ロレックス オイスターパーペチュアル デイトジャスト オーバーホール・外装仕上げパッキン・ガラスパッキン・ローター真交換

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はロレックス オイスターパーペチュアル デイトジャストのオーバーホールと外装仕上げです（画像1）。
すでに修理を終えてこちらにて販売しておりますので、よろしければご覧ください。

こちらは2002年に当店にてご購入いただいた後、渋谷本店がお買取りさせていただいた一本で、修理センター渋谷が販売前のメンテナンスの依頼を受けました。シリアルはK番ですので2001年製。ギャランティーには2002年5月に香港で販売された記載があります。十数年前にメンテナンスのご依頼をいただいた際にオーバーホールを行っていますが、その後メンテナンスの履歴はありません。ところが経過年数に比べ外装は傷や汚れが少なかったため、ご使用機会が少なかったかメーカーや他店へ依頼をされていたと想定し状態確認を進めました。

ブレスレットは正面から見ると汚れが無い様に見えましたが、横から見ると多くの汚れが入り込んでいました（画像2）。ブレスレットは腕と接しているため汗やハンドクリームなどが隙間に入り、さらにホコリやゴミを呼び込みます。今回のように駒の中央が空洞になっているブレスレットは特に汚れが溜まりやすいため、定期的な洗浄をしていない方は長年のご使用により反対側が見えなくなることほど汚れを溜め込んでいることも珍しくありません。汚れが付着すると錆に強いステンレスでも容易に錆が発生しますし金無垢素材など貴金属であれば変色の原因になりますので、ご使用後は清潔な布で優しく拭き取るなどの日常的なお手入れを行い、隙間に入り込んだ汚れは半年や1年ごとなど定期的に専門店での洗浄をお勧めしています。外観の確認を終えた後にリューズ操作を確認しましたが特に違和感はなかったので内部の確認を進めることとしました。

搭載しているムーブメントはCal.3135です（画像3）。ローター真の摩耗が進んでおり、ローターとムーブメントが擦れた形跡が確認できました。ローター真が摩耗していなくても強い外乱を受けた際は一時的にムーブメントと接触することはありますので、擦れた形跡があるからと言っても全て交換ということではありません。交換するかしないかの判断はとても難しく経験による見極めが必要です。またコスト面を考えるとパーツは年々高騰しており特にロレックスは一点で1～2万円かかるものも少なくありません。修理価格が販売価格に影響することと、将来的な故障リスクの両面を考える必要もあります。
その他の箇所を見ていくと全体的に注油量が多く､切替車の表面に本来はあるはずのない油がありました（画像4）。一部の油は大量にあっても黒ずんでいましたので、他店で劣化した油を洗浄することなく追加で注油したのでしょう。計測器上の精度は良好でしたし軽整備で問題がないと判断したのかもしれませんが、汚れをそのままに油を足していることや、切替車の表面に油があることから作業の雑さが見て取れます。
油の劣化やローターの摩耗もあり作業に信用が置けませんでしたので今回はオーバーホールを行うこととしました。状態の確認を進めていくと、油の劣化と多めの油量というチグハグな状態は全てのパーツを分解し終えるまで続きました。交換が必要だったローター真を新しいものへ打ち換えてから洗浄・組立て・注油を行うと良好な精度を記録できました。
今は外装仕上げも終えてこちらこちらにて販売しておりますので、よろしければご覧ください。

今回のロレックス オイスターパーペチュアル デイトジャストをお客様からお預かりした場合、オーバーホール基本料金が ¥28,000、外装仕上げが¥14,000、交換パーツが ¥32,000 の合計 ¥74,000にてご依頼を承っております。

耐久性が高いとされるロレックスでも経年による劣化や摩耗はあります。ただし磨耗したからと言って即交換が必要なわけではありませんので、パーツの確認は耐久性を含めた見極めが必要です。お客様からお見積りでご案内したパーツ交換を省けないかご相談される場合がありますが、正常に動作するために必要と判断しているパーツ交換を省いてしまうと内部保証をお付けできません。定期整備で整備に出す直前まで使っていた時計ともなると、高額なパーツ代を省いて修理費用を安く抑えたいお気持ちは理解できます｡ですが整備後に安心してご使用できる状態でのお渡しが当店のポリシーですので全てお断りしております。
動くからと言って長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、内部では油が劣化しパーツが摩耗しつつ動いていることがあります。
いざ動かなくなってからメンテナンスを行おうとしたら交換パーツが必要になったり、内部についても当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。
長期間メンテナンスをしていないなど心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。