ロレックス オイスター パーペチュアルデイトジャスト オーバーホール、仕上
腕時計修理内容
ブランド名 | ロレックス |
モデル名 | オイスター パーペチュアルデイトジャスト |
型番 | ref.16013 |
修理内容 | オーバーホール、仕上 |
修理料金 | ¥36,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り2週間、ご返答いただきましてから作業4週間 |
症状タグ | 操作しづらい/出来ない油切れ |
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修理後のデイトジャスト
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Cal.3035
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本来の手巻きしたときの歯車位置
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お預かりしたデイトジャストの歯車位置
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
手巻きが出来ないということで渋谷店にオーバーホールのご依頼をいただきました。
お時計はロレックスのオイスター パーペチュアルデイトジャストです(画像1)。
型番はref.16013で搭載されるムーブメントはCal.3035です(画像2)。
前世代のref.1601などに搭載されていたCal.1565やCal.1575と比べ日付けの早送りができるようになり、振動数が19,800振動から28,800振動になったことで格段に使い勝手がよくなっています。
"手巻きが出来ない"といった症状は機械式時計における定番の不具合ですが、その原因については多種多様なバリエーションがあります。
まずは動力源のゼンマイが切れていれば手巻きの感触がなく、リューズは回せるけど動かないから"手巻きが出来ない"とお持ちになる場合もありますし、手巻きに関連したパーツが破損や外れなどで感触がない場合も結果としては同じ表現になります。
また、お客様の中には手巻きの感触はしっかりあるのに時計が動かないから"手巻きが出来ていない"と表現される方も多くいらっしゃいます。
一般的な手巻き時計であれば巻き終わりまでリューズを巻いても時計が動き出さなければそれ以上リューズは回せないので本当に物理的な"手巻きが出来ない"ことをお話しされる場合もあります。
そのような場合は手巻き操作とは全く別の箇所に時計が動かない原因があることも多いのです。
このように"手巻きが出来ない"と言う症状を一つ取っても、ご申告される方によって複数の原因や状況が考えられますので、時計を見ずにお電話やメールだけで本当の原因を特定することはとても難しいのです。
お預かりしたデイトジャストは手巻きをしてもゼンマイを巻き上げる感触がありませんでした。
ある程度の原因の候補を想定しつつ内部を確認しましたところ、手巻きをしてもゼンマイにつながる角穴車が回転していないことがわかりました。
この時点で手巻き操作の力がゼンマイまで届かず、どこかで力が途切れていることがわかりました。
手巻き操作の力がどこまで繋がっているかリューズから順番に見るために自動巻き機構を取り外しみましたところ、すぐに原因が判明しました(画像3,4)。
画像ではわかりやすくするため原因の部分の受けを外し、繋がっている歯車を赤線でつなげてあります。
画像3が手巻きするときの正常な歯車の位置で最終的に角穴車まで線が伸びています。
画像4がお預かりした手巻きが出来ない状況時の歯車の位置です。三つ目の歯車が角穴車と噛み合っておらず離れています。
画像4で赤線終端の三つ目の歯車は遊星車と呼ばれております。
これは手巻きの時には角穴車とつながり力を伝える位置に、自動巻きの時には角穴車から離れるよう位置に来るよう設計されています。
もし遊星車がない場合は自動巻き機構によって巻き上げられると、ゼンマイがある角穴車より先までローターの回転力が伝わり余計な負荷がかかります。
そして何よりその負荷が不要な場所にまでかかることで力が逃げず、最悪の場合は歯車を破損してしまう可能性もあります。
そのために必要な時にだけ角穴車と噛み合い、力を逃がしたいときには離れる動きをする遊星車が重要な役割を果たしているのです。
お預かりしたデイトジャストは状況によって移動する遊星車が同じ位置で固着し画像4の状態から角穴車の位置まで動くことができなったために手巻きをしてもその場で空回りしてしまう状態でした。
錆や破損などはなく油の劣化が原因だったため全体的な洗浄と組み立て、適切な注油にて本来の動作をするようになり、
パーツ交換の必要はなくご依頼のオーバーホールと外装仕上にてお渡しができました。
T様 ご依頼ありがとうございました。