2針 オーバーホール

腕時計修理内容

ブランド名 IWC
モデル名 2針
型番 ref.3204
修理内容 オーバーホール
修理料金 ¥35,000-(税込) ※事例公開時の価格となります。
修理時間 お見積り3週間、ご返答いただきましてから作業6週間
症状タグ

IWC 2針 オーバーホール

  • IWC 2針 修理後のお時計です。

    修理後のお時計です。

  • IWC 2針 リューズとチューブには緑青が発生していました。

    リューズとチューブには緑青が発生していました。

  • IWC 2針 ムーブメントはCal.3251。ローターが回転したときの自動巻きの動きを矢印で書いてみました。

    ムーブメントはCal.3251。ローターが回転したときの自動巻きの動きを矢印で書いてみました。

  • IWC 2針 スイッチングロッカーの要パーツです。

    スイッチングロッカーの要パーツです。

担当者コメントと修理のポイント

不動の状態でご購入された時計を動くようにしたいと修理キットにて渋谷店にご依頼いただきました。

時計はIWCのラウンド2針です(画像1)。
時計のデザインやキャリバーナンバーから70年代後半の時計だと推測できます。
チューブや中枠には大量に緑青が付着していることから、長期間メンテナンスしていないか保管方法が良くなかったようです。

緑青はムーブメントや中枠などに使われている真鍮から発生していました(画像2)。
真鍮には銅が含まれており、銅と水分が結びついた時に緑青が発生しますので防水性のない古い時計、特に長期間メンテナンスをしていない時計にはよく見られます。

ムーブメントはCal.3251を搭載しています。
ジャガールクルト製のCal.889をベースとしたムーブメントです。オーデマピゲやヴァシュロンコンスタンタンでもベースとして使われ1984年~2004年にCal.899へバトンタッチするまで長く使われていたムーブメントです。
(余談ですがCal.899は2020年にCal.899ACへと改良され、シリコン製の脱進機に変更され持続時間も70時間に改善されました。)

自動巻き機構は切替車方式ではなくスイッチングロッカー方式です。
まずは画像3をご覧ください。
ローターが右回転したときを青矢印、左回転した時を右矢印で書き込んでみました。
ローターが回転して順々に歯車が回転してゆくと、3つ目と4つ目の歯車が点Aを軸にして動くことで角穴車側へ一定方向の回転方向を伝えるようになっています。

画像4が3つ目と4つ目の歯車が取り付けられたパーツです。
歯車が取り付けられたベースと軸がわかりますでしょうか。
このパーツは機構の要ともいえるパーツで2番の歯車の回転に応じて左回転したときに3番目の歯車を、右回転したときに2番目の歯車を角穴車の方とつながるように点Aを軸にして動きます。
この機構はベースとなったCal.889からCal.899へ更新されるときに変更されましたが、ブルガリのCal.BVL191やノモスのCal.ε(イプシロン)で今も採用されています。

お預かりしたIWCは大量に発生した緑青が不動の原因になっていることは間違いありませんでしたが原因が1つだけとは限りません。パーツを確認しましたところ2番車と3番車は軸がやや摩耗していました。
これが現行モデルであれば交換をご提案するところですが、古いキャリバーのため部品入手は困難ですし入手できたとしても非常に高額で期間もかかります。確認した2番車と3番車軸の摩耗の程度はまだ少なく、摩耗部分を研磨することで十分滑らかになりますし、経過年数を考慮するとヴィンテージに入る時計としては日常使いでの性能を出すことは全く問題ありません。現行時計よりも定期的にメンテナンスを行うことを心掛けていれば部品の状態もそれほど変わらず維持できます。

一旦作業を止めて時計の経過年数を考慮した整備お見積りとなることを内部の状態、修理方針、整備後の許容精度と共にお客様へご説明したところ、ご理解いただきまして部品交換なしのオーバーホールにてお渡しすることができました。



R様 ご依頼ありがとうございました。