カルティエ サントスガルベ オーバーホール、仕上、丸穴車交換
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
W20054D6|カルティエ サントスガルベのオーバーホール・修理|腕時計のオーバーホール・修理なら【宝石広場 時計修理センター 渋谷】
担当者コメントと修理のポイント
ご購入から5年ほどたち、止まりやすくなった、という事でお預かりしましたこちらのカルティエ。
それなりに年数が経っている事と、ほぼ毎日お使い頂いているという事、手巻きはしていても止まりやすいという事だったので、おおまかに予想をつけて裏蓋を開けました。
空けてみて、自動巻き機構を外してみたら...(写真3&4)予想通り、巻上げ機構付近には摩耗カスか劣化油の様な粒がパラパラと散っていました。
さて、ここでムーブメントの紹介です。
これはETAのCal.2671。レディース用の小型ムーブメントでして、よくよく見るとCal.2824と輪列配置や受けの形がよく似ている事がわかります。
起きる症状もよく似ていて、たいてい今回の様に自動巻き機構あたりから粉が舞って...というのが多いですね。
あと、Cal.2824系はCal.2892系とくらべて手巻が重めなのですが、こちらの時計はレディースかつリューズ形状にはひっかかりが少なく、手巻きは結構やりづらいです。
さらに言うなら、自動巻き効率もメンズ用ムーブと比べてローターが小さい分巻上げは弱くて...
レディースこそこのあたりの使いやすさって大事なんじゃないかなって思うのですが、サイズの制約があるためか、なかなか難しいのでしょう。きっと。
そう考えていくとここ数年?の時計サイズの大型化というのはムーブの大型化も出来ましたし、従来の機能強化や、新機構を加える事が出来ましたね。
話を今回お預かりした時計に戻します。
作業内容はオーバーホールと外装仕上、それに丸穴車交換ですね。丸穴車、というのは写真3でリューズ近くにある歯先の大き目な歯車です。
手巻をした時はリューズから伝わった力がこの歯車を経由しますし、力の経由時は回転方向が90°変わります。
また、ゼンマイが解けないようにしているのもこの歯車(正確にはストッパーがあります)。ですので、摩耗してくるのも致し方ないかな、と。
心配していた自動巻き周りは洗えば使えそうでしたので、今回は交換せずにそのままです。細かな調整もさほど必要なく、無事お渡しする事が出来ました。
ご依頼ありがとうございました。