ロレックス(ROLEX)

【時計の素材研究】ロレックスが採用!最高のステンレスとは?

こんにちは!
アフターサービス部の藤本です!

突然ですが、”スーパー”って聞くとなんだかワクワクしますよね♪

スーパー銭湯、スーパー戦隊、スーパーファミコン!

スーパー”が付くだけで、なんかスゴイ!!となるわけです。
※スーパー:SUPERとは、英語で『最高の・極上の・素晴らしい』などを表す形容詞

そして時計にも、”スーパー”が付く素材が存在します。
今回は宝石広場の”スーパーブロガー”の藤本が、スーパーな時計の素材について、時計修理専門スタッフ目線でお伝えします!

腕時計を選ぶ際、使用される”素材”も重要な要素ですので、是非ご参考になれば幸いです。

 

時計の重要な要素となるケース素材

主にステンレス素材かゴールド素材(主に金無垢)の腕時計しか生産されていなかった頃と比べ、20年くらい前から金属アレルギー対策・耐久性や装着感の向上を目指し、さまざまな素材が時計に用いられるようになりました。チタン、カーボン、セラミックなどなど…

しかし!ロレックスをはじめオメガなど主要な高級時計ブランドで、長年にわたり最も一般的に使われているのがステンレス素材です。

 

最も時計に使われるステンレス素材

強度に優れ加工しやすいという点でステンレス素材は、腕時計にとって非常に好都合な金属素材です。

シンプルでベーシックなモデル、タフさが要求されるスポーツモデル、ラグジュアリーな高級時計まで数多く使われています。

サブマリーナー】・【デイトナ・【エクスプローラー】・【GMTマスター】などの、ロレックスのステンレス素材のスポーツモデル通称”スポロレ”、パテックフィリップ【ノーチラス】・オーデマピゲ【ロイヤルオーク】・バシュロンコンスタンタン【オーヴァーシーズ】などの”ラグジュアリースポーツ”モデルは現在、ステンレス素材よりも上質なゴールド素材を用いたモデルよりもステンレス素材のモデルの方が、異常なまでに高い人気を集めています。

ゴールド素材の時計に比べて定価が安いというだけでなく、ステンレス素材特有の金属的な光沢感やメタリック素材の持つ精悍でスポーティーなルックスが人気の要因なのでしょう。

↑ステンレス素材を用いた最高峰の腕時計と言われる【パテックフィリップ ノーチラス】5712/1A-001

 

SSと略されて呼ばれることもある、日本での正式名称「ステンレス鋼」は、英語の名称「Stainless Steel」からきています。

ステン(stain)=錆・サビ” + ”レス(less)=ない”という名称とおり、汗や水に濡れても錆に強い素材であることも腕時計の素材として重要なポイントです。

ステンレススチールとは、鉄に一定量以上のクロムを含ませた、錆や腐食に対する耐性を持つ合金素材。
クロムが空気中の酸素と結びつき、金属表面の腐食作用に抵抗する不動態酸化被膜が発生し表面が保護されるので、スプーンなどの小さな食器から自動車部品や電車の車両などまで幅広く使われる金属素材です。

 

何も混ぜていない純粋な鉄素材よりも、錆に強く研磨すると美しく輝き、様々な細工や加工も出来て、ゴールド素材よりも低コストで大量に生産できるという、良いところばかりのステンレス素材。

1900年代初めに発明され、製品へ実用化されてから既に100年以上が経過しています。
時計の素材としてだけではなく、メスのように小さな物から船舶のタンクのような巨大な物まで強くて丈夫で加工しやすいステンレス素材は、私たちの生活に絶対に無くてはならない素材となっています。

 

腕時計に使われるステンレス素材の種類

あらゆる分野で使用される最もポピュラーな鉄を主成分とする金属素材のステンレスには、混ぜられた金属の含有量や精製方法の違いなどにより、日本国内だけでも性質の異なる100種類以上ものステンレス素材が存在ます。

その中で腕時計の素材に使われるステンレス素材は<304316>の2種類が一般的です。

304:生産量全体の60%以上を占める、最も流通するステンレス素材

長年にわたって幅広い分野の製品に数多く使われるステンレス素材

316:304にニッケルの含有量を上げ、モリブデンを加えたもの

ニッケル=優れた光沢と変色しにくいため美観性の向上に役立つ金属
モリブデン=錆に強く耐摩耗性に優れた特性を持つレアメタル

そして、316には派生素材が存在します。

316L:316からカーボンの含有量を下げたステンレス素材

L=Low carbon(低炭素素材)、別名”サージカルステンレス”とも呼ばれ、メスなどの医療現場で使用され、耐久性があり錆に強くて金属アレルギーが起きにくい人体に優しい高性能なステンレス素材

高級ブランドのステンレス素材の時計は、ほとんどが「316L」素材で製造されています。

さらにもう1種、「304」と「316」よりも品質が良く、腕時計の素材として最高なステンレス素材が存在します。

 

