カルティエ タンクフランセーズ オーバーホール

腕時計修理内容

ブランド名 カルティエ
モデル名 タンクフランセーズ
型番 W51008Q3
修理内容 オーバーホール
修理料金 ¥24,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。
修理時間 お見積り2週間、ご返答いただきましてから作業5週間
症状タグ

カルティエ タンクフランセーズ オーバーホール

  • カルティエ タンクフランセーズ 外装仕上げ前です

    外装仕上げ前です

  • カルティエ タンクフランセーズ 裏蓋を外したムーブメント全体

    裏蓋を外したムーブメント全体

  • カルティエ タンクフランセーズ 化粧受けとクオーツ回路部分を外したところ

    化粧受けとクオーツ回路部分を外したところ

  • カルティエ タンクフランセーズ 輪列部分を分解したところ

    輪列部分を分解したところ

担当者コメントと修理のポイント

カルティエを代表するモデルであるタンク。(画像1)
その中でも女性に不動の人気を誇るのがタンクフランセーズ。
タンク〇〇と続くことで様々なモデルが存在しますがフランセーズとはフランス版タンクと言う意味です。
ハイブランドなカルティエは全体的に高額な印象ですが、タンクフランセーズは比較的手に入れやすい価格帯であることも人気の理由です。
シーンを選ばない使い勝手の良さもあってブランド問わずレディース腕時計の大定番として存在感を放っています。

カルティエのあるフランスの名を冠したようにエスプリの効いたモダンなタンクに仕上げられてはいますが、起源となった戦車のキャタピラーを模してデザインされたというブレスレットがこの時計のブレないコンセプトを表現しています。
レディース時計であっても姿はまさにタンクウォッチですね。

ケースと自然につながるブレスの一体感から縦長の長方形の時計に見えますが、実はタンクフランセーズの文字盤は正方形です。
上下のラグもあり目の錯覚で文字盤ではわかりにくいのですが裏蓋を開けた状態でムーブメント側から文字盤を見ると正方形で一目瞭然です。(画像2)

ジュネーブ仕上げをされた化粧板部分と電池とオレンジ部分のコイルを含む俵型の範囲がムーブメントで、METALと書かれた部分は文字盤と同じ大きさのムーブメント固定枠ですので、イコール文字盤の大きさそのものです。

今回はクオーツ時計ですが2000年頃の製造モデルですので油も涸れており、電池交換だけでも動作はしましたが電池切れまで正確な時を刻むかはわかりませんし保証をお付けして安心してお使いいただくにはオーバーホールが適切と判断しました。

電池で動くクオーツ時計と言えどもアナログ表示であれば歯車を使っていますので、当然ですが定期整備は必要となります。
ただ、機械式時計と違って小さな力で動くように設計されているため歯車への負荷も少なく止まった時は電池切れがほとんどです。
電池交換で再び使用できるようになるのは機械式時計と比べてランニングコストをとても抑えながら使えるのもメリットの一つですね。
もちろん回路で精度を制御していますので機械式時計よりも遥かに高精度なのが一番のメリットです。

オーバーホールの対象部分は歯車の部分ですので事前作業として化粧板とクオーツ時計の要である回路部分を取り外します。(画像3)

表側の輪列は永久磁石のローターと、それに噛み合い文字盤裏へ動力を伝える歯車二つのみです。(画像4)
これは秒針のない仕様のクオーツならではの少なさです。
アップできる枚数の制限で画像はありませんが文字盤裏には分針と時針がつく歯車はありますし、針回し機構の歯車も当然あります。

オーバーホール自体はアナログ機構の全てを分解し洗浄をするのですが回路部分は電気的な構造ですので一切の洗浄はご法度です。ロディコなどで見える範囲のゴミを軽く取り除く程度で十分です。
もし回路部分にショートの跡や発信をしない場合は交換でメーカーでのコンプリート(ムーブメント交換)作業になります。

輪列部分ではローターが永久磁石ですので作業時に鉄粉の付着がないか入念に点検した後に組み込み、回路と化粧受けを取付けて新しい電池を入れればクオーツ時計のオーバーホールは完了となります。
念のため実測でのランニングテストも行い、遅れも進みもなく安心してお使いいただける状態になりました。
次の工程で外装の仕上げを行い店頭に並ぶ予定です。

今回のタンクフランセーズをお客様からお預かりした場合は電池交換で2,000円(ご配送の場合は+返送費用)でお受けしております。
オーバーホールの場合は基本料金で24,000円~(パーツ代金別途)、外装仕上げも追加の場合はオーバーホールとのセット料金で+11,000円となっております。

クオーツ時計は頻繁に時間合わせをする必要はありませんし止まっても電池交換をすればほとんどの場合は問題なく使えてしまいます。
ただ、止まってから時計屋さんに行こう行こうと思いながらついつい長期間放置してしまう方も多くいらっしゃいます。
ようやく思い出して電池交換を希望された時には内部のボタン電池が劣化して液漏れを起こしていることも珍しくありません。
液漏れしてしまいますと漏れ出した液体が回路を侵食し回路交換で余分な修理コストが発生したり、入手困難な場合はメーカー修理しか方法がないと言うこともあります。
止まったままのクオーツ時計をお持ちの方、心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。

  • 修理担当した時計
私が担当しました

宝石広場修理部部長。時計修理技師。時計修理業界歴約30年。

時計の状態確認・点検・判定・故障個所の修理などの技術的な対応から部署統括まで幅広く担当。

時計専門紙POWER Watchの『”腕時計”のかかりつけ医』コーナーにも度々登場。

お客様のお時計のお悩み誠心誠意対応させていただきます。

時計に関するお困りごとは宝石広場修理部までご相談くださいませ。