カルティエ タンクMC オーバーホール・仕上
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
W5330004|カルティエ タンクMCのオーバーホール・修理|腕時計のオーバーホール・修理なら【宝石広場 時計修理センター 渋谷】
担当者コメントと修理のポイント
ご購入されてから4年間毎日ご使用され最近遅れや止まりが出るようになった、という事で修理キットにてオーバーホールのご依頼をいただきました。
ご依頼頂きましたのはカルティエのタンクMCで2013年に誕生したモデルです。
タンクの歴史はとても古く1916年にまでさかのぼり、その後もコンセプトを守りながらタンクアメリカン、タンクフランセーズ、タンクアングレーズ、タンクソロなどメンズ、ユニセックス、レディースと多数のバリエーションが発表されています。
モデル名に付けられた”MC”はマニュファクチュール(Manufacture)のことを指していて、その名通り搭載されるムーブメントはCal.1904-PS MC(画像2)です。
カルティエ初の腕時計サントスの製作年1904を名前に冠したカルティエの自社開発ムーブメントで、その大きな特徴としては薄型の自動巻き機構と2つのゼンマイを搭載しています。
自動巻き機構は一般的な切替車式ではなくマジックレバー方式を採用しており、厚みの出やすい切替車に比べてマジックレバーはムーブメントの薄型化に貢献しています。
ゼンマイが2つ以上採用される理由は様々ですが、こちらのムーブメントは持続時間が約48時間と一般的であることからロングパワーリザーブを目的にしておらず、精度の安定化の為に採用されています。
ゼンマイからテンプに伝わるトルクは安定しているほど精度にとって良いのですが、どうしても巻き始め付近と巻き終わり付近には大きなトルクの波が出来てしまいますし、実際には巻き上げ量によってトルクに差がでてしまいます。
そこで薄めのゼンマイを2つ用意する事によって軽い力で巻きあがり、巻き終わり付近のトルクの波をカットする事で高い巻き上げ量を維持しながらトルクの安定供給に主眼を置いたものと思われます。
4年間毎日ご使用されていたお時計は内部は油が切れていた為に遅れや止まりが出ていたようです(画像3)。
症状が出始めてから比較的早めにご依頼いただけた事もあり、オーバーホールのみで部品交換はなく外装のお磨きも行いお渡しが出来ました。
S様 ご依頼ありがとうございました。