ロレックス オイスターパーペチュアル サブマリーナーデイト オーバーホール・外装仕上げ

担当者コメントと修理のポイント

今回ご紹介する修理事例はロレックス オイスターパーペチュアル サブマリーナーデイトです（画像1）。ダイバーズウォッチの代名詞的な存在と言っても良いサブマリーナー。その中でも20年以上にもわたり生産され続けたRef.16610です。シリアルはW番で1994～95年製のヴィンテージ品。

新宿店でお買取りいたしました後、販売前のメンテナンスをアスターサービス部に依頼された1本です。
外装は傷・打痕も多数ありブレスの隙間には汚れが詰まっていました。
ベゼルの回転は重くクリック感がない状態。ねばつく様な感触と前述のブレスの状態から汚れの詰まりだと推測しましたが、ベゼル内部のパーツが破損している可能性もありベゼルの構造はシンプルで取り外しも簡単ですので、まずは確認することにしました。
ベゼルを取り外してみると内側には予想通り大量の汚れが付着していました（画像2・3）。画像2の赤い矢印で指したバーツはベゼルバネ（以下バネと呼びます）です。このバネは単純な形をしていますが果たす役割は重要です。ベゼルを左回転の際には内側に刻まれた山と谷のギザギザ部分にバネがはまることでクリック感を生み出し、右回転は谷にとどまったバネがつっかえ棒になり回転を止めています。このベゼルとケースの隙間には汚れが詰まりやすく、長年の汚れでベゼルの回転を重くします。回転の重さに気が付いても隙間に入り込んでいる汚れはベゼルを取り外さない限り完全な除去はできません。重さの原因が汚れだけであれば洗浄して除去すれば復活できますが、バネ破損の場合は交換が必要です。今回はバネに折れはなく弾性も保たれていましたので再利用できましたが、大量の汚れにより外気と接触がなくなるとステンレス製のバネも錆で劣化してしまうこともあります。そうなると破損していなくとも交換が必要になってしまうこともありますので、専門店にて定期的な洗浄をお勧めします。


次に裏蓋を開けて内部を見てみました。搭載しているムーブメントはCal.3135です（画像4）。外装の汚れを見て内装の状態も悪いのだろうと想定していましたが、幸いにも一目でわかるほどの摩耗や汚れはありませんでした。慎重に分解を進めても摩耗しているパーツはなく、すべてのパーツを再利用できました。
たまに内装と外装の印象が大きく異なっていることがありますが、今回もそうした事例の1つになりました。運動を行う際にご使用され、皮脂汚れが入り込みやすい環境だったのでしょうか。
今回のサブマリーナーデイトは分解したパーツを洗浄・注油・組立て後、実測のランニングテストにて調子よく動作することが確認できましたので、後日店頭へ並ぶ予定です

今回のサブマリーナーデイトをお客様からお預かりした場合はオーバーホールが¥28,000、オーバーホールとセットで外装仕上をした場合+¥14,000にてご依頼を承っております。
配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。

耐久性が高いとされるロレックスのステンレス素材でも経年による劣化や摩耗はあり、特に汚れが詰まりやすい箇所は空気との接触がなくなった結果、腐食して壊れてしまうこともあります。
ベゼルはあまり使わないし時計としては動いているからと長期間メンテナンスをせずに使い続ける方も多くいらっしゃいますが、いよいよベゼルが固着してメンテナンスを行おうとしたら交換パーツが必要になったり、内部についても当店で入手困難なパーツが判明して高額なメーカー修理しか方法がない場合も珍しくありません。本当に最悪の場合はメーカーでもパーツ入手ができず時計の寿命（修理不可）になることもあります。
長期間メンテナンスをしていないなど心当たりのある方は致命傷になる前にぜひ当店にご相談ください。