ロレックス デイデイト オーバーホール、外装仕上
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
18239|ロレックス デイデイトのオーバーホール・修理|腕時計のオーバーホール・修理なら【宝石広場 時計修理センター 渋谷】
担当者コメントと修理のポイント
手巻きしても動かないということで、オーバーホールをご希望されて渋谷店にご来店いただきました。
お時計はロレックスのパーペチュアルデイデイトでしてムーブメントはCal.3155を搭載しています(画像1、2)。
ロレックスのキャリバーナンバーは4ケタの数字で表記されているのですが、これには1度覚えてしまえば分かりやすい法則があります。
代表的なものを3つ例に挙げてご説明します。
・Cal.3130…3針
・Cal.3135…3針・日付付き
・Cal.3155…3針・日付と曜日付き(今回お預かりの時計です)
それぞれの後継機として2008年頃からテンプの耐震装置をキフショックからパラフレックスへ変更し、それぞれCal.3130はCal.3131、Cal.3135はCal.3136、Cal.3155はCal.3156になりました。
ここまで例に挙げたムーブメントのはじめの2ケタの数字が全て同じことに気が付きましたでしょうか。これは”31”がサイズと世代を表していて後の2ケタの数字が機能を表しているからで、はじめの2ケタの数字からロレックス31系ムーブメントなどと呼ばれています。
このロレックス31系ムーブメントは2015年に初出のCal.3235を筆頭にして後継機のロレックス32系ムーブメントへ世代交代してきています。
ところでお話は変わりますがお預かりしましたお時計の裏蓋内側には多くのサインが刻まれていました(画像3)。
このサインは決して悪戯などではなく、今までこのお時計にかかわった作業者達が入れたサインでしてオーバーホールなどをした後にメンテナンス内容の管理や次の作業者のために、いつ・誰が作業をしたのか記録を残しているのです。
各メーカーや工房ごとにさまざまな方法でサインを残していまして、画像の様に刻むものやサインペンでの書き込み、シールなどがあります。書かれている内容はメーカーや工房ごとに違いますが、多くのサインには日付と作業者か工房名などが入れられています。
小さな裏蓋のスペースにすべての作業内容を書ききることはできないため、ほとんどのサインは略記されています。
当然この略し方もメーカーと工房ごとに違いますが、正確に知らなくても日付くらいは読みとることができます。そこでサインの有無や書かれた作業日をチェックすることで、お時計がどのくらいの頻度でメンテンナンスされているかなどを知ることができます。
もちろんサインを入れないメーカーや工房もあると思いますが、初めて当店に修理をお持ち込みになられた時計などの場合は内部の状態を想像するうえで非常に参考になりますし、自分のサインも人に見らますので誰に見られても恥ずかしくない作業をしようと気を引き締めて一つ一つの作業に励んでいます。
そんなサインですが、どうやらロレックスは2020年ごろから入れなくなったようです。
確かに以前とは違いますので、わざわざ時計にサインを入れなくても何かしらのツール上にメンテンナンス履歴を残せば十分なのでしょう。
ロレックス以外でもサインを入れずにPC上に作業履歴を残す工房はありますし、それが原因で問題が起きたとも聞きません。ただ、その状況は今まである種の自負をもってサインをしていた私には少しだけ寂しく感じます。
お時計は小まめにメンテンナンスされていただけあって非常に状態もよく、パーツ交換もありませんでした。
はじめからご依頼のオーバーホールと、お見積りの際にパーツ交換がないならと追加でご依頼いただいた外装仕上にてお渡しができました。
N様 ご依頼ありがとうございました。