皆様ガリガリ君食べてますか?スギモトです。
私はまだ食べてません。毎朝そこそこ汗を書いて通勤してますが我慢しています。
前回のブログをご覧いただいた方、ありがとうございます。「読んでいたら”いいね!”を押して下さい」と懇願した結果…
なんと2つも“いいね!”をいただきました!ありがとうございます!!これからは押していただいたお二方に向けてブログを更新していきます!
さて、読者が少なくとも2人はいるということで、私も身を切った記事でブログを盛り上げたいと思います。
インヂュニア オートマチック IW323902の耐磁性能とは?
今回のテーマは『耐磁性』です。
ご存知の方は多いと思いますが、金属のパーツが多く使われている時計には、磁気は大敵でございます。特に心臓部であるヒゲゼンマイは、磁気の影響をモロに受けます。
機械式だけでなく、クォーツ(電池式)でも…というかクォーツの方が大ダメージを受ける場合もあります。
いわゆる磁気帯びという状態ですね。
時計が磁気帯びしてしまうとどうなるかというと、精度が狂います。大抵の場合は「進み」が出る場合が多いでしょうか。実際の時間より早い時間を指すようになってしまいます。黒帯ならカッコいいのに…。
磁気帯びに耐える「耐磁時計」
そこで!登場したのが『耐磁時計』です。
読んで字のごとく磁力に耐える性能を持った時計でございます。IWCのパイロットウォッチやインジュニア、ロレックスのミルガウスなどが有名でしょうか。
耐磁性能は、”ガウス”や“A/m (アンペア毎メートル)“なんていう単位で表現されます。
なんか良く分かりませんが、要はこの数字が高ければ高いほど、『磁気に強い』ってことのようです(多分)。 ドラゴンボール世代には、スカウターに出る戦闘力的な数字と言えば良いでしょうか。世代でない方はブックオフに行ってください。
その戦闘力…もとい耐磁性ですが、日本のJIS規格では1種耐磁時計で4,800A/m、2種強化耐磁時計ですと16,000A/mという数字が設定されてます。
一方、ミルガウスや一部のインジュニアは80,000A/mです。
なんか凄そうです。
JISがヤムチャや天津飯だとすると、後者はピッコロレベルでしょうか?(ヤムチャファンの方ごめんなさい)
中にはオメガの1,200,000A/mなんていう化け物じみた時計もあります。
どれくらい磁気に耐えられるのか?
耐磁性能の基準がなんとなーく分かってくると、当然涌いてくる疑問があります。
『それって実際どれくらいすごいの?どれくらいの磁気に耐えられるの?』
聞くところによると、スマートフォンのスピーカーに密着させると10,000~20,000A/m程度らしいです。
ということは、私の虎の子のインジュニアオートマチック(耐磁能:40,000A/m)であれば楽勝なハズです!これは実験するしかない!
…という実験の趣旨をご理解いただいたところで、内容の説明に移ります。
耐磁性能実験の前準備
では実験に入る前に進めた前準備についてご説明します。
耐磁性能実験に使用する自前の時計たちをご紹介
まずは実験に使う自前の時計たちを紹介します。
今回は、『耐磁時計がどのくらいイケているのか』を追求する為、耐磁じゃない自前の時計も被検体にします。
被検体A:ジラール・ペルゴ(ヴィンテージ)
何やら古いジラールペルゴ 『型番・名称不明』
トリチウム、プラ風防と時代を感じさせる時計です。見るからに防御力が低そう。
被検体B:ベル&ロス ダイバーズ300
ベル&ロスのダイバーズ 『ダイバーズ300』
防水性確保の為、ケースが分厚いです。「ある程度戦えるのでは?」という期待を持たせる本実験のダークホースです。
被検体C:IWC インヂュニア オートマチック IW323902
IWCの真打 『インジュニアオートマチック』
以前の80,000A/mからスペックダウンしたとはいえ、実生活では不足ない40,000A/mの耐磁性能を誇ります。磁気かかって来いや!
