモデルに見覚えが無く、とても印象的でした。

こちらのデ・ヴィル アワービジョンは渋谷本店でお買取りさせて頂いた後、販売前のメンテナンスを宝石広場 時計修理センター 渋谷が依頼を受けた一本です。ギャランティーカードには2015年の記載があり、経過年数を考えると何か不具合が出ていてもおかしくない年月が経過していました。当店に履歴はありませんがどこかでメンテナンスを行っているかもしれません。
外装のステンレス部分に多数の使用傷がつきケースは全体的に汚れが付着していましたが、シースルーバック越しに見えるムーブメントは十分な油がありリューズの操作に違和感もなく計測器上の動作も良好でした。ギャランティーの日付から8年が経過し、外装には年数なりの使用跡が見られながらも内部の油の状態と計測精度が良好なことを考え､内部のみメンテナンスが行われていると推測しました。ただしメンテナンスが行われていたとしても、その作業時期と質はわかりません。ガラス越しのムーブメントは光の反射によって詳細には見づらいため、裏蓋を開けて状態の確認を進めることとしました。

搭載しているムーブメントは前述の通りCal.8500です（画像2）。ガラス越しでは確信を持てませんでしたが、裏蓋を開けて見やすくなるとネジ頭の微妙な作業跡やネジと受けの境目についた小さな金色の点がはっきりと見えました（画像3）。もう少しわかり易くするためネジを緩めてみました（画像4）。矢印の指したところに金色の線が入っているのがわかりますでしょうか。Cal.8500のいくつかのネジ頭は上面が平らで、ネジ部に向かうほど細くなるテーパの皿ネジになっています。そのためドライバーの先端を加工しないと、締め込みの最後や緩める初期にドライバーの先端が受けのメッキ部分を傷つけて真鍮が見えてしまいます。このような作業傷を避けるにはドライバーの先端をネジのテーパに合わせて加工をするだけで良いのですが、残念なことに今まで私が手掛けてきた時計の中にはその手間を惜しむことでムーブメントに傷をつけてしまっているものが沢山ありました。
話を今回のデ・ヴィル アワービジョンに戻します。自動巻きを取り外して輪列や他の個所を見ると油はあっても汚れていましたので､最終判断としては販売前にオーバーホールを行うことにしました。前回の他店でのメンテナンスが何年前か判断がつかないことで安全策を取りましたが、汚れは些細でしたので軽作業で良かったのかもしれません。さらに分解していくと全体的に多少の汚れていましたが幸いパーツに磨耗は無く、洗浄・注油・組立てにて調子よく動作するようになりました。
外装の仕上げの後で店頭へ並ぶ予定です。

こちらのオメガ デ・ヴィル アワービジョンをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金が38,000円、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で12,000円です。
修理のご依頼は他店にてご購入されたお時計でも承っております。配送にて対応をご希望の場合は配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。から宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

ご使用中の精度が気にならないからとメンテナンスをせずにお使いになられる方もよくお見かけします。また、動けばいいとオーバーホールではなく部分的な注油などの軽作業をご希望される方もいらっしゃいます。腕時計は小さなパーツの集合体ですので、軽作業で動かすだけでは根本的な解決にはならないことも多く、目に見える不調が起きたときには大量のパーツ交換が必要なことも珍しくはありません。ご使用になっているなら当然のこと、お使いにならなくとも経年により内部状態は刻一刻と変化しています。
長期間オーバーホールをされていないと心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。