オメガ スピードマスターレーシング オーバーホール・外装仕上げ
腕時計修理内容
ブランド名 | オメガ |
モデル名 | スピードマスターレーシング |
型番 | ref.3510-61 |
修理内容 | オーバーホール・外装仕上げ |
修理料金 | ¥58,500-(税込) ※事例公開時の価格となります。 |
修理時間 | お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業7週間 |
症状タグ | 曇る油切れ |
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今回ご紹介する修理事例はオメガ スピードマスター レーシング シューマッハモデルです。
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外装のプッシュボタンとケースの隙間やベゼルとケースの間など窪みには汚れが溜まっていました。
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搭載しているムーブメントはCal.3220です。
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画像はネジを緩めて浮かせています。ネジは台座とベースを押さえるようにしてモジュールに固定されています。
中古 622039001 3510-61 スピードマスター レーシング シューマッハ限定|オメガ|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
オメガ スピードマスター (中古)|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はオメガ スピードマスター レーシング シューマッハモデルです(画像1)。
赤・青・黄色と同時にラインナップされているうち、やはり所属していたフェラーリを思わせるレッドが一番人気です。既に売れてしまいましたが、こちらとページ下部のリンクで販売していましたので宜しければご覧ください。
渋谷店でお買取りさせていただいた後、宝石広場 時計修理センター渋谷が販売前のメンテナンスの依頼を受けた一本です。外装はプッシュボタンの根元やケースとベゼルの隙間などに汚れが溜まっていて(画像2)、リセットボタンは汚れだけではなく固着して押せない状態でした。また、風防の縁には錆のような茶色い汚れもありましたので内部への湿気入りも考えられる状態でした。
シューマッハモデルの風防はプラスチックのテンションでケースに固定されており、経過年数や紫外線の影響により劣化すると固定力が落ち、防水性が維持できなくなってしまいます。元々3気圧防水と日常生活防水程度のため、これまで何度も風防側から湿気が侵入した形跡のある個体を見てきました。風防から湿気が入ってもその影響はすぐに文字盤に表れないことも多く、見た目は変わらなくとも裏蓋を開けて見るとムーブメントの錆びやすい鉄のパーツが湿気によって浸食され、大量のパーツ交換が必要になることも多くあります。高額な修理代になるだけでなく、当店では入手できないパーツ交換が必要になるとメーカー修理が必須となり更に高額です。
軽微でも風防の曇りが確認できましたら早めにご相談下さい。
搭載しているムーブメントはCal.3220です(画像3)。いわゆる二階建てクロノグラフと呼ばれるムーブメントですので裏蓋側から見るとベースとなったETA Cal.2892とほとんど同じですが、クロノグラフのベースとして使うためにいくつかの変更が加えられています。大きな変更点はベースムーブメントの動力をクロノグラフモジュールに伝えるため変更された4番車です。3針の腕時計であれば4番車の先端には秒針が取付けられていますが、クロノグラフの場合は針ではなくモジュールへ力を伝える歯車(カナ)が圧入されています。
Cal.2892は元々クロノグラフのベースムーブメントとして使うことを見据えて設計されたという話を聞いたことがありますが、数点の変更で転用できていることからもうなずける話です。
ベースとモジュールの固定方法もシンプルです。モジュールの位置決めピンをベースに差し込んで、3本のネジで固定しています。ネジは台座を間に挟んでモジュールに締め込まれ、ネジ頭でベースと台座を押さえるようにして固定されています(画像4)。画像は位置関係がわかりやすいようにネジを緩めて浮かせています。それだけだと当たる箇所と当たらない箇所ができてしまい斜め方向に力がかかるので、画像4の赤矢印で指した台座を一緒に取付けることで解消しています。
ムーブメントの状態確認は一旦中断し、作業方針を決めるため固着したリセットボタンの状態を詳しく見ることにしました。リセットボタンが交換となるとメーカーへ依頼することになり、オーバーホールも必要という見積りがでることがあります。まずはリセットボタンが再使用可能なのかが重要ですので見極めなければなりません。
幸いリセットボタンの固着は汚れによるところが大きく、次にパッキンの劣化が原因でした。簡易清掃後、ケースの内側から慎重にプッシュボタン押し出すと固着を剥がすことができました。この時点では動きが渋くボタンを押しても戻ってきませんでしたが、グリスアップするとスムーズに動くようになりましたのでオーバーホールの際に本格的な洗浄を行えば問題なく再使用できると判断しました。
ムーブメントを分解していくとゼンマイは劣化していましたが心配していた錆はありませんでした。パーツの交換・洗浄・組立て・注油にて良好な精度を記録し、リセットボタンもスムーズに動くようになりましたのでこちらで販売しておりました。
こちらのオメガ スピードマスターをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金¥38,000、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で仕上げ¥14,000、ゼンマイ交換¥6,500です。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
埃や汚れをそのままにすると湿気を吸着し劣化や錆の原因となります。腐食したケースは防水性が一気に低下し、ムーブメントにまで湿気が侵入するとパーツ交換が発生して修理費用が高額になってしまいます。そのため日常的な拭き取りを行うことが大切で、外装は良い状態を保つことができると腐食が起きにくくなります。また費用の面だけでなく日常的な拭き取りでお手入れをすることで時計の状態チェックにもなり、致命的な不調が起こる前に気がつくことがあります。お心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。