ロレックスの時計に使われるステンレス素材

「316L」以上に高品質で、腕時計に使われるステンレス素材は「904L」。

腕時計に使われるスーパーステンレス素材

「904L」は、腕時計に使われているステンレス素材の中でも、ニッケル・クロム・モリブデンなどの含有率が高いステンレス素材です。

錆や腐食に対して優れた耐性を備え、高い硬度を持ち経年耐性にも優れ、丁寧に磨くほど美しい光沢を保ちます。

904L:316にニッケルとクロムの含有量を増した高品質な素材

非常に優れた硬度と耐腐食性を兼ね備えたスーパーなステンレス素材

「316L」以上に品質が良いステンレス素材「904L」は、最高のステンレスということで”スーパーステンレス”と呼ばれています。

スーパーステンレス素材は、家庭向けの製品としてはほとんど使われておらず、ロケットや航空機の部品などの航空宇宙工学のハイテク産業や特殊な化学産業用として主に使われています。

そしてスーパーステンレス素材は、貴金属にも匹敵するほど耐久性に優れた高い品質のため莫大な生産コストがかかり、特定の設備を備えた製鉄所でのみしか精製できず、製品への加工も非常に難しいという特別なステンレス素材なのです!

宝石広場のアフターサービス部門で、日々ポリッシュ研磨している外装仕上げ担当者によると『904Lは、ステンレスの素材自体に巣(気孔)が少なく、ポリッシュ(ツヤ出し)が非常に綺麗に仕上がるので、仕上げのやり甲斐がある!』とのことです。

 

ロレックスのスーパーステンレス素材 904L

ロレックスでは、スーパーステンレス素材の「904L」を、1985年に時計のステンレス素材として世界で初めて採用します。2018年からは”オイスタースチール”と呼んでいます。

※1985年~数年前(5ケタ品番くらい)まではケースのみ904Lブレスレットは316Lが使用されていたようですが、現在はケースもブレスレットも全て904Lが使用されています。

強度と耐久性に非常に優れ、仕上げを施すことで美しい輝きを放つ、ロレックスが目指す時計作りにとって最適で最高な素材です。

しかし、腕時計の素材として「904L」は、過剰なほどスーパーなステンレス素材な為、数多くの腕時計をラインナップしているオメガやタグホイヤー、超高級ブランドのパテックフィリップなどでも「904L」は使用されていません。

※ロレックス以外で「904L」を使用している腕時計は、アメリカ発のタフネスウォッチブランド「ボールウォッチ」の”エンジニアIII”などの2019年以降に発売した中でも上位のモデルにのみ、職人気質あふれるドイツのストイックなブランド「ジン」では、104STなどの最上位”インストゥルメントクロノグラフ”ラインの一部機種にのみ採用など、ロレックス以外の時計ブランドでは、わずかに数えるほどしか「904L」は採用されていません。

 

ロレックスとステンレス素材の関係(オイスターケース)

ロレックスの時計に使われるステンレス素材というと、ロレックスが誇る時計の三大発明<オイスターケース・パーペチュアル・デイトジャスト>の一つ「オイスターケース」に関係しています。

1926年にロレックスが世界で初めて開発した時計用の防水ケースがオイスターケース。
固くて頑丈なオイスター=牡蠣からネーミングされ、完全密閉の防水性能を備えています。

1927年にはイギリスとフランス間のドーバー海峡を泳いで横断する際にオイスターケースの腕時計が使用され、高い防水性能を実証しその性能をアピールしました。

誕生から100年近く経過した現在もオイスターケースは進化を続け、”頑丈で壊れにくいロレックス”を広くアピールする、最高な腕時計ケースとして使われ続けています。

そしてこのオイスターケースの誕生にも、強くて丈夫なステンレス素材が関わっています。

時計にとって最大の敵である“水”のムーブメントへの侵入を防ぐために、ネジ込み式の裏蓋とケースにより高い気密性を確保したオイスターケース。

その研究開発と安定した生産能力を確保するには、ステンレス鋼から寸分の狂い無く時計部品に加工する非常に高い精度の製造技術が必要でした。
ロレックスは、懐中時計から本格的な機械式腕時計時代の到来を見越して生産力を高めるために技術力を向上させて、他ブランドを圧倒する時計の3大発明を発明します。

※実際にオメガなどの他の高級時計ブランドが防水性能に優れたケースのダイバーズウォッチを開発・製造したのは、ロレックスより30年ほど遅れた1950年代になってからでした

その後もロレックスはオイスターケースの防水性や安全性を追求し続け、サブマリーナーをはじめとする深海潜水のプロフェッショナル向けダイバーズウォッチを開発していきます。

 

そしてロレックスは、時計の素材を外部メーカーから調達するのではなく、「904L」スーパーステンレス素材をはじめとする高品質な時計用の素材を、高い品質と安定した生産能力を確保するため、巨額の資本を投じて生産拠点を独自に開発し製造していくのです。

