ロレックス オイスターパーペチュアル デイデイト オーバーホール・外装仕上げ・ゼンマイ・チューブ交換
腕時計修理内容
ブランド名 | ロレックス |
モデル名 | オイスターパーペチュアル デイデイト |
型番 | ref.18038 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上げ・ゼンマイ・チューブ交換 |
修理料金 | ¥67,500-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り2週間、ご返答いただきましてから作業1.5ヶ月 |
症状タグ | 止まる部品劣化/破損 |
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今回ご紹介する修理事例はロレックス オイスターパーペチュアル デイデイトのオーバーホール・外装仕上げです。
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リューズの操作を行おうとしたところチューブごと抜けてしまいました
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リューズとチューブが固着していました。
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搭載しているムーブメントはCal.3035です。
18038 デイデイト 中古 | ロレックス|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
ロレックス デイデイト (中古)
| ロレックス|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はロレックス オイスターパーペチュアル デイデイトのオーバーホール・外装仕上げです(画像1)。
デイデイトはイエローゴールド・ホワイトゴールド・エバーローズゴールド・プラチナの4つの素材バリエーションのみで構成され、ステンレス素材モデルが存在しないプレステージラインです。その名の通りフルスペルの曜日表示が12時位置に搭載されています。1956年に初代デイデイトref.6511が誕生して以来いくつもの後継モデルが発表されました。
今回ご紹介するref.18038は初代のref.6511と比べて風防がサファイヤクリスタルへ進化しカマボコケースと呼ばれる厚みのあるケース形状が特徴です。
既に販売済みですが、こちらで販売しておりましたので、よろしければご覧ください。
こちらは新橋店でお買取りさせて頂き、販売前のメンテナンスを修理センター渋谷が依頼された一本です。付属品は何もありませんが、ケース6時サイドに打刻されたシリアルナンバーから1984年頃の製造と判断しました。公式発表ではありませんがロレックスはシリアルがランダムになる前の先頭がGの2010年まで製造年を推測できます。当店はこちらのページで資料をご紹介しておりますので、よろしければご覧ください。
外観を見てまず始めに気になったのはケースの変色です(画像1.2.3.4)。変色の原因は腕時計に使われる金が純金ではないことにあります。どういうことかといいますと、一般に腕時計に使われる金はK24ではなくK18が使われます。K24やK18とは金の純度を24分率で表したものでK24は100%の純金、K18は75%が純金ということです。こちらのデイデイトのケース素材はK18のイエローゴールド。75%が金で25%は別の素材です。25%には亜鉛・銀・銅などが含まれ、その比率はメーカーにより様々です。
さて問題の変色はK18に含まれている銅の酸化などが原因で発生します。ではなぜ変色しない安定したK24でケースを作らないかと言うと純金は柔らかすぎて腕時計の過酷な使用環境では簡単に傷がついたり凹みができるためです。
K18の変色は経年でも徐々に発生しますし、皮脂や外部からの要因でより顕著に変色が進むことも珍しくはありません。今回のデイデイトのようにケースのリューズ側半分に強く変色が発生しているのはなかなかありません。
変色の対策としてはご使用後に付着した皮脂などを拭き取ることです。手軽ですし拭き取りの際に時計全体を見ることで不調を見つけるきっかけにもなりますのでお勧めです。
状態確認を進めてリューズのネジ込み解除を行おうとしたところ、ケースとチューブのネジ込み部分から抜けてしまいました(画像2.3)。本来チューブはケース側にロック剤を塗布しネジ込まれて固定されていますが、ネジ込み式リューズとチューブがグリス切れや経年で錆びて固着しケース側が劣化でチューブの固定力が落ちていることで今回のような状況になることがあります。
今回はリューズとの分解はできましたがチューブは腐食しており、経過期間を考慮すると再利用はできませんでした。もしチューブがケースから抜けた場合でもチューブの状態が良ければ再利用は可能です。
次にリューズ操作による状態確認を進めたところ、手巻きが非常に軽くゼンマイが切れていると推測しました。
搭載しているムーブメントはおよそ1977~1988年ごろに採用されていたCal.3035です(画像4)。
ロレックスの他のムーブメントに比べて短命に終わりましたが、一つ前のCal.1570と比べて19800振動から28800振動へ変更され精度が向上し、カレンダーの早送りができるようになって操作も容易になっています。
今回のデイデイトはケースの変色から想像する状態の悪さを良い意味で裏切り、古いロレックスにありがちなローターのガタも少なくパーツの磨耗粉もありませんでした。油が切れた状態でご使用になるとローターやパーツの摩耗は一気に進みますので、始めにゼンマイが切れてから長い間放置されていたのでしょう。
ゼンマイが切れたときの衝撃でパーツの破損や調整のズレがおきることがありますので慎重に分解しつつ確認を進めましたが、幸いゼンマイとチューブ以外に交換が必要なパーツもなく輪列アガキの微調整のみでオーバーホールを終えることができました。
こちらのロレックス デイデイトをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金¥35,000、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で外装仕上げ¥17,000、ゼンマイが¥6,500、チューブが¥9,000です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
耐久性が高いとされるロレックスでも、動力ゼンマイはバネ性を得るため金属を熱処理して製造する関係上、どうしても動作後に不良(ゼンマイ切れ)が出る時期にばらつきがあります。時計が新しくともゼンマイがいつ切れるかわからないことから保証内容にゼンマイ切れが対象外になるのはそのためです。またゼンマイが切れた衝撃は大きく、歯車の破損や遊びのズレがおきることも多くあります。また不動になった後に保管のみだったとしても経年による油の減少はありますので、ゼンマイだけを交換すれば良いというわけではなくメンテナンスは必要です。新しい油で潤滑することでパーツの交換を必要最小限にとどめるとともに、軸の摩耗を放置した結果として摩耗することの多い受けなど当店で入手困難なパーツ交換を避けやすくなります。
その他に日常的な拭き取りを行うことも大切です。変色を防ぎ、日常的なお手入れをすることで時計の状態チェックにもなり、致命的な不調が起こる前に気がつくことがあります。
お心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。