IWC ポートフィノ オーバーホール・外装仕上げ
パテックフィリップ カラトラバ|腕時計の販売・通販「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
中古 585054001 707-2 ポケットウォッチ|パテック・フィリップ| 「宝石広場」 (housekihiroba.jp)
私が担当しました
宝石広場修理部スタッフ。時計修理技師。時計修理業界歴約20年。
時計の状態確認/点検/判定/故障個所の修理などの技術的な対応から、接客/見積もりまで幅広く担当。
1つ1つの時計に丁寧に向き合い、お客様のお手元に良い状態でお戻し致します。
是非お気軽にお問合せください。
担当者コメントと修理のポイント
今回ご紹介する修理事例はなかなか珍しいローマンダイヤルのポートフィノです(画像1)。
マニア好みの筆記体ロゴが入ったダイヤルもポイント。最近のIWCとはまた異なる味を持ち、今風の大ぶりな時計に馴れた目で見ると新鮮に映ります。
こちらは渋谷本店でお買取りさせていただき、販売前のメンテナンスのためアフターサービス部へ依頼されてきた1本です。
ご使用傷はありましたが大きな打痕はなく一見して状態は良く見えました(画像2)。しかし確認を進めていくと複数個所のブレス駒が固着し茶色い錆の粉が付着していることがわかりました。駒が小さいブレスレットは腕になじみやすく装着感が良い反面、腕に密着する部分が多く隙間が多いということでもあり、汗や皮脂汚れだけでなく日焼け止めやハンドクリーム等の化粧品が内側に染みこみやすいということでもあります。
汚れ付着し空気に触れない部分はステンレスの酸化膜を保てず錆びてしまいます。腐食の初期段階であれば洗浄するだけでも改善しますが、進行してしまうと駒とピンやネジは喰い付いて固着してしまいます。ここまでの状態になると駒ネジを外そうとしても緩めることができず、回っても簡単に折れてしまいます。そうした錆が発生しないように定期的な洗浄と、ご使用後の水分の拭き取りをお勧めしています。
幸い今回のIWC ポートフィノの腐食は軽微だったため、洗浄と薬剤を併用した錆取りにて駒がスムーズに動くようになりました。
IWC ポートフィノは日常生活防水を持ち裏蓋が4点のネジで留められています。
この裏蓋ネジはブレスレット同様に腐食していることがあるのですが、ブレスレットと大きく違う点は簡単に洗浄ができないことです。生活防水のように防水性能が低いケースは洗浄機による水圧に耐えられません。時計のままで丸洗い洗浄を行うと内部に湿気が入り、文字盤などの目に見える箇所だけではなくムーブメントも腐食してしまいますので厳禁です。
そのため表面上の汚れを除去した状態でネジを緩めることとなります。ネジ本来の締め付けなのか、経年による固さか、腐食による固着かを慎重に見極めながら作業しなければなりません。もちろんすべての作業を慎重に行っておりますが、腐食の進んだネジは抵抗なく折れてしまうため事前に察知することは非常に難しいです。折れてしまった場合はケース側に残ったネジの除去を行わなければならず、内部修理に取り掛かる前に費用が発生してしまいます。前述しましたように定期的な洗浄と日々の拭き取りは時計を綺麗に保つだけでなく、錆の発生を防ぎ余計な出費を押えるためにもお勧めしています。
取り外した裏蓋です(画像3)。
ネジと裏蓋に多少の錆はありましたが、折れることもなくネジは緩みました。
搭載しているムーブメントは ETA Cal.2892をベースとしたC.37521です(画像4)。
比較的綺麗だった外装から予想していた通り定期的にメンテナンスをされていたようで微かでしたが作業跡もありました。全て分解を終えてもパーツ交換の必要はなく丁寧に洗浄・組立て・注油を進めると調子よく動作するようになりました。外装仕上げの後に店頭へ並ぶ予定です。
こちらのIWC ポートフィノをお客様からお預かりしていた場合はオーバーホール基本料金が29,000円、オーバーホールと一緒に外装仕上げをご希望の場合はセット料金で11,000円です。
修理のご依頼は他店にてご購入されたお時計でも承っております。配送にて対応をご希望の場合はこちらから宅配キットを承っておりますのでお気軽にご依頼ください。
日常的に拭き取りを行うだけでも外装を良い状態に保つことができます。汚れた状態でご使用を続けるとブレスレットなど外装の腐食は一気に進んでしまいますし、部分修理ができなければブレスレットそのものの交換が必要なときもあり修理費用は高額になりがちです。また費用の面だけでなく日常的な拭き取りでお手入れをすることで時計の状態チェックにもなり、致命的な不調が起こる前に気がつくことがあります。
お心当たりのある場合はぜひ当店にご依頼ください。