特に「904L」を鍛造して腕時計に成形する工程では、大型で強力な圧力プレス機が必要となりますが、他の高級時計ブランドに比べて生産能力が高く、安定して大量生産できるロレックスは、強大な資本力により実現しています。

自社の工場で素材から調達し、高いクオリティを徹底して管理、時計を大量に一貫生産できるためコストの圧縮が可能となり、高品質な「904L」スーパーステンレス素材を採用することが出来るのです。

 

↑防水性に優れたステンレスケース「オイスターケース」使用した”キングオブダイバーズ”こと【サブマリーナー

宝石広場のロレックス

 

時計に最適なステンレス素材の注意点

最後に、時計にとって最適な素材であるステンレス素材にも注意点があります。

”ステンレスはサビない!”と思っている方や”絶対にサビない金属”と見聞きすることも多い素材ですが、あくまでイメージで実際はサビない素材ではありません。

錆が発生する要因は主に汚れ(酸)水分・塩分が挙げられます。
簡単に言うと人間の皮脂・汗です。皮脂には様々な種類の酸が、汗には塩分が含まれています。それらが付着したままだとクロムと空気中の酸素が結び付けず、ステンレス素材の表面に不動態酸化被膜が形成されません。

腕時計は人間の皮膚に触れて、手で操作する関係上、皮脂でコーティングされているような状態と言えます。性別・年齢・体質等により皮脂の成分量や分泌量に個人差があり、サビやすい方・サビにくい方がいらっしゃるのも事実です。

また、いくら錆に強い316L904Lのようなステンレス素材でも、条件が重なると錆や腐食が発生してしまいますので、汗をかいた後や水で濡れてしまった後のケア、時計を外した後のデイリーケアが重要になってきます!

 

ステンレス素材も錆に注意!

錆に強い!と一般的に思われているステンレス素材ですが、錆が発生するとどのような状態になるのか過去の作業事例よりご紹介します。

▼ ラグにかけて時計ケースにビッシリと付いた錆

▼ 裏蓋側に付いた錆

▼ 錆を除去するとツルツルに戻ると思いきや…

▼錆は表面的な見た目だけでなく、ステンレス素材自体にダメージを与えます。
↑凹んでボソボソのままなのです…※残念ながら元には戻りません※

欠損した部分が隙間となり気密性(防水性)が損なわれてしまいます。
これがケースや裏蓋だけではなく、ムーブメントにまで錆が進行してしまうと、オーバーホールだけでは済まなくなってしまうのは想像に難くないですね。

※時計にとって大敵の”水分”については、下記の私のブログ記事も是非ご参照ください。

■ 宝石広場ブログ:腕時計トラブル 曇り|時計修理専門スタッフが原因や対処法を解説!

日本の夏は高温多湿で、腕時計が非常に汚れやすい季節です。
秋になって汚れをそのままにしておくと厄介なので、季節の変わり目など、定期的に時計本体を洗浄してリフレッシュさせる事をお勧めします!

お祝い事やイベントの前に綺麗にするのもいいかもしれませんね☆彡

オーバーホールでも洗浄を行いますが、洗浄のみでもご対応いたします。
料金は¥3,000、所要時間は30分が目安でございます。
※お時計の状態や構造上お預かり対応になる場合がございますので予めご了承ください※

宝石広場のアフターサービス
【電池交換・洗浄について】

汚れが錆・腐食に悪化して手遅れになる前に、大切な時計の洗浄をお勧めいたします!

 

さらに!

”だけでなく、腕時計を使用していると付いてしまう””についても注意が必要です。

シルバー素材やゴールド素材よりは傷に強くて堅い金属のステンレス素材ですが、ロレックスの904Lスーパーステンレス素材であっても注意しないと傷だらけになってしまいます。
硬い物とぶつけないように、傷を付けないように丁寧にお取り扱いください。

ステンレス素材の放つ美しい光沢を維持するためにも、傷取り外装仕上げメンテナンスも是非ご検討ください。

宝石広場のアフターサービス
【外装仕上げについて】

先ずは下記までお気軽にお問い合わせください。

オーバーホールをはじめ、時計のメンテナンスについてのご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。他店舗で購入された時計でも修理対応いたします。
弊社の時計修理士が的確な修理・オーバーホールのご案内をさせていただきます。

 

ロレックスは、ステンレス素材だけでなく、高品質なプラチナ素材・劣化に強いエバーローズゴールド素材などを自社で開発製造していますので、今後も【時計の素材研究】として取り上げたいと思います。
時計修理専門スタッフ目線で書く、次回のブログにご期待ください!それでは(@_@)!

 


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この記事は私が書きました

【宝石広場 時計修理センター 渋谷|宝石広場アフターサービス部スタッフ】

夏も冬も眩しがり屋のアイウェア大好きマン♂バイクとコスプレが趣味です♪時計の修理メンテナンスに関して何でも包み隠さずお答えいたします!

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