好対照の三種が揃いました。この3つを持っている私のセンスが光りますね!
実験の進め方
実験は、
①磁気を抜く(脱磁)
↓
②精度を計測する
↓
③磁気にさらす
↓
④精度を計測する
という一連の流れで進めていきたいと思います。
磁気の有無を調べるのは方位時針、磁気を抜くには磁気抜き機(正式名称知りません)、精度を計測するにはタイムグラファーを使います。
これがタイムグラファーです。当店では、修理・メンテナンスの際はもちろん、販売時にもこの機械で精度の計測を行い、異常が無いか確認しています。
磁気を発する装置(外敵)たち
そして今回は“③磁気にさらす”の為、磁気の強さの違う三種類の時計の外敵たちを用意しました。それぞれ、「大体こんなもんかな?」という磁気の強さを併記しました。
外敵① ノートPCのスピーカー
予想磁気 8,000A/m程度
外敵② iPhone6sのスピーカー
予想磁気 10,000-20,000A/m程度
外敵③ 自費で購入したピップエレキバン80
公式磁気 80mt(ミリテスラ)=800ガウス=63,660A/m (!)
恐い、恐過ぎるぞエレキバン…。店頭に持って帰ったら、皆避けていきました。
でも身体には良さそうなので、実験終わったら貼ってみよう(ナイスフォロー)
まだ実験を始めてませんがいかんせん長すぎるので、今日はこれくらいで終了します。数日後に公開されるはずの後編でまたお会いしましょう!
●次回予告!!
大事な自前の時計達に迫る強力な外敵達。スペックを超える磁気に、インジュニアは耐えられるのか?!
そしてプラ風防のGPの運命やいかに!
おはようございます!Dr. マグネティックこと、店頭スタッフ・スギモトです。
実験の続きが気になって、寝不足になっていませんか?いませんか、それは何よりです。
それはそうと、今日は【後編】をお届けします!
●前回までのあらすじ
大勢(2人以上)の読者の為、もっとブログを盛り上げたいと考えたスギモト。
ちょっと無理して買った、自慢のインジュニアの良さを実感する目的も兼ねて、『耐磁性能』の限界を探ることにした。
スペックを超える磁気を発する強敵を前に、果たして自前のインジュニアはどうなってしまうのか!?
耐磁性能実験開始!
本日はいよいよ実験に入ります!
耐磁について取り上げているブログは数多いですが、手持ちの時計を全て実験に捧げるのはきっとそう、ここ宝石広場のスタッフブログだけでしょう!(未確認)
被験前の精度チェックを実施
それでは、さっそく時計を磁気にさらしてやりましょう!
…っとその前に、まずは磁気フリーな状態で精度を計測します。
本来は色んな角度で計りますが、今回は結果をシンプルにする為、平置き(文字盤上)の状態に統一して計測してみます。
ちなみに前回紹介した最新型は、カメラで撮ると画面が見辛いのでやめました。
実験前の計測結果がこちら。
被検体A:古いGP(ジラール・ペルゴ)
歩度: -2秒 (一日に換算した差)
被検体B:ベル&ロスのダイバーズ
歩度: -4秒
被検体C:本命のIWC インジュニア インヂュニア オートマチック IW323902
歩度 +1秒
ふむふむ。
ベルロスは若干遅れが出ていますが、その内調整すれば良いので一旦置いておきましょう。GPは古い上にオーバーホールを怠っているので、もともと不安定です。
実験開始!時計を磁気にさらす
さぁ、 いよいよ最初の実験です!
外敵①ノートPCのスピーカー(8,000A/m程度)に時計をさらす
一発目は“外敵①ノートPCのスピーカー”です。磁気の強さは8,000A/m程度。おっかなビックリ、時計をスピーカー部分に密着させます。
*良い子は絶対に真似しないでね!
