修理・アフターサービス

「両巻上げ式」自動巻きローターの仕組みを分解して解説|工具を作ってみました。

みなさん、こんにちは!アフターサービスの小島です

前回角穴車磨きはあんまりな出来上がりだったので、キッチリ作業をすべく工具から見直すことにしました。

まず手始めは歯車を固定する台座です。やっぱりてきとうに作ってしまうと使いずらいです、、、。
欲しい機能は、持たなくてもすんで、滑らかに回転してくれること。重い台座にベアリングを取付けて、歯車を固定する穴付の回転台を上におけばよさそうです。

工具を持っていないのですが、無いなら借りればいいじゃないか、と。

さっそく工具レンタルの工房をネットで検索・予約。まずは大きな真鍮の塊を切り落として、、、、、、、旋盤でつかんで、サイズに合わせて削って、
 ベアリングをプレスで押し込んで 完成!
 、、、。と言いたいところですが、中心のネジ穴を開けている時間がありませんでした。次回の作業に持越しです。

今回完成はできませんでしたが、ベアリングを取付けたことでスムーズに回ります。やっぱり自分で考えたものを作るのは楽しいです

機械式時計の”自動巻き”の巻き上げ

マジメな話に移りまして”自動巻き”について説明しようと思います。

機械式時計には、おおざっぱに分けて手巻きと自動巻きと言う区分けがありますよね。読んで字のごとく、手巻きは自分で巻き上げないといけませんし、自動巻きは腕に着ければ勝手に巻いてくれる、、、わけではないのです。

自動巻きの時計は勝手に巻かれるわけではない

自動巻きの時計にはローターという部品がついていて、これが腕を振ったときに振れる・回転することで歯車・ゼンマイを巻き上げていて、決して、勝手に巻かれるわけではないのです。と言うのは、歩くときにあまり手を振らなかったり、PC作業ばかり、なんて方は腕に着けていてもあまりゼンマイが巻かれないのです。

他にも、油が切れてきても自動巻きの効率は落ちるので、”使っているのに止まりやすいな”と感じたら疑ってみてもいいかもしれません。

”片巻上げ”と”両巻上げ”がある

さてこの自動巻きには”片巻上げ”と”両巻上げ”があります。ローターが回転したときに一方向のみ巻き上げるものと、どちらに回転しても巻き上げるものです。

今回は両巻きに注目。

自動巻き機構を外すとこんな状態です。マルで囲った歯車がかみ合って香箱・ゼンマイを巻き上げています。

右上の写真をアップにした写真です。

左上の歯車に、2方向の回転する力がありますよね。(かみ合った歯車の回転方向を同じ色で描いています)

切換車は両巻き機構のカナメ

この歯車は切換車と言って、両巻き機構のカナメなんです。上から見てもチラ見しかできないので、、、、、。いっそ叩き壊してバラしてみました。
 2枚の歯車と1枚の板、2つで1セットの爪が2組で出来ていて、金色の歯車は軸とは固定されずに空回り。中央の円盤だけ軸と固定されています。

さらに寄ってみると、歯車には中心と外枠に凸があり、爪には長さの違いがあリます。それぞれ歯車が回転したときに爪と引っ掛かる仕組みです。

 

自動巻きの効率に影響する凸

自動巻きの効率は、ローターが良く回る事や、1回転のでどれだけ巻き上げるかなどありますが、この凸も大事な要素の1つ。凸がたくさんあるほど、ローターが逆回転したときに空回りする角度が少なくなるんです。

それぞれ回転している歯車の、爪とかみ合ったほうが軸に回転を伝えているようです。
 自動巻き機構もムーブによって色々な方式がありますが、どれも見れば見るほど、よく考えたなぁ、とため息が出ててくるものばかりです。

裏ブタがガラスの時計でも、目立つローターに目がいってしまいがちですが、この切換車にも注目してみてください。小さな部品がチョコチョコと動いているのも面白いですよ。[contact-form 1 “フッター”]

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私が担当しました

宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。

時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。

1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。

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