うっかりやってしまいそうなシチュエーションですね!
というか、パソコンメーカーはユーザーの時計を帯磁させたいのでは?というスピーカーの配置です。
放置すること10分…。
一番無防備なGPを、方位時針に近づけてみます。
きっと磁気まみれになっているはずなので、グールグルと回るでしょう。
…ん?全然動かない?
◆◇外敵① (8,000A/m程度) 計測結果◇◆ | |||
被検体 | 実験前 (秒/日) | 実験後 (秒/日) | |
A | 古いGP | -3 | -5 |
B | ベルロス ダイバー | -4 | -2 |
C | インジュニア | +1 | +1 |
*計測後、全ての時計の磁気抜きを行っています。
おぉ、3本とも意外にピンピンしてますね。歩度の変化も誤差の範囲です。
PCがヘッポコ過ぎたんでしょうか?
それなら、もっと強い磁気を発するであろう、iPhone6sに登場してもらいましょう。
外敵②iPhone6sのスピーカー (10,000-20,000A/m程度)に時計をさらす
*良い子は絶対に真似しないでね!
うっかりiPhone6sのスピーカー部分に時計を載せてしまいました。これもやってしまいがちな危険行為です!実に自然ですね。
PCより2倍程度強い磁気をx期待できるx発生させるハズのスマホです。
さすがにこんなパワーを浴びては非・耐磁時計はひとたまりもないのでは?!
◆◇外敵② (10,000-20,000A/m程度) 計測結果◇◆ | |||
被検体 | 実験前 (秒/日) | 実験後 (秒/日) | |
A | 古いGP | -3 | -6 |
B | ベルロス ダイバー | -4 | -4 |
C | インジュニア | +1 | +1 |
…アレ?ちっとも変わって無い。
どうしたiPhone!どうしたapple?!
そろそろ磁気帯びしてくれないと、企画が成り立たないじゃないか!
変化が無さすぎてつまらないので、もうちょっと強力な外敵に飛び入り参加してもらいました。
飛び入り外敵|ハンドバッグの留め具に時計をさらす
女性スタッフに急きょ借りたハンドバッグです。
この留め具に使われている磁石は強力で、手元の資料によると密着状態で72,000A/mもあるとか。実にスマホの3倍以上の数値です。
まぁ、バッグの留め具部分に時計を挟む人はいないでしょうから、実際にはもっと低い数値になるでしょうか。
それでも、女性の時計が磁気帯びする原因としては、かなり有力です。
*良い子は絶対に真似しないでね!
こんな感じでうっかり留め具の上に時計を置いてしまうかも?いや、置くに違いない!
◆◇飛び入り外敵 (72,000A/m) 計測結果◇◆ | |||
被検体 | 実験前 (秒/日) | 実験後 (秒/日) | |
A | 古いGP | -3 | -3 |
B | ベルロス ダイバー | -4 | -4 |
C | インジュニア | +2 | +1 |
…。
何故だ。なぜ少しも磁気帯びしないんだ!!おかしいじゃないか!この時計プラスチックで出来てるのか!?
思う通りの計測結果が出ないので、最早『どうすれば磁気帯びさせられるか』という実験になりつつありますが、最後の刺客に登場願いましょう。
外敵③自費で購入したピップエレキバン80 (63,660A/m)に時計をさらす
もうこれしかないでしょう。数値こそ先程のバッグに及びませんが、小さいボディにとんでもない磁気をため込んでいます。これなら…。
何せパッケージにも『時計に近づけるな』と書いてあります。
もちろん近づけます。
あーコレ良くある!良く見る光景です。
お爺ちゃん愛用のエレキバン置き場に、“うっかり”時計を置いてしまう事ってよくありますよね!
ちびまる子ちゃんやサザエさんでも、3~4回は放送された定番のシーンな気がします。
現代アートのような絵面になってますが、遊んでいるわけではありません。実験中です。仕事です。“I’m doing this for living”です。
今回は入念に、30分くらい放置してみました。
『頼む、磁気入っていてくれ…!』
このままではこの企画終われません。頑張れ、頑張れエレキバン!!
人生で初めてピップエレキバンを応援しました。おそらく製造元の”ピップ株式会社”よりも強く。
さぁ来い!!
やった…やったぞピップ!GPは見事に(?)帯磁しています。
一日に40秒も進めば、5日後には3分以上進んでしまいます。こりゃあ大変です!
ベル&ロスも測ってみましょう。
ありゃ?こっちはそんなに変わってない。
◆◇外敵③ 計測結果◇◆ | |||
被検体 | 実験前 (秒/日) | 実験後 (秒/日) | |
A | 古いGP | -3 | +40 |
B | ベルロス ダイバー | -4 | +1 |
C | インジュニア | +1 | +1 |
GPはモロに磁気帯びしていますが、ベルロスは軽傷、インジュニアに至っては全く変わっていません。うーん、やはりダイバーズ特有の分厚いケースが、内部のムーブメントを守ったのでしょうか?
耐磁性能実験終了…
長い長い戦いがようやく終わりました。過酷な環境にさらされた私の私物時計達は、しっかり脱磁してやさいく拭きき上げていたわりました(すまんな)。
耐磁性能実験の結論
さて、ここまでの実験結果を紐解いて結果をまとめてみましょう。
思っていたほど簡単には磁気帯びしない
ちょっと磁石の近くに置いておいた…くらいでは意外に耐磁しないこととがわかりました。
でも一度磁気帯びすると、極端に精度が悪くなる
これは古い時計で顕著でしたね。逆にもともと遅れ気味だった時計の場合、ちょうど良く歩度(日差)が調整されるベルロスのようなケースもありました。
これが、たまに聞く『OHしたら精度が悪くなった!』の要因の一つっぽいですね。
薄い時計の方が影響を受けやすい
やはりケースから心臓部までが物理的に近い時計の方が、磁力が伝わりやすいようでした。
インジュニアの耐磁性はすごいけど、もしかしたらそこまで必要性無いのかも?
面目躍如で耐磁性がピカ一だったインヂュニアでしたが、ここまで磁気帯びしにくいのであればそんなに気にしなくても良いのかも…と少し思いました。(磁気抜き器が職場にある我々ならではかもしれませんが!)
エレキバンはすごい
エレキバンは凄かったです。
実験を終えて
もしかすると、もっと長い時間磁気にさらすと、結果は違っていたかもしてません。
事実、磁気帯びで当店に時計を持ち込まれるお客様はとても多いです。まさか皆さんエレキバン愛用者、というわけでは無いでしょうから。
当店の時計師(メンテナンススタッフ)によると、スピーカー類よりもモーターに使われている磁石の方が脅威になり得るらしいです。実際、車のパワーウィンドウや、自動ドアが原因と思しき事例が過去あったそうです。
また、磁気帯びしていてもタイムグラファー上では計測されないこともあるそうなので、油断は禁物のようです!
*ちなみに、名称が不明だった磁気抜き機ですが、正式名称は『磁気抜き器(消磁器)』らしいです。
そのままやんけ。
プレゼントのお知らせです。
今回、実験に使用した自前の“パッケージ開いてるピップエレキバン80”を、余ったのでプレゼント致します!
『ブログ見た』と店頭でお伝え下さい。
先着数名or”もう良いかな、誰も来ないし…”となるまでの限定です。
それでは私は腰にエレキバンを貼る作業に移ります。
次回もブログで、Let’sマグネティック!
*今回の実験も、インジュニアを自慢したいスギモトのおふざけ半分です。
油断すると実験結果よりも耐磁してしまう可能性もありますので、くれぐれも時計は磁気から離してご使用・保管下さい!